EYE's Journal

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26-4

シリーズ26 出願直前
Part.4
2016年度 大学入試のトレンドをチェック④
【私立大 一般選抜試験験】

解説:駿台進学情報センター
センター長 石原 賢一氏
※組織名称、施策、役職名などは原稿作成時のものです
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大学入試は2016年度から全面的に新課程入試に移行するが、どのように変化するのだろうか。推薦入試、センター試験、国公立大個別試験、私立大一般選抜試験について、志願動向、注目される動き、併願作戦、学習の進め方などを駿台進学情報センターの石原賢一センター長に分析していただいた(全4回)。

《私立大》
2016年度も志願者増に 
文科系の復調も続く

私立大学の一般選抜試験は、9年連続で志願者増が続いている。これは、新しい入試方式の導入、インターネット出願の導入など、受験や出願をしやすいしくみが受験生を引き付けていることが大きい。そして、2015年度はセンター試験の負担増を避けたい国公立大志望者が私立大志望に切り替えるケースもあり、さらに志願者を集めることになった。

こうした傾向は、2016年度もほぼそのまま継続することになりそうだ。系統別では、国公立大以上に文科系の復調が目立っている。

前年までは、私立大の文科系は外国語や国際関係などグローバル系だけが人気だったが、2015年度は前述のように国公立大志望者が私立専願にしたり私立の併願を増やしたりする動きもあって、人文科学、法学、経済、経営、商学、社会なども志願者が増え、全体的に好調だった。2016年度も文科系の復調は続くとみられている。

理科系は、理学系は伸び悩み、受験生は工学系に流れる傾向がある。保健衛生系はとくに看護がこの2年間で1,500人ぐらい定員が増えていることもあって志願者を集めている。医学部は前年並みか微増、薬学系は国公立大と同様に中堅が減少しているので全体としての増加はないと予測されている。

私立大の各系統のなかでは、2016年度もグローバル系の動きがポイントになる。もともと「文低理高」の状況でも唯一人気の高かった系統だが、文科系全般の復調傾向に加え、2016年度は学習院大の国際社会科学部、近畿大の国際学部などが新設されるため、グローバル系全体として、さらに志願者が増える可能性がある。

《私立大》
英語の外部試験導入が増加 
インターネット出願も拡大

試験の方式では、英語の外部試験導入が目立っている。2015年度は上智大がTEAP(アカデミック英語能力判定試験)利用型入試を開始した。2016年度からは、立教大、法政大、立命館大、関西大なども英語の外部試験を導入する。

外部試験としてはTEAP以外にGTEC、TOEFL、TOEIC、英検などがあり、どの試験を使うかは大学ごとに異なる。英語の外部試験方式を選んだ場合、出願条件として一定以上のスコアを提出し、入試では英語は課されないので、それ以外の科目に力を注ぐことができる。

センター試験利用入試も、引き続き志願者を集めそうだ。たとえば、早稲田大の文学部・文化構想学部が2016年度からセンター試験利用入試を採り入れる。個別試験は課さないので、とくに地方の受験生にとっては受けやすく、志願者を集めるだろう。

また、センター試験利用入試を含めてインターネット出願を導入する大学がさらに増え、2016年度は明治大、東京理科大などが開始する。インターネット出願は手続きの便利さに加えて、受験料の割引制度とセットで実施するところが多いので経済的なメリットもある。たとえば、複数の学科や入試方式を併願する場合、3万5,000円の受験料を2併願目は1万5,000円にする例などがあり、受験生を呼び込むことにつながる。

《私立大》
逆ピラミッド型の併願作戦で志望校にチャレンジを

2016年度の私立大入試では、志望校選びはどのように考えればいいのだろうか。これは文科系と理科系で異なる。まず、文科系はやや強気の併願作戦を立てるようにしたい。

従来、併願はピラミッド型だった。第1志望校を頂点に置き、次いで実力相応校、安全校、滑り止め校を決めるかたちだ。しかし、文科系の入試は難関大を含めて易化し、2016年度も難化はない。そこで、逆ピラミッド型の併願作戦が有効になる。

具体的には、まず第1志望校を複数の入試方式や異なる学部学科の併願で複数回受験する。これは同一大学(学部学科)であるため出題傾向がつかみやすくなるメリットもある。そして、実力相応校や安全校、滑り止め校は出願校を減らす。安全校や滑り止め校は1校でも充分だ。

この逆ピラミッド型の併願作戦で第一志望校に果敢にチャレンジすれば合格の可能性が広がる。

理科系は様相が異なり、理科系のなかでも志望する大学の難易度によって選び方は変わってくる。難関大などの場合は、逆ピラミッドまでいかなくても、第一志望は厚めに出願して合格の可能性を高めたい。そして、少しレベル差をつけて安全校などを選べばよい。

むしろ問題は中堅クラスの大学をめざす場合だ。このクラスは2015年度には国公立大志望者が第一志望に切り替えたり併願先として選んだりする動きが出て、2016年度も同様になりそうだ。私立の難関大志望者からの併願先にもなる。当然、もともと第一志望にしている受験生も多い。そのため、かなり激戦になる。

そこで、同ランクで横並びに選ぶのでなく、レベル差をつけて選ぶようにしたい。こうした慎重な併願作戦が「合格」に結びつくはずだ。

2015年度 大学の系統別志願者指数(駿台予備学校)

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