EYE's Journal

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シリーズ11 エンタメでキャリアを磨く高等教育機関
Part.2 
エンターテインメント系学校特集(後編)
どのビジネス現場でも通用する人材を育む
エンタメ系学科のカリキュラム

城西国際大学 メディア学部
金田 克美 教授
※組織名称、施策、役職名などは原稿作成時のものです
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近年、芸能界を含むエンターテインメント業界をターゲットにしたカリキュラムを編成する専門学校や大学も増えてきた。当サイトの「東京の専門学校」では、これまで「声優」「音楽」関係の学科を取材したが、大学のエンタメ系学科では、どのようなカリキュラムで人材を育成しようとしているのだろうか。
2011年4月に映画・芸能・音楽業界を視野に入れた「映像芸能コース」を開設した城西国際大学メディア学部を訪ね、同学部教授の金田克美氏に聞いてみた。

金田氏は1987年に製作・上映された映画『次郎物語』(森川時久監督作品)で美術監督を務め、日本アカデミー賞優秀美術賞を受賞した経歴をもつ、日本を代表する美術監督である。昨年末から今年にかけて上映された『聯合艦隊司令長官 山本五十六 太平洋戦争70年目の真実』(成島出監督作品)でも美術監督を務めている。

――芸能部門はもとより、それを支える制作スタッフやエンタメビジネスの担い手の養成も視野に入れているようだが…。

金田  映画でも舞台でも、私たちが目にするエンターテインメントは表側の世界です。その裏側には監督や演出家もいれば、技術や美術のスタッフもいる。また、その成功には、マーケティングやプロモーションを担うスタッフも欠かせません。

そんな業界で活躍できる力を養おうとする大学のカリキュラムは、特定の技能教育に特化せず、私たちがめざしているのは、企画から制作、そして上映、上演、宣伝まで、幅広く学生主体でやり遂げることのできるカリキュラムです。その過程で、スタッフ同士の協働や折衝を学ぶこともできます。その関わりの中から、知らなかった職務に触れ、新しい興味や好奇心が芽生えるかもしれません。

こういった経験が、将来の進路の幅を広げてくれます。エンターテインメントを構成するあらゆる職務にまつわるキャリアパスが用意されていれば、学ぶ過程で進路の軸足を移すことも可能です。

――たとえば映画監督になりたくて入学して、本当に映画監督になれるのか。

金田  自主製作でもない限り、学校で学んだだけで監督になれるような、そんな甘い世界ではありません。もっとも、それは映画に限らず、どの世界も同じこと。新入社員にいきなり責任の重い仕事を任せる会社などないですよね。

監督は実績と信頼が何より重視されます。そして実績を積むためには、業界に近づく必要があります。エンターテインメント業界は、一般の人には縁遠い業界でしょうが、城西国際大学のメディア学部に私がいるように、こういった学校が、業界に近づく第一歩になることは間違いないでしょう。

――エンタメ業界の会社、たとえば映画会社に就職できるのか。

金田  映画会社というと、東映や東宝、松竹、日活といった会社を思い浮かべるのではないでしょうか。いずれも映画全盛時代には、それぞれの会社に製作部門があって、撮影スタジオを持ち、監督もスタッフも、そして俳優までも専属させて、映画を製作していました。

しかしながら、時代の推移とともに制作部門を縮小する会社が相次ぎ、いまではほとんどが配給と興業を中心とする経営に変わり、俳優や製作スタッフを雇用することもなくなりました。代わって制作を担うようになったのが映像の制作会社です。制作プロダクションとも呼ばれます。

こういった会社への就職の機会はもちろんあります。また、かつてのように師弟の関係で一から修行しながら仕事を覚えていく時代ではありませんので、製作に携わるスタッフとしての就職を希望するなら、最低限の知識や技術は持ち合わせておく必要があります。そういった意味では、エンタメ系の学校は、業界のニーズとともに人材育成の役割を大きく担っています。

テレビやスクリーンの中、あるいは舞台の上では、一般の日常とは異なる世界が繰り広げられている。それがために、私たちはエンタメ業界のことを、縁遠く感じがちなのかもしれない。けれど、エンターテインメントは一般に受け入れられないことには成り立たないわけで、その業界は、常に人気や話題の先端を見つめ続ける必要がある。

人気や話題と隣り合わせなのは、どのビジネスにも通じる宿命だ。エンタメ系の学校で学んだ経験――それは、業界を選ばないのかもしれない。

金田 克美(かねだ・かつみ)

[プロフィール]
東京造形大学造形学部デザイン学科映像専攻卒業、早稲田大学専門学校建築科卒業、株式会社日活を経て、美術監督としてフリーランスで活動。2011年より城西国際大学メディア学部教授に就任、現在に至る。主な受賞歴:1988年…第11回日本アカデミー賞「優秀美術賞」、2006年…Austin Fantastic Festival(アメリカ)「Best Art Direction」。主な作品:2011年東映系映画「連合艦隊司令長官 山本五十六」美術監督。

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