ドリコムアイ.net…高校生の進路と教育を考えるWebマガジン
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Part.2 

2010-04-12UP

奨学金・教育ローンの可能性−B
大学の支援制度


取材・構成:田中俊亘(教育ジャーナリスト)

シリーズ 10
『〜教育力が問われる入試制度〜AO入試』

Part.1−@
プロローグ 前編


シリーズ 9
『専門学校の実力』

Part.1
データで分析する専門学校の現状

Part.2
専門学校の就職支援
綿密な就職指導や授業で学生をサポート

Part.3
専門学校の就学支援
奨学金など多彩な制度で学びを支える

Part.4
インタビュー
東京都専修学校各種学校協会



シリーズ 8
『魅力ある短期大学づくり』

Part.1
インタビュー
日本私立短期大学協会に聞く

Part.2 事例研究

Part.2−@
学生のキャリア意識形成を全力で支援
【埼玉女子短期大学】

Part.2−A
学ぶ喜びを体感できる新カリキュラム
【東京農業大学短期大学部】


シリーズ 7(2010年・改訂版)
『自立進学の可能性』

Part.1
プロローグ

Part.2 奨学金・教育ローンの可能性

Part.2−@
日本学生支援機構の奨学金

Part.2−A
国の教育ローン

Part.2ーB
大学の支援制度

Part.3
自立進学シミュレーション

※この記事は、2009年1月より連載された特集記事を改訂し、再掲載しています。

 教育ローンはもちろん、日本学生支援機構の奨学金も、その実は後に返還しなければならない、いわばローンだ。自立進学を考えるなら、返済の必要のない給付制度の活用も視野にいれておきたい。今回は、大学が独自に行う給付を主体とする進学・就学の支援制度を紹介する。


経済環境を背景にした
緊急支援


 百年に一度と言われる世界同時不況が現実となった。1990年代はじめから約10年間にわたった平成不況は、土地や株への過剰投機でふくらんだ、いわゆるバブル景気の反動が招いた国内問題だったが、今回は消費大国アメリカを発信源として世界に広まった国際問題だ。海外市場に軸足を移すことで不況を乗り切り、日本経済の牽引役として雇用の安定にも貢献してきた自動車産業や電機産業の痛手が大きい。雇用調整という名の解雇、ワークシェアリングによる収入減……家計を揺るがす雇用不安は派遣社員にとどまらず、正社員にもおよびはじめた。

 この先、保護者の失職や収入減によって、進学を断念せざるを得ない高校生が出ることが予測される。そんな今日の経済環境を背景に、2009年度の一般入試が本格化する少し前、進学者に対する緊急的な支援制度の創設や、奨学制度の拡充・増額を決める大学が相次いだ。いくつかを拾ってみよう。

▼下記内容は2009年度実績
◆筑波学院大(茨城)特別経済支援/入学金(25万円)を免除、授業料の分割納入、採用定員20人
◆淑徳大(千葉)緊急学資支援特別制度/初年度学費(140万円)を全額免除、対象は30〜60人
◆聖学院大(埼玉)緊急・経済支援特別入試/入学金(28万円)を免除、授業料の分納機会の増加、募集人員は50人
◆駒沢女子大(東京)学納金緊急支援/初年度学費(125万円)・2年次以降授業料の半額(年約40万円)を無利子貸与、入学定員の2割以内
◆愛知東邦大「緊急経済支援給付奨学金」/前期学納金(経営学部49万円、人間学部54万円)を免除
◆日本福祉大(愛知)緊急支援/前期学費(最大78.5万円)を免除、対象は20人
◆中部学院大(岐阜)緊急経済支援(給付型奨学金)/学納金の全額免除・半額免除・入学金免除、募集人員は短大部とあわせて40人
◆立命館大(京都)緊急入学時給付奨学金/学費前期分を免除(最大102.25万円)
◆学校法人加計学園「緊急奨学支援制度」/岡山理科大・倉敷芸術科学大(岡山)・千葉科学大の3校計50人の初年度学費から100万円を減免
◆北九州市立大(福岡)緊急特別対策/入学金(最大42.3万円)の納入を2年間猶予

 いずれも保護者の離職などによって進学事情が急変した者を対象とする。入学金や前期学費の免除を掲げる大学が多いのは、経済的な問題を抱える進学者にとって、入学前に収めなければならない学費が一番のネックになるからだろう。これまでに見てきたように、奨学金の受給は大学入学後となるため、前もって納めなければならない納付金としては使えない。事前借入が可能なのは教育ローンに限られる。

