EYE's Journal

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シリーズ1 教員を育てる
Part.6 
補足「教職大学院」とは

編集部
※組織名称、施策、役職名などは原稿作成時のものです
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文部科学省から、教職大学院の設置が発表されたのは昨年6月のこと。現在、中央教育審議会に設けられたワーキンググループがその詳細を審議している。この夏には最終答申が出される予定だ。

各大学のホームページを見ると、いくつかの大学が設置決定を伝えているものの、内容にまで踏み込んだ発表は少ない。カリキュラムや教員陣容などが公表されるのは答申を受けた後と思われる。

2006年5月段階で分かる範囲で、どのようなものになるかを示したのが図表1である。他の専門職大学院に類似したシステムだが、実務家教員の割合など大きく異なる項目もある。

研修や従来の大学院では十分に補えなかった「実践力」「指導力」が付与される。現場において切望される能力なだけに、期待する関係者も少なくない。

その一方で疑問も生じる。教職大学院は魅力ある制度なのだろうか。教員としての資質向上は期待できようが、2年間職場を休み(または就職せずに)、多額の学費を費やすに値するのか。

学部4年間で完結する教員養成制度は堅持され、教職大学院進学は教員になる必須条件にはならない。この点、法曹界に入るための関門となった法科大学院とは異なる。また、採用における優遇措置は現段階では不明のままだ。この分だと各教育委員会に委ねられる形となるのだが、東京都のように自前で教員養成を行い優秀な学生を別枠で採用する教育委員会が出現している(part.8で紹介)。教育委員会としても、この方が信用に足るシステムと見ていると考えられる。

さらに、Part.1のグラフで示したように、教員採用試験の競争率は低い。特に顕著なのが小学校だが、景気回復が進み民間の採用数がさらに増えることで教員志望者が減り、中学校や高校の競争率も低くなると予想される。競争率が低いならすぐに試験を受けて教員になるのが得策である。

一方、現職教員が受けるメリットはどうだろうか。給与体系が変わる、管理職になるためのパスポートとは明言されず、こちらも教育委員会に一任されそうだ。

詳細が発表されれば疑問は解決するかもしれないが、これまで見えてこなかった問題が明らかになる可能性もある。一方で、何らかのメリットを与えることになれば、現行のシステムとの調整が必要になる。

※2006年5月の中央教育審議会ワーキンググループにおいて、教職大学院の設置は2008年度以降になる旨の発表があった。

図表1 教職大学院とは

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