シリーズ38

出願直前
2018年度 大学入試のトレンドをチェック

Part.1
全体の傾向


解説:駿台教育研究所
進学情報事業部 石原 賢一 部長
※組織名称、施策、役職名などは原稿作成当時のものです
更新:2017/10/23
ここ数年の大学入試は、文科系の人気が高く理科系の人気が低い「文高理低」が続いていたが、2018年度はどのようなトレンドがあるのだろうか。大学入試全体、国公立大個別試験、私立大一般選抜試験について、志願動向、注目される動き、学習の進め方、併願作戦などを駿台教育研究所進学情報事業部の石原賢一部長に分析していただいた(全2回)。

全体の傾向
2018年度も文高理低傾向が続く
英語外部試験利用の増加など変化も

2018年度入試の志願動向をみると、全体としては2017年度と同様に文高理低、つまり文科系の人気が高く、理科系の人気が低いという状況が続きそうだ。

文科系の人気が高いのは、景気が回復傾向にあり、大学生の就職状況も改善されていることが大きな要因の1つになっている。

文科系のなかでも人気の高さが目立つのは、経済・経営・商学系。この系統の人気は経済的な環境に影響されやすく、いまは景気回復を反映して志願者が増えている。また、文科系のなかでは比較的理科系寄りの系統でもあり、理科系か文科系かで迷っている高校生が、この系統を選ぶ傾向もあるようだ。

グローバル系も人気の高さが続いていたが、今年は人気がやや沈静化している。もともと募集人員がそれほど多くないということもあって人気が上がると難化が目立っていたが、その反動が少し出てきている。

理系は科目負担増で人気低下
首都圏の私立大文系は総難化

理科系の人気が低くなってきた最も大きな要因は、受験生にとって科目負担が大きく、ハードルが高くなっていることだ。2015年度入試以来、理科系ではセンター試験が専門理科2科目となり、3年生の12月中には対象となる2科目の学習をひととおり完成させないといけない。これがかなり重荷になっている。また、前述したように大学生の就職状況が改善され、理科系にいかなくても文科系で就職があると思われていることも人気低下を招いている。

こうした志願傾向のなかで、とくに私立大文科系の人気が高まっている。なかでも首都圏の私立大文科系は「総難化現象」といっても過言ではない状況になり、その現象は北関東などの私立大にもおよんでいる。

私立大文科系が難化している背景には、人気の高まりだけでなく、文部科学省が入学定員の適正化を進めていることがある。各私立大は合格者数を絞り込まざるを得ず、その結果として入試では競争がより厳しくなっている。

関西圏は、関西学院大、関西大、同志社大、立命館大、京都産業大、近畿大、甲南大、龍谷大などは難化傾向にあるが、どちらかというと国公立志向が強いこともあって、首都圏のような総難化までは至っていない。

首都圏は、受験人口が多いにもかかわらず国公立大の数が少なく、もともと私立大志向が強いということもあって難化が顕著になっているようだ。

メディカル系は志願者減少
地方では根強い人気

理科系はここ数年の人気低下が2018年度も続きそうで、そのなかでもメディカル系の医学部・歯学部・薬学部の志願者が減ることになりそうだ。

逆に考えると、医学部をめざしている高校生にとっては、2018年度はチャンスがふくらむ可能性がある。2017年度に医学部入試がやや易化したため、優秀な受験生は合格して入学した人が多く、成績上位の浪人生は少ないことから、2018年度はさらに易化する可能性があるからだ。医学部志望者は、もちろん充分な学習を積み上げることが大前提になるが、強気にチャレンジしてみるのもいいだろう。

上記の全体の志願動向は、1学期の模擬試験に表れたものだが、厳密にみると首都圏や関西、中部など大都市部の傾向を反映したものといえる。大都市部は受験生の数が多いので、そこでの志願動向が全体の傾向を左右するからだ。このため、地方に焦点をあてると、やや様相が変わる面もある。

たとえば、地方では地元志向が強く、医学部や看護系学部などメディカル系も人気が高い。それ以外の理科系の学部も一定の人気がある。したがって、それぞれの地方での受験を考えている場合は志望校(学部学科)のここ数年の難易度や競争率などを調べたうえで対策を進めることも必要だ。

