ドリコムアイ.net…高校生の進路と教育を考えるWebマガジン
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Part.5 日本ボランティア学習協会インタビュー vol.2

2007-03-05UP

ボランティア活動の教育力を活用して
新たな教育の展開を(2)


日本ボランティア学習協会
代表理事 興梠
(こうろき)寛 氏

シリーズ6 〜 シリーズ3

『リメディアル教育の現場』

Part.1
リメディアル教育の背景と現状
学力不足を補うリメディアル教育が拡大

Part.2
大学の取り組みを探る

Part.2−@
専用組織(学習支援センター)を設けて学生に対応している例【明星大学】

Part.2−A
通常の授業でリメディアル教育を実施している例【関東学院大学】

Part.2−B
入学前教育(通学学習型)として実施している例【聖学院大学】

Part.2−C
入学前教育(自宅学習型)として実施している例【東京電機大学】

Part.3
リメディアル教育のこれから
新たな高大連携で基礎学力の定着を


『忙しい先生の業務効率化と円滑な学校運営』

Part.1
文部科学省「教員勤務実態調査」を読む

Part.1 vol.1
高校教員の労働時間は1日10時間強

Part.1 vol.2
自由もゆとりもない先生たち

Part.2
学校教員の負担を考える

Part.2 vol.1
「忙しい」が教員の心とからだを蝕む

Part.2 vol.2
生徒と向き合えない教育現場

Part.3
行政の対応を探る

Part.3 vol.1
教員の事務負担軽減を提言に盛り込む

Part.3 vol.2
教員の勤務負担軽減めざす事業を開始

Part.4
教職に意欲と誇りを持てる環境づくりを


『専門学校とAO入試』

Part.1
AO入試の現況と専門学校

Part.2
アドミッション・ポリシーが明確な専門学校版AO入試

Part.3
明確な基準を設けAO入試を導入

Part.4
基準づくりの議論が必要に

Part.5
専門学校版AO入試の具体例

Part.5 vol.1
独自色を生かした「AO入学制度」

Part.5 vol.2
高校から信頼されるAO入試をめざす

Part.6
高校と専門学校の連絡を密にすることが重要

Part.7
情報交換の場をつくることが必要

Part.8
AO入試のアンケートと研究会を実施


『高校における「奉仕」活動のあり方』

Part.1
東京都立高校の「奉仕」必修化への取り組み 2007年度からすべての都立高校で「奉仕」を必修化

Part.2
東京都教育委員会インタビュー
社会貢献の精神や方法を学べるように全国で初めて「奉仕」を必修化

Part.3
奉仕体験活動の先行事例を見る

Part.3 vol.1
商業高校の特色を生かし地域に貢献する「まちおこし体験活動」を計画

Part.3 vol.2
2年生全員が参加する社会体験活動で進路選択や学習の姿勢が変化

Part.3 vol.3

「奉仕」のための組織づくりを進め生徒は自主的に活動に取り組む

Part.3 vol.4
福祉や国際ボランティアなどを2週間の総合的な学習の時間に体験

Part.4
文部科学省インタビュー

奉仕体験活動の位置づけ明確化などで各学校の取り組みを支援
Part.4 vol.1

Part.4 vol.2

Part.5
日本ボランティア学習協会インタビュー

ボランティア活動の教育力を活用して新たな教育の展開を
Part.5 vol.1

Part.5 vol.2

Part.5 vol.3

体験を通じて自分を見つめたり
社会問題を理解する


――「ボランティア活動の持つ教育力」というお話がありましたが、具体的にはどのようなことなのでしょうか?

興梠 大きく見ると3つあります。これは、ヨーロッパやアメリカの研究者と話をしても大体、共通しています。まず1つは、自己への探究があります。ボランティアで体験したことを通して自分自身を見つめたり、自分の生き方について考えていくことですね。

 2つ目は、ボランティアを通じて社会問題を理解することです。たとえば、福祉や国際理解などにかかわるボランティアを行うことによって、それらの現状や課題を知るという意味です。

 3つ目は、ボランティアのなかで、学習成果を社会に役立てていくことがあります。たとえば、デザインの勉強をしているなら商店街のパンフレットづくりに役立てていく、といったかたちです。学問や技術を自分のものだけにするのでなく、社会に還元していくわけです。それによって、学ぶことにはこんなに大きな社会的な意味があったんだ、ということに気づく。これは、サービスラーニングといって、とくにアメリカで発達している学習方法です。


