シリーズ36

新しい大学入試

Part.1 入試改革2020レポート(前編)
思考力・判断力・表現力重視の入試に
志望動機の明確化や記述力養成も必要


駿台教育研究所進学情報事業部 部長
石原 賢一 氏
※組織名称、施策、役職名などは取材当時のものです
更新:2017/05/01
2020年度(2021年度入試)から新たな大学入試制度が導入され、来年4月の高校入学者から、新たな制度のもとで大学を受験することになる。入試改革の意義、新たな入試の内容や実施方法、大学現場や高校現場の意見や対応策、新たな入試の行方や課題などについて、検証していく。

時代が求める新たな入試を実現し
大学と社会の接続性を改善

入試改革の背景、大学入学希望者学力評価テスト(仮称)の内容、スケジュールを含む実施方法、課題、高校の対応策などについて、駿台教育研究所進学情報事業部の石原賢一部長に話を伺った。

今回の入試改革は、どのような目的で行われようとしているのか。そこを理解することが、新しい入試をどうとらえ、対応すればいいのか考えることにつながる。そこで、まずこの点を教えていただくことにした。

「入試改革=大学改革」の目的は
社会との接続性を改善すること

「今回の入試改革の根本には大学改革があります。現在の大学は社会、企業との接続性が悪くなっているのです。大学自体の幅が非常に広くなっているし、同じ大学でも学生の学力差が大きい。さらに、仕事の場で必要とされる能力を備えているのかもわかりにくい。

とくに、これからは少子高齢化がさらに進み、生産人口がどんどん減っていくので、一人あたりの生産性を上げないといけない。ところが、日本の一人あたりの生産性は先進国の中では非常に悪いのです。

生産性を上げるには、学生が将来の目的に合ったカリキュラムで学び、仕事に就いたらすぐに活躍できるようにする必要があります。

そのため、企業としては、大学がどういう人を卒業させているかという基準を『ディプロマポリシー』としてはっきりさせてもらいたいのです。それには、何をどのように教えるのかという『カリキュラムポリシー』も明確にする必要がある。そして、そのカリキュラムで学ぶにはどのぐらいの学力やどのような資質が必要かという『アドミッションポリシー』を明確に提示したうえで入学者選抜を行うことが求められます。

そのような入学者選抜を可能にするために入試改革を進め、時代が求める新しい入試を実現しようとしているのです」

大学入学希望者学力評価テストでは
思考力・判断力・表現力を重視

入試改革のなかでも注目度が高いのが、現在の「大学入試センター試験」に替わる「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」(以下「評価テスト」)の導入だ。

並行して検討されている「高等学校基礎学力テスト(仮称)」は、2019年度から2022年度までの試行実施を経て2023年度から実施される。当初は、大学入学者選抜や就職への活用も考えられていたが、少なくとも試行期間は大学入学者選抜などには用いない。このため、当面の入試改革としては、評価テストがどのようなものになるかがより大きな意味を持つことになった。

そこで、この評価テストの重要なポイントについて伺ってみた。

「評価テストの内容面をみると、学力の三要素である『知識・技能』『思考力・判断力・表現力』『主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度』のうち、知識・技能、思考力・判断力・表現力を評価し、とくに思考力・判断力・表現力を重視するようになるのが大きなポイントです。実施スケジュールが2段階になることもポイントの一つです。

評価テストは2020年度(2021年度入試)から始まりますが、2023年度(2024年度入試)までは現行の学習指導要領に基づく出題となり、2024年度(2025年度入試)からは次期学習指導要領に基づく出題となります。

それだけでなく、2024年度からはCBT(コンピュータ利用による出題・解答形式の試験)の導入が想定されるなど試験方法自体も大きく変わる可能性があります。

したがって、2024年度以降が完成形であるとすると、それまでの4年間は完成形に向けて、可能な範囲での改善を行う入試ということになるでしょう」

マークシートでも思考力などを評価
大きく変わる「国語」と「数学」

2020年度から2023年度までの評価テストは、現在のセンター試験と同様にマークシートで解答する形式が続く。

しかし、連動型複数選択問題(「状況」「問題」「解決」など、お互いに連動する複数の選択肢群からそれぞれ選択肢を選び、その組み合わせで解答)、正解が一つに限られない問題、複数の段階にわたる判断を要する問題、選択肢の中から選ばせるのではなく必要な数値や記号などをマークさせる問題といった、思考力・判断力をより重視する出題が考えられているという。

「思考力・判断力・表現力の重視という意味では、評価テストで記述式問題を導入することも予定されています。対象教科は、当面は国語と数学です。

評価テストの国語の記述式問題について昨年11月に文部科学省が国立大学協会に出題方式、採点方法などについて提案を行い、国大協はそれに対する考え方を表明しています。おそらく国大協の案に沿ったかたちに収束するのではないでしょうか」

文科省の提案内容は以下のようなものだ。

国語では二つのパターンの記述式問題を出題する。これは、より深く思考力・判断力・表現力等の能力を問う中~高難易度の問題の「パターン1」と、80字程度の短文記述式により基盤的能力を問う中難易度の問題の「パターン2」で構成される。パターン1の採点は各学生が受験する大学が行い、パターン2は大学入試センターが採点して段階別評価まで行い、各大学が確認・活用する。

これに対する国大協の考え方を要約すると、①パターン2を国立大学の一般入試の全受験生に課す方向で検討する、②パターン1を、個別試験で課すべき記述式試験の選択肢の一つに位置づける方向で検討する、ということになっている。

なお、数学については、国語のように難易度で分けることはなしに大学入試センターが採点して、各大学に結果を提供するという案が出ている。

英語は4技能を評価する方向に
センター出題と外部試験を併用

評価テストでは英語も変化が大きい。4技能(読むこと、書くこと、聞くこと、話すこと)を評価する予定になっているからだ。ただ、これについては本誌編集時点(3月後半)でも不明確な部分が少なからずあり、実施するうえで課題も指摘されている。まず、実施方法についてみると、概ね以下のように想定されている。

当面の実施方針としては、評価テストでもセンター試験と同様に「読む(リーディング)」「聞く(リスニング)」の2技能の試験をマークシート式で実施して、加えて「書く(ライティング)」「話す(スピーキング)」を含む文科省が認定した外部試験を活用する。そして、将来的には、評価テストでは英語の試験を実施せず、4技能とも外部試験を活用する。

仮に、このとおりに実施されるとしても、とくに「話す(スピーキング)」には課題や疑問があると石原センター長は指摘する。

「スピーキングについては、発音やイントネーションを重視すると聞いています。しかし、どのような基準で評価するのか不明確です。たくさんいる採点者の評価を客観的で統一性のあるものにできるのかもわかりません。さらに、もしオーストラリアからの帰国子女がオーストラリア訛りの英語で話すと減点されるのかといった問題も出てくるでしょう。

高等学校側からみると、英語の先生方でも全員がネイティブのように話せるとは限りませんから、指導は簡単ではないと思います。生徒も、どのように練習すればいいのか、また、自分の実力がどの程度なのかがわからない。つまり、対策が難しいテストが実施されることになりかねないのです」

《 次回は Part.2「入試改革2020レポート(後編)」です 》

■文部科学省 高大接続システム改革会議
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魅力ある短期大学づくり

シリーズ6
リメディアル教育の現場

シリーズ5
忙しい先生の業務効率化と
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シリーズ4
専門学校とAO入試

シリーズ3
高校における
「奉仕」活動のあり方

シリーズ2
高校のインターンシップを
考える

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