Part.3 奉仕体験活動の先行事例を見る vol.1

2006-12-04UP

商業高校の特色を生かし地域に貢献する
「まちおこし体験活動」を計画


東京都立芝商業高等学校
長崎 正 副校長・山本弥生 教諭

『リメディアル教育の現場』

Part.1
リメディアル教育の背景と現状
学力不足を補うリメディアル教育が拡大

Part.2
大学の取り組みを探る

Part.2−@
専用組織(学習支援センター)を設けて学生に対応している例【明星大学】

Part.2−A
通常の授業でリメディアル教育を実施している例【関東学院大学】

Part.2−B
入学前教育(通学学習型)として実施している例【聖学院大学】

Part.2−C
入学前教育(自宅学習型)として実施している例【東京電機大学】

Part.3
リメディアル教育のこれから
新たな高大連携で基礎学力の定着を


『忙しい先生の業務効率化と円滑な学校運営』

Part.1
文部科学省「教員勤務実態調査」を読む

Part.1 vol.1
高校教員の労働時間は1日10時間強

Part.1 vol.2
自由もゆとりもない先生たち

Part.2
学校教員の負担を考える

Part.2 vol.1
「忙しい」が教員の心とからだを蝕む

Part.2 vol.2
生徒と向き合えない教育現場

Part.3
行政の対応を探る

Part.3 vol.1
教員の事務負担軽減を提言に盛り込む

Part.3 vol.2
教員の勤務負担軽減めざす事業を開始

Part.4
教職に意欲と誇りを持てる環境づくりを


『専門学校とAO入試』

Part.1
AO入試の現況と専門学校

Part.2
アドミッション・ポリシーが明確な専門学校版AO入試

Part.3
明確な基準を設けAO入試を導入

Part.4
基準づくりの議論が必要に

Part.5
専門学校版AO入試の具体例

Part.5 vol.1
独自色を生かした「AO入学制度」

Part.5 vol.2
高校から信頼されるAO入試をめざす

Part.6
高校と専門学校の連絡を密にすることが重要

Part.7
情報交換の場をつくることが必要

Part.8
AO入試のアンケートと研究会を実施


『高校における「奉仕」活動のあり方』

Part.1
東京都立高校の「奉仕」必修化への取り組み 2007年度からすべての都立高校で「奉仕」を必修化

Part.2
東京都教育委員会インタビュー
社会貢献の精神や方法を学べるように全国で初めて「奉仕」を必修化

Part.3
奉仕体験活動の先行事例を見る

Part.3 vol.1
商業高校の特色を生かし地域に貢献する「まちおこし体験活動」を計画

Part.3 vol.2
2年生全員が参加する社会体験活動で進路選択や学習の姿勢が変化

Part.3 vol.3

「奉仕」のための組織づくりを進め生徒は自主的に活動に取り組む

Part.3 vol.4
福祉や国際ボランティアなどを2週間の総合的な学習の時間に体験

Part.4
文部科学省インタビュー

奉仕体験活動の位置づけ明確化などで各学校の取り組みを支援
Part.4 vol.1

Part.4 vol.2

Part.5
日本ボランティア学習協会インタビュー

ボランティア活動の教育力を活用して新たな教育の展開を
Part.5 vol.1

Part.5 vol.2

Part.5 vol.3

 都立芝商業高校は、東京都の奉仕体験活動必修化実践・研究校として、商店街のお祭りの補助活動を「奉仕」に結びつける取り組みを進めてきた。それを踏まえて2007年度からは奉仕科目として「まちおこし体験活動」を計画している。奉仕体験活動を統括する長崎正副校長と、奉仕体験活動の推進役を担う山本弥生先生に話をうかがった。

