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シリーズ 10
『〜教育力が問われる入試制度〜AO入試』
Part.1−@
プロローグ 前編
シリーズ 9
『専門学校の実力』
Part.1
データで分析する専門学校の現状
Part.2
専門学校の就職支援
綿密な就職指導や授業で学生をサポート
Part.3
専門学校の就学支援
奨学金など多彩な制度で学びを支える
Part.4
インタビュー
東京都専修学校各種学校協会
シリーズ 8
『魅力ある短期大学づくり』
Part.1
インタビュー
日本私立短期大学協会に聞く
Part.2 事例研究
Part.2−@
学生のキャリア意識形成を全力で支援
【埼玉女子短期大学】
Part.2−A
学ぶ喜びを体感できる新カリキュラム
【東京農業大学短期大学部】
シリーズ 7(2010年・改訂版)
『自立進学の可能性』
Part.1
プロローグ
Part.2 奨学金・教育ローンの可能性
Part.2−@
日本学生支援機構の奨学金
Part.2−A
国の教育ローン
Part.2ーB
大学の支援制度
Part.3
自立進学シミュレーション
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※この記事は、2009年1月より連載された特集記事を2010年3月末現在のデータに改訂し再掲載しています。
アメリカ発の金融不安は瞬く間に世界に広がり、国内景気の潮目が転換。いま、日本は、派遣切りや内定取り消しといった雇用不安の渦中にある。雇用は、家庭の経済に直結する問題だ。そしてそれは、相当の費用負担が必要な大学進学を揺るがしかねない問題でもある。もしも、進学や就学の費用を家庭で賄えないとしたら、進学は、断念する以外に方法はないのだろうか。これまで、進学にまつわる経済負担を補助する制度として扱われてきた奨学金や教育ローンにスポットをあて、その現状から、進学者が自ら費用を負担して学ぶ「自立進学」の可能性を考えたい。
奨学金や教育ローンの情報は
等しく正しく伝わっているのか
2008年3月25日、JR岡山駅の山陽線ホームで、18歳の少年がまったく面識のない男性を線路に突き落とした。電車にはねられた男性は、翌26日早朝、出血性ショックで死亡。同年相次いだ無差別殺傷事件のひとつに数えられる、岡山駅突き落とし事件である。
報道によると、事件を起こした少年は、大阪の府立高校を卒業したばかりで、高校時代は学校、家庭ともに問題行動はなく、成績も上位。地方の国立大学クラスなら推薦で進学できるくらいの学力レベルにあったという。本人も大学進学をめざして勉強に励んでいたが、家庭の経済的な理由から高校卒業直後の進学は断念。働いてお金を貯めて受験しようと考え、そのために簿記の勉強もはじめていた。しかし、卒業後も勤め先は見つからなかった。
一部には、小中学校時代に受けたいじめに遠因を求めるかのような報道が見られた。岡山地検の簡易精神鑑定でアスペルガー症候群と診断されたことも伝わっている。
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確かに、受けたいじめに対する報復感情の、相手を代えた暴発が指摘される事件はある。
「いじめの標的にされ、長期にわたって心身への過酷な打撃を受けてきた者が、いじめがなくなった後も何年にもわたって、激しい暴力衝動に突き上げられ続けることはよく知られている」(芹沢俊介著『若者はなぜ殺すのか〜アキハバラ事件が語るもの』小学館新書)
芹沢氏はその例として、2001年6月の池田小学校事件をあげている。
しかし、少年のいじめ被害が事実だとしても、大学進学に対してあくまで前向きだった彼を、たとえば池田小学校事件の宅間守と同列で語るには違和感がありすぎる。芹沢氏も同書の中で岡山突き落とし事件を取り上げているが、いじめとの関係で語ることはせず、「家庭の経済的な事情でそれまで目の前に広がっていた大学進学というまっしぐらな一本道が突然、途絶えたこと」に「最初の決定的な一撃」があったととらえている。
また、アスペルガー症候群については、そもそもの鑑定結果や報道のあり方に疑問が残る。
「自閉症の三症状である、社会性の障害と、コミュニケーションの障害と、想像力の障害およびそれに基づく行動の障害のうち、コミュニケーションの障害が軽微なグループ(略)言語発達の遅れは少なく、知的には正常であるものが多い」(杉山登志郎著『発達障害の子どもたち』講談社現代新書)と専門家がいうアスペルガー症候群である。時間にして1〜3時間といわれる、文字通り簡易な診察をもとにする簡易鑑定程度で、診断できるのだろうか。