文化や社会に対する責任意識を育み
自分たちの役割に気づく


興梠 それから、ボランティア学習が高校生に与える影響という意味では4つ考えられます。1つ目は、道徳的責任意識を育むこと。道徳や社会的モラルは、大人からいわれたから守るというのではなく、自分たち1人ひとりがよりよいものをつくっていくんだという意識を持つようになることです。

 2つ目は、文化的責任意識を育むこと。つくられた文化をただ共有するだけでなく、ゆたかで、より刺激的で、社会に活力を与える文化を自分たちがつくっていく。つまり、自分たちが文化をつくる担い手なんだということを学ぶわけです。

 3つ目は、社会的責任意識を育むことがあります。社会は誰がつくっていくのか? それは自分自身である、ということです。実は自分自身が社会をつくっていく主役なんだということに気づき、民主主義社会のルールとか、市民社会の役割や責任などを学んでいく。

 4つ目は、これは日本の教育界ではあまりいわれないと思いますが、政治的責任意識を育むことがあります。ヨーロッパやアメリカではあたりまえのこととされていますが、自分自身が積極的に政治に参加していく姿勢を身につけるということです。どの政党がどうとかいう話ではなく、自分たちが参加していかなければ政治もいいものにはならないということを学ぶという意味です。


活動の企画、立案、運営、評価まで
高校生自身の参画を


――高校で奉仕体験活動を進めていくうえでポイントになるのは、どのようなことでしょうか?

興梠 まず、学校のなかのボランティア性はどうなのか、というところから出発すべきだと思います。学校をよりよいものにするために、学校で起こる問題を生徒自身が考え、討論し、解決していく。

 そして次の段階として、学校が地域社会に貢献していくことに生徒自身が参画していく。意外に見落とされがちなのですが、この視点を忘れてはいけないと思います。

 2つ目は、企画、立案、運営、評価まで高校生自身が参画すること。つくって与えるものではないんですね、ボランティア学習は。高校生の持っている感性や問題意識を引き出し、先生方は伴走役として寄り添っていく。そうすることによって、自発性や主体性を育てることができます。

 実際に、高校生自身がボランティアセンターを運営して、活動先を紹介したり、プログラムをつくっているところもあります。その高校では、生徒だけでなく先生たちにもボランティアに参加するように呼びかけています。あるいは、生徒自身がボランティアバンクをつくって数百人が登録し、活動している高校もあります。高校生には、そういう発想や行動力があるんですよ。

 3つ目は、学校のなかにコーディネーションのシステムをつくることです。たとえば、高校生が何らかのボランティアをしたいと思ったときに、どんなメニューや受入先があるか調べることができる。安全学習、マナートレーニング、対人コミュニケーショントレーニングなどの支援もしてくれる。そして、地域社会との連絡役にもなってくれる。そういうシステムを高校のなかにつくるということです。


学んだことを活動に生かすことで
学ぶ意味や目的を再発見する


興梠 4つ目は、教科などアカデミズムと結んだ総合知へと発展させる。ボランティア学習を勉強の邪魔者扱いする風潮を払拭することです。とくに保護者の方のなかには、ボランティア学習に使う時間があるなら、それを教科の勉強にあてて成績を向上させてもらいたい、と思われる方がいるかもしれません。

 では、どうすればいいのか。それは、先程お話ししたサービスラーニングという教育が参考になると思います。

 アメリカの大学では、ボランティア活動を取り入れて、学んだことを社会のために生かしていくサービスラーニングという教育を行っています。実施していない大学はないといってもいいくらいです。

 たとえば、世界を100人の村にたとえたら、大学にいける人は1人しかいない。あなたは自分1人のために学ぶのか、99人のために学ぶのか、どっちが気合が入る? ということです。そこで、学生たちは気がつくわけです。自分が何かを学んでいるのは99人の人を幸せにするためなんだと。じゃあ、もっと頑張ろうと、ボランティアは学力の向上にも役立つ。

 高校生も同じです。知識をスポンジのように吸収するだけでなく、学ぶ意味や目的を発見していく。それには、ボランティア活動の持つ教育力がものすごく役立ちます。だから、アカデミズムや技術とボランティア活動を結びつけて新しい教育、総合知への試みを展開していくことが望まれるのです。それが、冒頭でお話ししたポジティブな意味でのボランティア学習です。


■日本ボランティア学習協会
http://www.volunteer-learning.jp/