ドリコムアイ.net…高校生の進路と教育を考えるWebマガジン
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Part.1

2008-03-24UP

文部科学省「教員勤務実態調査」を読む
Vol.2 自由もゆとりもない先生たち


教育ジャーナリスト・田中俊亘

シリーズ6 〜 シリーズ3

『リメディアル教育の現場』

Part.1
リメディアル教育の背景と現状
学力不足を補うリメディアル教育が拡大

Part.2
大学の取り組みを探る

Part.2−@
専用組織(学習支援センター)を設けて学生に対応している例【明星大学】

Part.2−A
通常の授業でリメディアル教育を実施している例【関東学院大学】

Part.2−B
入学前教育(通学学習型)として実施している例【聖学院大学】

Part.2−C
入学前教育(自宅学習型)として実施している例【東京電機大学】

Part.3
リメディアル教育のこれから
新たな高大連携で基礎学力の定着を


『忙しい先生の業務効率化と円滑な学校運営』

Part.1
文部科学省「教員勤務実態調査」を読む

Part.1 vol.1
高校教員の労働時間は1日10時間強

Part.1 vol.2
自由もゆとりもない先生たち

Part.2
学校教員の負担を考える

Part.2 vol.1
「忙しい」が教員の心とからだを蝕む

Part.2 vol.2
生徒と向き合えない教育現場

Part.3
行政の対応を探る

Part.3 vol.1
教員の事務負担軽減を提言に盛り込む

Part.3 vol.2
教員の勤務負担軽減めざす事業を開始

Part.4
教職に意欲と誇りを持てる環境づくりを


『専門学校とAO入試』

Part.1
AO入試の現況と専門学校

Part.2
アドミッション・ポリシーが明確な専門学校版AO入試

Part.3
明確な基準を設けAO入試を導入

Part.4
基準づくりの議論が必要に

Part.5
専門学校版AO入試の具体例

Part.5 vol.1
独自色を生かした「AO入学制度」

Part.5 vol.2
高校から信頼されるAO入試をめざす

Part.6
高校と専門学校の連絡を密にすることが重要

Part.7
情報交換の場をつくることが必要

Part.8
AO入試のアンケートと研究会を実施


『高校における「奉仕」活動のあり方』

Part.1
東京都立高校の「奉仕」必修化への取り組み 2007年度からすべての都立高校で「奉仕」を必修化

Part.2
東京都教育委員会インタビュー
社会貢献の精神や方法を学べるように全国で初めて「奉仕」を必修化

Part.3
奉仕体験活動の先行事例を見る

Part.3 vol.1
商業高校の特色を生かし地域に貢献する「まちおこし体験活動」を計画

Part.3 vol.2
2年生全員が参加する社会体験活動で進路選択や学習の姿勢が変化

Part.3 vol.3

「奉仕」のための組織づくりを進め生徒は自主的に活動に取り組む

Part.3 vol.4
福祉や国際ボランティアなどを2週間の総合的な学習の時間に体験

Part.4
文部科学省インタビュー

奉仕体験活動の位置づけ明確化などで各学校の取り組みを支援
Part.4 vol.1

Part.4 vol.2

Part.5
日本ボランティア学習協会インタビュー

ボランティア活動の教育力を活用して新たな教育の展開を
Part.5 vol.1

Part.5 vol.2

Part.5 vol.3

実態が見えない実態報告

 2007年3月公表の「教員勤務実態調査(高等学校)報告書」は、高校教員の1日平均の労働時間が約10時間であること、加えて高校教員は1日平均26分の持ち帰り仕事を抱えていることを明らかにした。また、休日1日当たりの残業時間量は1時間15分で、これとは別に1時間26分の持ち帰り時間量があるという調査結果を残している。