2004年度から「模擬株式会社芝翔」が
地域のお祭りやイベントで活動


 都立芝商業高校は、東京都教育委員会の設置する奉仕体験活動必修化実践・研究校のグループAに指定されている。グループAは、単位認定は行っていないものの特色ある奉仕体験活動を実施している学校だ。芝商業高校の場合は、以前から地域連携活動を進めてきた実績があり、とくに2004年度からは「芝翔」という模擬株式会社をつくって地域のお祭りやイベントに参加し、商店街を補助する活動もしていた。長崎副校長は「芝翔」について次のように説明する。

「本校は商業高校なので、生徒は簿記、商品流通、コンピュータの使い方などを勉強しています。それらを実際の仕事でどう使うのか、小さなお店みたいなもので体験的に学ばせたいと考えていました。それで、協力していただけるところを探していたとき、インターンシップなどで信頼関係のあった商店街さんから、商店街のお祭りに出店していいというお話をいただきました。それが芝翔のスタートです」


▲ 長崎 正 副校長

自分たちの販売活動とは別に
商店街の出店を手伝う


 こうして、2004年度から3年生の課題研究の授業として「模擬株式会社芝翔」を設け、希望者が活動することになった。「模擬」とはいえ内容は本格的だ。教職員、PTA、同窓会などから出資を募り、株式を発行。2004年度初めには出資者総会を開き、年度が終わると株主総会も開催した。

「インターネットで海外から民芸品などを輸入して販売したり、都立大島高校と連携して大島高校がつくったベーコンを販売したりしました。お祭りでは、そういう販売活動とは別に、出店料を大目に見ていただく代わりに、ほかの店の手伝いや事前準備などもしていたのです。2005年度からは、その部分を販売から切り離して『奉仕』に結びつけ、商業実践的奉仕活動として取り組むことにしました」

芝翔の活動をサポートする
ジュニア組織が誕生


 2005年度は、実践・研究校としての活動を進めるため、1年生と2年生から「芝翔ジュニア」を募った。

「奉仕必修化へ向けた研究を進めるにあたって、芝翔の下部組織として、主に商店街の手伝いなどを担う『芝翔ジュニア』を募集しました。奉仕体験活動をクラスに広げたらどうなるかということを見きわめるために、まずある程度の人数で組織をつくり、動いてもらおうと考えたのです。それから、ジュニアの生徒たちには、奉仕が必修化されたときにクラスのリーダー格になってもらうとともに、今後の芝翔の中心メンバーとして活躍してもらう目的もありました」

 芝翔ジュニアは、1年生30名、2年生20名で組織化した。芝翔ジュニアとしての活動は、港区内を中心とする商店街のお祭りやイベント、港区が主催するみなと区民祭り(後述)などにおいて販売補助や、ポスターづくりなどの事前準備を行うことが中心で、芝翔の店舗経営にも一部参加することになった。

 芝翔が活動するお祭りやイベントは夏前から始まるので、6月には芝翔ジュニアのメンバーを集めて、実践的マナー講習会とマーケティング講習会を実施。このうちマーケティング講習会は、パソコンを使って店のPOP広告を作成するなど活動に直結する内容になっている。

「芝翔ジュニアの生徒には、講習会などの事前学習を行い、その後に商店街のお祭りやイベントなどで活動することで、理論と実践を身につけさせようと考えたのです」

6月後半から11月頃にかけて
港区内中心に活動


 商店街などでの活動は、6月後半から11月頃まで続き、活動場所は約10か所にもなった。白金、芝浦、芝、青山外苑前、東麻布など商店街のお祭りや、みなと区民まつりなど港区内が中心だったが、それ以外に荒川区の尾久商店街などでも活動を行った。尾久商店街は、高校生の体験活動を積極的に受け入れていて、毎月1回ぐらいの割合で売り出しがあるからだ。

「お祭りは基本的に土曜日、日曜日にありますが、芝翔や芝翔ジュニアは土日に活動しても代休がとれるわけではないんです。ですから大変な面もありますが、自分から希望して参加している生徒なので、よく頑張っていたと思います」