センター志願者はやや減少
難しかった年を基準に学習

センター試験は、2017年度の志願者数は前年度比2・2%増の57万5967人だった。2018年度は、18歳人口が減るので、そのぶんだけ減少すると予測されている。国公立大の志願者数は6年連続で減少し、2018年度も増える要素はないが、私立大のセンター試験利用入試があることなどから、大きく減少することはないとみられる。

出題傾向は、これまでとほとんど変わらないだろう。2020年度(2021年入試)から現在のセンター試験に替わる「共通テスト」が導入される移行期になるので、この段階で大きく傾向が変わることは考えにくい。ただ、共通テストでの出題が予想されている実社会に即したような問題が、地歴、公民、理科などの一部で出題される可能性はある。これまでも、理科の基礎科目、地歴のAの科目などではそういう問題が出題されている。

難易度も2017年度とそれほど変わらないだろう。国語はやや難しかったので、少し易しくなるかもしれないが、それは期待しないほうがいい。

これはセンター試験対策全体につながることだが、それぞれの科目について、過去数年のなかで難しかった年の過去問を見て、その年のレベルを想定して対策を進めることが必要になる。大学入試センターのホームページを見れば、各年ごと各科目ごとの平均点が出ているので、まずはそれを調べるようにしたい。

国公立大は後期日程廃止が続く
推薦やAOに定員振り替え

国公立大については、ここ数年と同様に、後期日程の廃止などによって、その募集人員を推薦入試やAO入試など特別選抜に振り分ける傾向が続いていることにも注目したい。

2018年度から後期を廃止する例としては、一橋大の法学部と社会学部、金沢大の経済学部、筑波大の医学群医療科学類、信州大の経法学部総合法律学科、医学部保健学科の理学療法学専攻、九州大の理学部数学科、歯学部などがあり、それぞれ後期の募集人員を推薦入試やAO入試など特別選抜に振り替えることになる。

また、北海道大や東北大、大阪大のように、前期の募集人員を少し減らして、そのぶん特別選抜の募集人員を増やすところもある。

このように、国公立大においては、後期という選択肢がなくなったり、前期を含めて一般選抜を縮小する動きが続いている。したがって、志望校の受験機会を増やすという意味でも、国公立大の推薦入試やAO入試を積極的に利用していくことを検討してみるといい。

2016年度 入試別の入学者比率(文部科学省)
  一般入試 推薦入試 AO入試 その他
国立大学 84.5% 12.2% 2.7% 0.5%
公立大学 72.8% 23.9% 2.1% 0.7%
私立大学 49.0% 40.0% 10.5% 0.4%

※2016年4月入学者の比率
※「その他」は専門高校・総合学科卒業生入試、帰国子女入試など。

英語外部試験利用がさらに増加
推薦やAOは新傾向の出題も

前述したように、2020年度(2021年入試)から、共通テストの導入を含めて入試改革が行われ、大学入試の様相は大きく変わることになる。

新しい大学入試では、従来の「知識・技能」に加えて「思考力・判断力・表現力」を重視するようになること、共通テストでは国語と数学で記述式問題を出題すること、英語で「読む」「聞く」に「書く」「話す」を加えた4技能を評価するために、民間の英語資格・検定試験を活用すること、などが大きな特色になっている。

では、そうした新しい大学入試の考え方や実施方法が前倒しされるかたちで2018年度に影響をおよぼすことはないのだろうか? 結論的にいうと、少なくとも一般入試においては直接的な影響はほとんどないと考えられる。

ただ、一般入試では英語の外部試験利用が拡大していく傾向はある。すでに私立大では導入が進み、国公立大でも導入し始めているが、2018年度はそれがさらに広がる。

新たに導入を予定しているのは、茨城大工学部、千葉大教育学部中学校教員養成課程の英語科教育分野、金沢大医薬保健学域保健学類、九州大共創学部(新設学部)、佐賀大など。

入試改革の影響が出題内容に出るとすれば、それは推薦入試やAO入試で小論文や何らかの教科試験(センター試験以外)を課す場合だろう。

すでに、2017年度の推薦入試で教科・科目複合型の小論文を課したところもある。こうした動きがどの程度広まるかは予測できないが、推薦入試やAO入試などの特別選抜で個別の筆記試験があるところを受験するなら、新傾向の出題も想定したうえで準備を進めるようにしたほうがいいだろう。

《 後編 Part.2「国公立大の傾向・私立大の傾向」へ続く 》

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