Part.5 日本ボランティア学習協会インタビュー vol.3

2007-03-12UP

ボランティア活動の教育力を活用して
新たな教育の展開を(3)


日本ボランティア学習協会
代表理事 興梠
(こうろき)寛 氏

『リメディアル教育の現場』

Part.1
リメディアル教育の背景と現状
学力不足を補うリメディアル教育が拡大

Part.2
大学の取り組みを探る

Part.2−@
専用組織(学習支援センター)を設けて学生に対応している例【明星大学】

Part.2−A
通常の授業でリメディアル教育を実施している例【関東学院大学】

Part.2−B
入学前教育(通学学習型)として実施している例【聖学院大学】

Part.2−C
入学前教育(自宅学習型)として実施している例【東京電機大学】

Part.3
リメディアル教育のこれから
新たな高大連携で基礎学力の定着を


『忙しい先生の業務効率化と円滑な学校運営』

Part.1
文部科学省「教員勤務実態調査」を読む

Part.1 vol.1
高校教員の労働時間は1日10時間強

Part.1 vol.2
自由もゆとりもない先生たち

Part.2
学校教員の負担を考える

Part.2 vol.1
「忙しい」が教員の心とからだを蝕む

Part.2 vol.2
生徒と向き合えない教育現場

Part.3
行政の対応を探る

Part.3 vol.1
教員の事務負担軽減を提言に盛り込む

Part.3 vol.2
教員の勤務負担軽減めざす事業を開始

Part.4
教職に意欲と誇りを持てる環境づくりを


『専門学校とAO入試』

Part.1
AO入試の現況と専門学校

Part.2
アドミッション・ポリシーが明確な専門学校版AO入試

Part.3
明確な基準を設けAO入試を導入

Part.4
基準づくりの議論が必要に

Part.5
専門学校版AO入試の具体例

Part.5 vol.1
独自色を生かした「AO入学制度」

Part.5 vol.2
高校から信頼されるAO入試をめざす

Part.6
高校と専門学校の連絡を密にすることが重要

Part.7
情報交換の場をつくることが必要

Part.8
AO入試のアンケートと研究会を実施


『高校における「奉仕」活動のあり方』

Part.1
東京都立高校の「奉仕」必修化への取り組み 2007年度からすべての都立高校で「奉仕」を必修化

Part.2
東京都教育委員会インタビュー
社会貢献の精神や方法を学べるように全国で初めて「奉仕」を必修化

Part.3
奉仕体験活動の先行事例を見る

Part.3 vol.1
商業高校の特色を生かし地域に貢献する「まちおこし体験活動」を計画

Part.3 vol.2
2年生全員が参加する社会体験活動で進路選択や学習の姿勢が変化

Part.3 vol.3

「奉仕」のための組織づくりを進め生徒は自主的に活動に取り組む

Part.3 vol.4
福祉や国際ボランティアなどを2週間の総合的な学習の時間に体験

Part.4
文部科学省インタビュー

奉仕体験活動の位置づけ明確化などで各学校の取り組みを支援
Part.4 vol.1

Part.4 vol.2

Part.5
日本ボランティア学習協会インタビュー

ボランティア活動の教育力を活用して新たな教育の展開を
Part.5 vol.1

Part.5 vol.2

Part.5 vol.3

ボランティアセンターなど
地域の支援機関と連携を


――奉仕体験活動は、地域社会との連携が不可欠だと思いますが、これはどのように進めていけばいいのでしょうか。

興梠 地域には、中間支援機関と呼ばれるものがあります。多くの市町村にあるボランティアセンターやNPOセンターが代表的なものですが、受け入れる施設やNPOと学校との間に立って橋渡しをしています。そこには、ボランティアの専門家的なコーディネーターがいて、情報を提供してくれて、視聴覚資料などもあります。ですから、そういう中間支援機関を積極的に活用すればいいと思います。