 返済の必要がない給付による大学の緊急対応制度は、教育ローンを補う制度として、親がかりでない自立進学にも活用できそうだ。

 家庭の経済事情が急変した在学生に対して、緊急対応の奨学金制度などによって支援する大学はかつてからあった。
「ここ数年その希望者が増えて、これまでの予算ではもう限界。2009年度からは予算枠の増額を申請した」とは、東京都内の有名私大の話だ。

 所得格差が広がっているといわれる。今後は「緊急」ではなく、恒常的な支援制度として定着させる大学も出てくるのではないだろうか。

チャレンジの価値がある
給費生&特待生


 新しく制度を設けるのではなく、これまでの制度を拡大して緊急支援とする大学もある。たとえば山梨英和大の「学費負担軽減緊急支援」がそうだ。一般入試A日程の受験者から選抜する特待生枠を20%から30%に拡大(最大50人)。合格すれば1・2年次の学費から42.5万円が減免され、入学後の審査次第では3・4年次も継続することができるという。また、同大ではセンター試験利用入試でも特待生を選抜し、センター試験2科目で70%(280点)以上の得点をあげている場合、人数制限を設けずに特待生合格となる。

 特待生制度は、多くの大学が設ける制度である。山梨英和大の例の通り、学力の優れた者に適用される制度であるため、相応の成績をおさめなければならないのは確かだが、選ばれれば学費の一部、あるいは全額が免除され、大学によっては返還の必要のない奨学金が支給される場合もある。

 特待生入学者は、一般に入学試験の結果で選抜される。山梨英和大のように、一般入試受験者から選抜する場合もあるが、特待生入試、スカラシップ入試、給費生入試などといった特別入試を実施する大学もある。

 たとえば神奈川大が行う給費生入試を受験して、給費生として採用されると、入学金(30万円※2009年実績)と、後援会費や保険料からなる委託徴収金(約2万3,000円※同)を除く初年度納入金が免除される。加えて文系学部の学生には年100万円、理系学部には年120万円の奨学金を給費、自宅外通学者にはさらに年60万円の生活援助金が給費される。入学前に30万円強の納入金さえ準備できれば、他の奨学金は必要ない。これだけで自立進学が実現しそうだ。

 当然、給費生入試の難度はきわめて高い。全学部合わせて6,204人が受験した2009年度入試の給費生合格は166人で、競争率は37.4倍。ただし、給費生の選考にはもれても一定以上の成績をおさめれば一般合格となる。給費生・一般合格をあわせた同試験の競争率は2.6倍だ。

 学費免除に加えて奨学金や生活費まで支給される神奈川大の給費生はまれなケースだが、入学時から学費を全額免除する特待生制度を設ける大学は決して少なくない。学力アップを図ること、そして大学の入試制度をよく調べることが、自立進学の第一歩といえるかもしれない。

将来の普及が期待される
新しい提案


 先の緊急支援制度や特待生制度以外にも、返還の必要のない独自の奨学金制度をもつ大学は多い。しかし、それらは合格後や入学後の申請・採用であるため、採用されなかったことを考えるなら、自立進学のあてにはしづらいという難点があった。

 そんな大学独自の奨学金にあって、早稲田大(東京)が2009年度の入学者から適用した入試前予約採用給付奨学金は画期的な制度といえるだろう。「めざせ!都の西北奨学金」と名づけられた同制度は、受験を前に奨学生採用の申請を受け付け、その結果を事前に通知するというもので、2010年度の入学者募集にあたっては、10月中旬から11月末にかけて採用申請、12月下旬に通知された。

 採用候補者となった者は、他の受験生とともに一般入試またはセンター試験利用入試を受験して、合格すれば、入学前に奨学金受給が約束される。支給は年40万円の4年間継続。東京、神奈川、埼玉、千葉以外の高校で評定平均値3.5以上の成績をおさめ、また、家計支持者(最も収入が多い者)の給与年収が700万円未満、事業所得の場合は250万円未満の者が対象。2010年度は500人程度を採用した。

 また、これは奨学金制度ではないが、東京大が2008年度からはじめた措置も画期的だ。家計を支える者の年間総所得が、給与収入ベースで400万円以下の場合、学費の全額を免除する。教育機会の均等を図るという意味からも、特に国公立大学がモデルにしていい措置といえるのではないだろうか。

 以上、自立進学に有効な大学独自の制度を見てきたが、ここに取り上げたのはほんの一部に過ぎない。制度ではなくても、学内でのアルバイトを斡旋するなどして、経済的事由を抱える在学生を側面から支援する聖学院大(埼玉)や明星大(東京)などの例もある。今後も新たな提案をする大学は増えてくることだろう。