シリーズ4

専門学校とAO入試
Part.7 インタビュー

高校と専門学校の連絡を密にすることが重要


東京都高等学校進路指導協議会・専修学校研究部会担当
東京都立新宿山吹高等学校
長崎 晶彦(あきひこ)教諭
※組織名称、施策、役職名などは取材当時のものです
更新:2007/09/10
前回まで、主に専門学校側(協会・連合会、個別の学校)のAO入試に対する考え方や動きを追ってきたが、高校側は専門学校のAO入試をどのように受け止めているのだろうか。今回は、東京都高等学校進路指導協議会・専修学校研究部会を担当し、都立新宿山吹高校で進路指導にあたっている長崎晶彦先生に、高校側の考え方について話をうかがった。

きちんとしたAO入試なら
生徒は入学後に伸びる

――東京都専修学校各種学校協会(以下東専各)が専修学校版AO入試の導入を決め、今年度からAO入試を本格実施する専門学校が出てきていますが、専門学校のAO入試をどのように見ていますか。

「AO入試は、慶應義塾大学が10数年前に開始し、その後、実施する大学が増加して、この数年は多くの大学で行われるようになりました。しかし、高校側が認めたというわけではなく、大学に押し切られるようなかたちで広まっていったのが実情です。

そういう経緯はあるにしろ、AO入試自体は悪いものではありません。むしろ、きちんとしたAO入試には、いい面もあります。論文などを含む厳しい審査を経て合格した生徒は、大学入学後に伸びるからです。本校でもAO入試を受ける生徒がいますが、AO入試で合格できなかった場合でも、頑張って勉強して一般入試で合格しています。

ですから、大学でも専門学校でも、そういうレベルのAO入試をやってくださるのであれば、高校としてはとくに問題はないだろうと思います。ただ、安易なAO入試は避けていただきたいですね」

出願が9月15日以降になったのは気がかり

――すでに専門学校のAO入試は進行中ですが、何か気にかかっている点などはありますか。

「東専各がガイドラインを作成されましたが、エントリー開始と内定が7月1日以降で出願が9月15日以降になっているのは気になりますね。

これには2つ意味があります。1つは、前任校にいたとき大学のAO入試で実際に起きたことなのですが、エントリーして内定が出ても、出願時期になって出席日数や成績の関係で卒業見込みが立たず、調査書を出せないケースが結構ありました。ですから、早い時期に内定が出てしまうことは気がかりです。

もう1つは、9月15日以降という出願日程自体です。東京都は、企業の採用選考開始が9月16日からとなっていて、就職試験開始に重なっています。さらに、その時期は多くの高校が文化祭など学校行事にとりかかっています。とくに3年生は最後の大きな行事ですから、担任の先生も生徒と一緒に行事を盛り上げていこうと頑張っています。そういう時期に担任教師が調査書等必要書類を作成するのは、かなり負担になります。せめて10月1日以降であれば、行事も一段落しますが、行事の真っ最中というのは大変気になりますね」

エントリーを把握する意味で
書類への署名は必要

――東専各のガイドラインでは、エントリーなどAO入試への申込書類に担任か保護者の署名を求めています。これについてはどのようにお考えですか。

「AO入試は本来、実施する学校と生徒の間で行うものですから、担任が口出しすることではないかもしれません。しかし、実際問題としては、先程申し上げたように出願に必要な書類が、この時点で卒業見込みが立たないため発行できないという事態が起きる場合もあります。そうなると、生徒に大変大きなダメージが残ります。

そういう意味では、担任の知らないところでエントリーして実質的な内定が出てしまうということのないように、申し込みを確認する手段は必要と思います」

内定後の課題も必要だが
自主的な学習を期待

――内定後に専門学校が継続的な課題を課すことが、東専各のガイドラインで大きなポイントの1つになっています。これについてはどのように見ていますか。

「内定後に課題を課すことは、大学でもよく実施されています。高校にできるだけ迷惑をかけないようにと配慮されているのだと思います。ただ、そこまでしないといけないのかなという気持ちもあります。

