シリーズ17
自立進学 〈親がかりでない大学進学の可能性〉
Part.1
日本学生支援機構の奨学金制度
田中 俊亘(教育ジャーナリスト)
更新:2013/04/08
大学生の
2人に1人が利用
日本の奨学金制度の中で、最も広く利用されているのが日本学生支援機構の奨学金制度です。高校生の保護者世代のみなさんには日本育英会の名前を覚えている方もいるのではないでしょうか。2004年、日本育英会は、国や留学関連の公益法人が行っていた学生支援事業と整理・統合され、独立法人日本学生支援機構(略称JASSO)となりました。
2011年度に同機構の奨学生として採用された大学生数は約32万人。同年度の入学者数が61万ほどですから、2人に1人が利用している計算です。
同機構の奨学金は給付ではなく貸与です。大学在学中に借り入れ、卒業後に返済(返還)するシステムで、無利子で借りられる第一種と、返済がスタートすると利子が加算される第二種があります。
第一種の貸与月額と返済時の月賦額は、国公立と私立、自宅通学と自宅外通学によって異なります(表-(1))。また、表に記したもののほかに、校種や通学形態にかかわらず月額貸与額3万円を選択することも可能で、この場合の返済回数は4年制大学が13年156回、短大9年(108回)、月々の返済額は4大9,230円、短大6,666円になります。
表-(1) 日本学生支援機構「第一種奨学金」の貸与月額と返還月賦額
(2013年度入学者)

自宅外から通学する私大生の場合、月額貸与額が6万4,000円ですから、4年間の総額は307万2,000円となり、利用者は卒業後、18年216回にわけて月1万4,222円ずつ返すことになります。その貸与を受けるには、高校の成績(全体の評定平均値3.5以上)のほか、保護者の所得制限を満たす必要があります。4人世帯を目安とした年収上限は表-(2)の通りです。
表-(2) 第一種奨学金の年収・所得の上限額
(※2013年度)

月額12万円の
借り入れも可能
一方の第二種には、全体の評定平均値のような数値による成績条件はありません。成績に関しては、
(1)高等学校における成績が平均水準以上の者
(2)特定の分野において、特に優れた資質能力があると認められる者
(3)学修に意欲があり、学業を確実に修了できる見込みがあると認められる者
と記されているだけで、しかも、その「いずれかに該当する者」であれば受給資格は満たされます。(1)はともかく、(2)と(3)は、貸与希望者本人の申告次第でクリアできるのではないでしょうか。
また、第二種は、保護者の所得条件もかなり緩やかで、目安となる年収は1,000万円を超えます(表-(3))。
表-(3) 第二種奨学金の年収・所得の上限額
(※2013年度)

その貸与額は3万円、5万円、8万円、10万円、12万円から選ぶことができます。私立大学の薬学部・獣医学部はさらに2万円、同医学部・歯学部は4万円の増額も可能。私大医学部への自立進学は考えづらいとしても、国公・私立の別なく、文系学部に進学しても月12万円が貸与されるとなれば、自立進学の可能性は大きく広がります。
年額にして144万円。日本学生支援機構の奨学金貸与は入学後にスタートするため、初年度初回の学費に充当することはできませんが、入学年の前期納入分さえ事前に調達できれば、その一部を学費にあてることもできそうです。国立大学の授業料標準額が53万5,800円ですから、年額144万円の借り入れができれば、単純な年間ベースの計算ではまだ90万円ほどが残ります。その他の学費や生活費の一部が賄えるかもしれません。
問題は、卒業後の半年後からはじまる返済額。月12万円・4年間総額576万円の返済には最大20年240回が設定されます。また、先述の通り第二種には年利3%を上限とする利息がつきます(平成25年3月に貸与を修了した者の固定利率1.08%、変動0.20%)。その最大利息である3%で計算すると、月の返済額は3万2,297円。対する大卒者の初任給は20万円程度です。高いのか安いのか、意見が分かれるところではないでしょうか。
同機構の奨学生募集は、高校3年時(予約採用)と大学入学後(在学採用)に行われます。その詳細を記したパンフレット等は、ホームページ(http://www.jasso.go.jp/)から入手することができます。