 ただ、その際に注意したいこともあります。それは、いきなり電話で相談するのではなく、少なくとも最初は先生が出向いて相談したほうがいいということです。

 私たちが、ボランティアを担当する先生方を対象にした研修会を開いたときに「ボランティアセンターに行ったことがある方」と質問すると、100人のうち1人か2人いたらいいほうです。それが実情ですが、やはり、まず先生が訪ねていって、顔の見える人間関係をつくっておくべきでしょうね。


奉仕体験活動を通じて
ボランティアの意味を考える


――高校における奉仕体験活動は、今後さらに広がりを見せるかもしれませんが、どのような方向に進んでいくべきだとお考えですか。

興梠 そもそもボランティア活動は社会のなかでどのような役割を果たすのか、ということを先生方にはぜひ考えていただきたいと思います。

 私たちの社会は、大きく分けて4つの力によって、さまざまな問題解決がなされたり、社会をゆたかなものにしています。1つ目は家族や隣近所です。家族同士が助け合って、あるいは隣近所の人たちが相互扶助で助け合って問題を解決していく。

 2つ目は行政です。私たちは、家族や隣近所では解決できないことを行政に託しているのです。税金というかたちで公共的な役割にお金を払って投資している。

 3つ目は企業です。企業も大きな社会的責任を果たしていて、いまでは社会に貢献しない企業は生き残れないとさえいわれています。



興梠 寛(こうろき ひろし)
1948年、宮崎県生まれ。新聞記者を経てイギリス「コミュニティ・サービス・ボランティアズ」(CSV)客員研究員としてアレック・ディクソン博士に学ぶ。社団法人日本青年奉仕協会(JYVA)事務局長・理事をはじめ数多くの役職を歴任。ALEC代表、全国ボランティア学習協会代表理事、社会福祉法人世田谷ボランティア協会理事長、全国体験活動ボランティア活動総合推進センター・コーディネーター、第3期・第4期中央教育審議会(初等中等教育・生涯学習)臨時委員などを務め、昭和女子大学など多くの大学で教鞭もとる。主な著書に『希望への力−地球市民社会の「ボランティア学」』(光生館)、『ボランタリズム=現代のエスプリ』(至文堂)、『英国の市民教育』(日本ボランティア学習協会)、『世界はいまボランティア学習の時代』(JYVA出版)などがある。

 日本の実情はどうなのかと考えてみると、イギリスやアメリカに比べて極端に行政に依存する社会をつくってしまったのではないか。依存すればするほど、私たちはたくさんお金を払わないといけないし、行政そのものも肥大化していく。たしかに、ムリのない現実もあります。家族の単位がどんどん小さくなって問題解決力が低くなったり、地域コミュニティが崩壊している。だからといって、行政にばかり依存して十分なことをしてくれないと嘆いているだけでいいのでしょうか。

 企業はどうかというと、残念ながら企業は営利を目的としていますから、お金を払わないとサービスを提供してくれません。

ボランティアがつくる市民社会は
社会問題を解決する力を持つ


興梠 では、ほかに社会の問題を解決するシステムはないのかということになりますが、もう1つあります。それは、ボランティアがつくる市民社会というものです。

 個人、家族、地域、さらには民族、国家といった利害を超えて、人々が自発的に参加し活動する。そして、血縁でも、行政でも、企業でも解決できない問題を解決していく。そういう、もう1つのパワー。それが市民社会なのです。

 もちろん、行政も大事だし、企業も大事だし、家族の絆はもっと大事です。しかし、世界はもう新しい社会的な装置というか、ソーシャル・ガバナンスという、もう1つの問題解決のための社会システムを求めているのです。

 だから、出発点は奉仕体験活動でいいけれど、生徒たちが将来、自発的なボランティアとなって市民社会をつくりあげ、行政や企業とパートナーシップを組んだり、ときには厳しくチェックしたりしながら、活力のある社会をつくっていく。そんなふうに、将来の日本のダイナミックな社会システムづくりや、共生社会に貢献するアカデミズムの深化にまでつながっていくんだということを意識しながら、奉仕体験活動に取り組んでいただきたいと思います


《Eye's Journal シリーズ3 『高校における「奉仕」活動のあり方』 完》


■日本ボランティア学習協会
http://www.volunteer-learning.jp/