というのは、本来AO入試では、やる気があってモチベーションの高い生徒を選んでいるはずですから、内定を出した生徒が遊んでしまうのはおかしいわけです。逆にいえば、そういうところまで見きわめて内定を出してもらいたいですね。生徒のほうも、一所懸命、夢中になってやりたいことがあってAO入試を受けるのですから、入学後に備えて自主的に勉強してほしいと思います。

しかし、現実問題としては内定後、勉強に身が入らなくなる場合もあるでしょう。それを考えると、各専門学校がそれぞれの教育内容に合った課題を出したり、定期的に学校に呼んで指導するということも必要になるのでしょうね」

オープンキャンパスへの参加は前倒しに

――専門学校のAO入試が本格的に始まったことで、進路指導のあり方や流れが変わるということはあるでしょうか。

「大きくは変わらないと思いますが、専門学校の本格的なAO入試は始まったばかりなので、今年の様子を見てみないとわからない面もあります。

一般論としていえば、オープンキャンパスや体験入学に参加する時期は早めざるを得ないのではないでしょうか。たとえば、私は、夏休み中にできるだけ多く希望する分野の学校のオープンキャンパスや体験入学に参加したうえで、よく考えて自分に合った学校を選びなさいというように指導してきました。しかし、AO入試のエントリーが7月1日からということになると、春からオープンキャンパスや体験入学に参加することも必要になりそうです。

すでに大学では、3月に翌年度向けのオープンキャンパスを開催するところも出てきています。そういうことも含めて、学校を見学にいく時期は全体的に早まってくるでしょうね」

ガイドラインに沿って
厳しいAO入試を

――AO入試について、専門学校側への要望などはありますか。

「1つは、東専各としてガイドラインをつくられたわけですから、それを守っていただきたいと思います。ガイドラインに沿って、まじめにAO入試をやっている学校が損をしたり不利になるようなことがあってはいけないですからね。

それから、これは大学にも同じことがいえますが、きちんとした厳しいAO入試をやっていただきたいですね。生徒を早めに囲い込むような安易なAO入試は、長い目で見ると、その学校にとってマイナスになると思います。本当にやる気のある、いい生徒が集まらなくなりますからね」

高校と専門学校の連絡を密にすることが
AO入試を成功させるポイント

――動き出したAO入試が、高校側にも専門学校側にも、いい結果をもたらすようになるには、どんなことが大切だとお考えですか。

「高校側と専門学校側の連絡を密にすることが大切ですね。たとえば、今回のAO入試導入自体、高校の先生方にどれだけ周知されているか疑問もあります。

私の場合は今年1月頃に、いくつかの専門学校から「東専各でAO入試の導入が決まりましたが、ご存じですか」といった問い合わせがあって初めて知りました。都内でも地域によって事情が違うのかもしれませんが、いま現在でも、専門学校のAO入試が充分に周知されているようには思えません。

専門学校を個別に見ると、高校向けの広報活動に差があるようです。実際に本校の場合でも、よく訪ねてこられる学校もあれば、ほとんどこられない学校もあります。これは、専門学校の規模や人手の問題も関係してくるので難しい面もあるのでしょう。

しかし、今後、高校に各専門学校の教育活動等の内容を深く理解してもらうための、本来の意味での広報活動がより重要になってくるのではないでしょうか。

逆に、高校の教員側の問題として、あまり専門学校を実際に見学していないことがあります。私自身、残念ながら数多くの専門学校を見学することはなかなか難しい。高校の教員も時間的なゆとりがなくなってきています。さらに、自分たちの高校についても、どのような特徴を持った学校であるのか、どのような傾向の生徒がいるのか、専門学校の方々に理解していただかなくてはなりません。

厳しい現状ですが、何とか相互の連絡を密にして、生徒が自分に合った学校を選んで進学できるようにしていくことが大切だと考えています」

■東京都立新宿山吹高等学校

▲東京都立新宿山吹高等学校 長崎晶彦 教諭

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