2006年度は4クラスを抽出して
必修化に向けたプレテスト


 2006年度は、来年度からの奉仕必修化に向けて、1年生と2年生の各6クラスのなかから2クラスずつ計4クラスを抽出して奉仕体験活動を行うことになった。奉仕に関するプロジェクトチームで、奉仕体験活動の推進と2007年度の実施計画づくりを担当する山本先生は次のように話す。

「2006年度の場合は、奉仕必修化のプレテストと位置づけて、クラス単位で活動をしてみることにしました。ただ、今年度は必修ではないので、希望する生徒が参加するかたちをとっています。クラスごとに多少の差はありますが、大体6〜8割の生徒が参加しました。

 活動先は、8月の白金商店街の夏祭りと、10月のみなと区民まつりです。活動内容は、白金商店街の場合は販売の補助と事前準備です。みなと区民まつりでは、それ以外にゴミの分別の案内も加わりました。みなと区民まつりは、港区の芝公園や増上寺一帯が会場となり、延べ40万人も来場する大きなイベントです。そのためゴミが大量に出るので、生徒が分別ポストの前に立って、ゴミの捨て方の案内をしたのです。

 活動する4クラスは、この2つのお祭りに振り分けました。1年生と2年生1クラスずつ計2クラスずつが、どちらかのお祭りで活動するようにしたのです。お祭りはどちらも土日の2日間で、活動時間は1日8時間でした。生徒たちは、やってみると結構おもしろいという反応でした。ただ、希望して参加する生徒でも2日連続はちょっときついかもしれないと考えて、2日目に参加する生徒が減った場合は、お祭りに参加していない芝翔ジュニアのメンバーがカバーするようにしました」

2007年度から「まちおこし体験活動」を
奉仕科目として設定


 2年間にわたる研究成果を踏まえ、山本先生が中心になって2007年度から必修化される「奉仕」の計画をまとめた。科目名称は「まちおこし体験活動」で、活動内容は2006年度とほぼ同様に、お祭りにおける販売補助、事前準備、そして場所によってはゴミの分別案内など清掃関連が加わる。この「まちおこし体験活動」を履修するのは1年生になった。

「当初は2年生、あるいは1年生と2年生の2年間にする案もあったのですが、商業高校の2年生は資格試験や検定試験の準備にすごく時間をとられるので難しいと判断しました。3年生も就職や進学など進路活動があるのでムリです。そのため1年生に頑張ってもらうことにしたのです」(山本先生)

活動先は信頼関係の深い3か所
時間は1か所8時間で計24時間


 活動は、尾久商店街の売り出し、白金商店街の夏祭り、みなと区民まつりの3件に絞った。これは、活動先との信頼関係が深く、何か問題などが発生しても十分に対応できることを考慮して選定した。

 授業としての流れは、4月から5月上旬にかけて、奉仕活動の意義、ほかの高校の活動例、活動するうえで必要なマナー、必要となる知識などを事前学習として学ぶ。

 活動そのものは、尾久商店街が5月中旬、白金商店街が8月上旬、みなと区民まつりが10月上旬となる。それぞれ土日の2日間開催されるが、1年生6クラスを3クラスずつ土日に振り分ける。活動時間は1日8時間、3か所合計で24時間になる。また、活動前には、活動先から当日の役割、服装、時間などについて説明を受ける。

 それぞれの活動後には事後学習として、活動先の方にお礼状を書き、自分の活動が地域にどのように貢献できたかを振り返る。そして、すべての活動終了後には、活動成果をまとめ、自己評価を行う。

 長崎副校長は2007年度からの「まちおこし体験活動」に向けて次のように抱負を語る。

「商業高校の特色を生かした奉仕体験活動になると考えています。今年のプレテストでも商店街の方には結構、喜んでいただきました。ただ、芝商ジュニア50名の活動から1学年6クラス約210名全員が活動するとなると規模がぜんぜん違いますので不安もあることは確かなのですが、ぜひ成功させたいですね」


■東京都立芝商業高等学校
http://www.shibashogyo-h.metro.tokyo.jp/