近年、重大事件を起こした加害者の精神鑑定で、アスペルガー症候群と診断される事例が目につくが、その障害が示す傾向と犯罪は結びつかないとする精神科医の意見も多い。少年がそう診断されたことが事実だとしても、報道するに当たっては、少なくとも簡易鑑定がどのように行われるのかを併記するくらいの配慮は必要だろう。
アスペルガー症候群に対する誤解を招くような報道がなされていないだろうか。教育や進路にまつわる問題をテーマとする本サイトだが、進学問題を抱えた少年が起こした事件の核心を見誤らないためにも、あえて言及しておきたい。
動機を聞かれた少年は、「人を殺せば刑務所に入れる。誰でもよかった」と語っている。ポケットには自宅から持ち出した果物ナイフを忍ばせていた。列車が入ってくる線路に人を突き落とせばどうなるか、十分にわかった上での行動だった。
事件前日の24日にはハローワークを訪ねている。まだ意欲を持っていたことがわかる。そのわずか1日後に起きた事件である。この間の心の動きは、少年本人でさえ語るのは難しいかもしれない。
しかし、事の端緒はわかる。芹沢氏が指摘するとおり、「大学進学という一本道が、突然、途絶えたこと」である。途絶えた理由は家庭の経済問題。たとえば奨学金制度を利用するなどの方策は考えられなかったのか。そもそも、奨学金や教育ローンの情報は、彼や家族に届いていたのだろうか。
教育は機会均等?
国立大の初年度費用80万円超
文部科学省の学校基本調査(速報)によると、2009年3月の高校卒業者数は106万3,581人。うち、通信制を含む大学・短大に進学した者が57万3,037人で、全体の53.9%を占めている。専修学校(専門課程)に進学した15万6,221人、同(一般課程)の6万6,889人、そして公共職業訓練施設等の6,736人を加えると、進学者は75.5%にもなる。
一方、同年の高卒者就職率は18.1%で、これは、一般課程を含む専修学校進学率(21.0%)よりも低い。
1980年代前半には40%を超えていた高卒者の就職率が二十%代にまで低下したのが1994年。平成不況真っ直中の時代だ。十%代突入は2000年。2003年には16.6%まで低下するが、景気の持ち直しに加え、団塊世代の大量退職などもあって、この数年は増加傾向にあった。
ところが、「派遣切り」「大卒者の内定取り消し」である。アメリカ発の金融不安にはじまる景気の低迷が、高卒者を含む新卒者採用に影響を及ぼすことは間違いない。この先、高校を卒業する生徒の進路は、これまで以上に限られたものになるだろう。2010年度以降、就職という選択肢を失い、その進路を「進学」に切り替える高校生が増えると予測される。そうなったとき、進学や就学に必要な費用は、だれが負担するのか。
これまでの日本では、一般に、費用負担は保護者に委ねられてきた。しかし、先の雇用不安は、新卒者だけの問題ではない。保護者の収入の減少やリストラも心配される。
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自立進学─―親がかりでない進学・就学をこう呼ぶことにする。海外には、それが当たり前の国もあるようだ。経済協力開発機構(OECD)が行う15歳の生徒を対象にした3年に1度の学力調査(PISA)で、2003年、2006年と続けてトップの成績をおさめたフィンランドがそうだという。
「フィンランドの公立大学には授業料がない。私立大学がないので、つまり、すべての大学が無料ということである。(略)十七歳以上の学生であれば、(略)月額平均五百ユーロの生活援助が受けられる。この援助は、人数に制限もなければ、返済義務もない。(略)贅沢な生活をしなければ、この生活援助だけでなんとか生活していける。(略)こちらの学生は金銭面で親にまったく頼っていない」(堀内都喜子著『フィンランドの豊かさのメソッド』集英社新書)
社会の制度設計がまったく異なるフィンランドと日本を単純に比較するわけにはいかないが、日本では、国立大学であっても、授業料53万5,800円と、初年度には28万2,000円の入学金が必要だ。
そんな日本で、自立進学はできるのか。次回以降、日本の奨学金や教育ローンの現状から、親がかりでない進学の可能性を探っていく。
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