 1日10時間の労働はかなり過酷だ。これが平均労働時間であることを考えるなら、おそらく、終業時刻と同時に帰宅できる日もあれば、ときには12時間、13時間、あるいはそれ以上を費やす日もあるだろう。それが数日続き、加えて休日までもとなると、体調を崩す教員が出ても不思議はない。にもかかわらず、この調査報告に臨場感がないのは、就業時間が学校によってまちまちで、かつ、教員の勤務時間管理が「国立及び公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法」という特別な法律に則っていることから、たとえば1日8時間労働を基準にした一般的検証にそぐわないとの判断があったからではないだろうか。

 また、この調査そのものが、行政改革の一環として持ち上がった教員給与の見直しに向けた資料づくりの意味を持つことから、詳細なデータの提供に終始しすぎた観もある。

 授業準備12分、成績処理5分、事務・報告書作成1分……いすれも、平均26分とされた勤務日の持ち帰り時間の内訳である。あくまで1日に換算した時間であるとはわかっていても、1分で仕上がる報告書など「あるわけがない」とか、1日12分や5分程度で終わるのなら「持ち帰る必要もないではないか」と思われるのが心配だ。

 教員の実態を証してくれたはずの報告書でありながら、「どうもピンとこない」「他人事のように感じる」、そんな教員も少なくないだろう。


高等学校教員の労働時間・残業時間の内訳

授業工夫もできない教育現場

「国立及び公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法」は、学校教員を労働基準法が定める超過勤務手当制度の適用外とすることを定めた法律である。1960年代に超勤手当が支払われないことを不服として各地で起こった手当請求訴訟を契機に検討がなされ、本俸の4%の「教職調整額」を支給することを付加して1971年に施行された。略称は「給特法」である。

 給特法制定にまつわる人事院の論拠は概ね次の通りだ。

「教員の勤務時間については、教育が特に教員の自発性、創造性にもとづく勤務に期待する点が大きいこと、および夏休みのように長期の学校休業期間があること等を考慮するとき、その勤務のすべてにわたって一般の行政事務に従事する職員と同様な時間管理を行うのは適当ではなく、とりわけ超過勤務手当制度は教員になじまない」

 教員の自発性や創造性にもとづく教育への期待はいまも変わりない。何を教えるかの指針は学習指導要領にあっても、どう教えるかは教員に委ねられている。それが授業準備であり、生徒の興味・関心に合わせて授業を工夫するのは教員の使命である。教壇に立っている間だけが教員ではなく、日ごろのかかわりの中から生徒の個性や心を知り、指導に生かす工夫も必要だ。

 教育が、こういった自由裁量の工夫が必要で、かつ国民の期待を担う特別な業務であることから、教員には教育調整額という手当が支給されているのである。また、その自由裁量の工夫を時間ベースの給与に置き換えるのが困難だから、原則として超過勤務手当は支払われないのである。

 教員に期待される自由裁量の工夫は、その業務に一定のゆとりがあってはじめてできるものに違いない。今日の教育現場に、教員が自発性や創造性を発揮するゆとりはあるのだろうか。

 もう一度、「教員勤務実態調査(高等学校)報告」を振り返ってみよう。以下に記す時間はすべて同報告から拾い出したものだ。

 勤務日1日の平均残業時間1時間43分(103分)に、持ち帰り時間26分を足すと129分。これを、長期休業のない2008年10月にあてはめてみると、勤務日が22日で計2,838分。また、分けたことの意味が見出しづらい休日1日分の残業時間と持ち帰り時間だが、その合わせた時間161分を、週休日(土曜・日曜)に休日(体育の日)を加えた9日に乗じると、休日の労働時間は1,449分となる。残業+休日勤務の時間計は4,287分。つまり、高校教員は今年の10月、平均71時間27分の超過勤務をするものと予測されるわけだ。

 さらにいうなら、これは、報告書に従って1時間43分を残業として計算した時間である。一般的な認識に合わせて1日の就業時間を8時間と考えると残業は2時間となり、先の勤務日1日に17分を加算しなければならない。その時間計374分を加えると、10月の超過勤務時間は4,661分(77時間41分)に増える。

 少なくとも、時間的なゆとりはないようにみえる。


■文部科学省『教員勤務実態調査報告書について』(2007年5月23日発表)
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/19/05/07052313.htm