シリーズ36

新しい大学入試

Part.3 高校現場の動き(1)
特色ある英語教育の実績を踏まえ
4技能伸ばす新カリキュラム検討


武蔵野中学高等学校進路指導部・英語科教諭
泉澤 誠 先生
※組織名称、施策、役職名などは取材当時のものです
更新:2017/07/10
武蔵野中学高等学校は、実践的な内容を含めて英語教育に力を入れているのが特色の1つ。その英語について、新テストに対応するため、新しいカリキュラムづくりの準備を進めているという。新テストをどのようにとらえ、どのように対応しようとしているのか、英語科教諭の泉澤誠先生に話を伺った。

英語3,000時間の中高一貫生も
新テストへの対応が必要に

武蔵野中学高等学校は、在学中の中高一貫生から新テストが始まるということもあって、前年度から新テスト対策の話し合いが始まった。

「本校では前年度の中学2年生、現在の3年生から新テストを受けることになります。そのため、前年度の途中から、どう対応していこうかという話が出てくるようになりました。主要5教科が中心ですが、とくに英語に関してはこの問題に敏感な教員が多かったり、中高一貫生は英語教育にとくに力を入れていることもあって、英語科での話し合いは早い段階から始まりました。

ただ、すぐに本格的な対応策をということではなく、今年度は準備を進めていって、来年度から体系化されたカリキュラムで授業ができるようにしていく予定です」

新テストへの対応では、どのようなことがポイントになってくるとみているのだろうか。

「英語科では、新テスト対策に限らず、基本的には学習指導要領が定めている英語の4技能を統合してコミュニケーション能力を育成することが大切だと考えています。

試験のための英語、受験のための勉強みたいにとらえられることもありますが、我々は受験の英語も実際に使う英語も、同じ英語だと考えています。

4技能を育成することが、受験に対応できる英語力を育てることに重なると思いますので、4技能をバランスよく伸ばすことを心がけています。そのため、授業では生徒同士のペアワークやグループワークなども多く取り入れていますが、これからはそれをより明確化していって、新テストで問われるような思考力・判断力・表現力の育成につなげていきたいと思っています」

泉澤先生の話に出てきたように、同校では中高一貫での英語教育が特色の1つになっている。

「中高一貫生は、通常の英語の授業が週4時間あり、それ以外にLTEという授業が6時間あります。LTEは、ラーニング・スルー・イングリッシュの略です。英語を学ぶのではなく英語を通して世界の文化などを広く学ぶもので、ネイティブの教員が指導にあたっています。

その授業は、たとえば英語の文献を読んで、グループワークを行い、プレゼンテーションをするといった実践的な内容が多くなっています。そういう実践的な英語と通常の授業で知識として学ぶ英語をうまくつなげて英語力が伸長するようにしているのです」

中高一貫生の場合は、英語の授業は6年間で3,000時間にもおよぶ。それでも新テストへの対応策は必要になると泉澤先生は話す。

「新テストでは、思考力・判断力・表現力が問われる一方で、知識も重要であることはこれまでと変わりないと思います。我々は、どちらにも対応できる力を育てることを目標に授業を進めていますが、すべての生徒がその目標どおりの力を身につけているわけではありません。

どちらもできる生徒もたくさんいますが、話せるけれど読むのは苦手だったり、聴き取れるけれど読むのは得意じゃないという生徒もいます。そういった問題を解消して、生徒みんながどちらの力も充分に身につけられるようにしていくことが必要になります」

ニュースや物語なども題材にして
生徒が意見を発信できる授業を

新テストへの本格的な対応策は、いま検討を進めているところだが、それを先取りするように、前年度から英語の授業を英語で行っている。

「これまでも、教員によっては授業の一部を英語で行っていたのですが、教員間で違いがあるので、そこを統一して、授業のある程度の部分を英語で行うことにしました。新テスト対応の一環として、生徒が英語に触れる量を増やしていくことが大切だと考えたからです。それ以外にも、音読を多く取り入れるなどの工夫をしています」

新テストに向けて、泉澤先生ご自身は授業でどのようなことをしていこうとお考えなのか伺ってみた。

「たとえばリーディングなら、教科書だけでなく、生徒の興味に応じて、ニュース記事や海外の物語文などを題材に選びたいと考えています。そして、ただ読んで訳すのではなく、その内容について生徒がどう思うのか問いかけてみたいですね。

英語が得意かどうかにかかわらず、たとえば環境問題について書かれたものだったら、生徒1人ひとりが意見を持っていると思うので、その意見を発信してもらう。そういうことを通じて思考力や表現力などを伸ばしていきたいと思っています」

英語の4技能のうち、記述式が取り入れられるライティングについては、より細かな指導が必要になってくると指摘する。

「もともとライティングの指導は時間がかかるものですが、プロセスをより重視する必要があります。いきなり100%を求めるのではなく、少しずつ書けるようにして、それを積み重ね、長めの文章も書けるようにしていくということですね。

具体的にいえば、序論、本論、結論といった文章の構成の仕方や、それぞれで使うべき表現などについて、ポイントになることを1つずつ教えていって、ある程度の分量が書けるようになったら、さらに内容を推敲できるような段階に進んでいく。そういったステップ・バイ・ステップの指導を徹底していくつもりです」

問題の答えを教えるだけでなく
導き出し方を生徒と一緒に考える

新テストに対応した指導では、生徒の立場に立って考えることも重要だという。

「新テストで必要とされる思考力などを前面に出せば出すほど生徒たちは戸惑うと思います。というのも、生徒たちは学校の勉強というものは唯一の答えがあって、それを覚えることが大事だという固定観念のようなものを持っているからです。

したがって、自分で考えたり、自分の意見を表現したりするということは簡単ではないでしょう。そういうことに慣れさせるには、教員も生徒と一緒に考えるようにするといいのかなと思います。

たとえば、問題を解くときにも、答えを教えるというよりも、答えの導き出し方を生徒と一緒に考えることで、こういうふうに考えればいいんだ、ということがわかるようにしていきたいと考えています」

新テストに向けた英語のカリキュラムなどは年内にも決定する予定だが、その後の運用は柔軟に対応していく考えだ。

「新しいカリキュラムに基づいて指導をしていくと、新たな問題も出てくるかもしれません。かたちを変えたからこそ出てくる問題みたいなものですね。そういうものを1つひとつ解決しながら指導法を確立し、新テストに備えます。

生徒の夢を叶えるのが私たちの仕事ですから、新しいカリキュラムのもとで全力で指導に取り組み、生徒がこれまで以上に英語の力を伸ばせるようにしていきたいですね」

同校では来年度の中学入試から、国語、算数、理科、社会に加えて教科の枠にとらわれないテストを取り入れる予定になっている。これは、自分で考える力を判断するためだ。

英語をはじめとする教科ごとの対応はもちろん、学校全体としての対応も、中学入学時点から動き出そうとしている。

■武蔵野中学高等学校(東京都北区)

▲泉澤 誠 先生

 
 
 
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