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前回は、風力発電の電力出力平準化の研究について教えていただいた。荒井先生はそのほかに、インバータ応用の研究にも力を入れている。最終回となる今回は、風力発電や太陽光発電など新エネルギーとの関係も含めて、この研究の目的について伺ってみた。
直流を交流に変えるインバータを
新エネルギーにも応用
「インバータというのは、電気の直流を交流に変換する装置のことです。一般的にはエアコンなどでインバータという言葉がよく使われいるので、言葉だけはご存知の方も多いのではないでしょうか。
このインバータは、実は新エネルギーとも非常に深い関係があります。新エネルギーを考えるうえでは不可欠の要素といっても過言ではないくらいです」
荒井先生の説明によると、たとえば太陽光パネルで発電されるのは直流の電気。風力発電でこれから必要になってくる電力貯蔵装置のバッテリーも直流の電気。また、家庭用の燃料電池も直流の電気。こうした直流の電気は交流に変換しないと家庭では使えない。つまり、新エネルギーを利用するために、なくてはならない存在なのだ。
「インバータは今後、新エネルギーに関連する技術のなかで主役の1つになっていくでしょう。ただ、現在はほとんどの場合、直流を交流に変換することだけを担っています。私は、このインバータをもっと『賢く』して、新エネルギーの有効利用や制御に応用していきたいと考えているのです」
太陽光発電装置のネットワークで
停電時も電力供給を可能に
インバータの用途は広いが、荒井先生は現在、太陽光発電への応用を中心に研究を進めている。主なテーマは2つ。1つは、災害時の太陽光発電の活用。もう1つは、太陽光発電が増加したときの電圧上昇対策だ。
「災害時の太陽光発電の活用というのは、自然災害などで従来の電力ネットワークが遮断されたとき、つまり停電したときに太陽光発電の電力を使えるようにすることです。
現在の太陽光発電は、それぞれの装置が単独で発電しています。電力ネットワークが遮断されても太陽光発電自体は可能ですが、装置が容量いっぱいまで発電したら、そこで停電してしまいます。それぞれの装置を結びつけて制御するしくみが何もないからです」
荒井先生はこの研究で、一定地域の太陽光発電をネットワークとしてとらえ、太陽光発電装置に付いているインバータに『頭脳』としての役割を持たせることでネットワーク内の電力供給を維持することに着目。複数のインバータが信号をやりとりすることによって太陽光発電の電力供給を維持する方法をシミュレーションで明らかにした。
「2台の太陽光発電装置と電力を消費する負荷を想定してシミュレーションをしました。太陽光発電装置のインバータは、通常は50ヘルツ(Hz)の周波数を発生するように設定し、1台目のインバータの出力が容量の8割を超えたら周波数を0.5Hz下げ、9割を超えたらさらに0.5Hz下げる制御機能を持たせました。
2台目のインバータは、周波数の変化から1台目の出力が限界に近づいていることを感知して自身の出力を増やし、1台目の負担を減らします。こうしたインバータの制御によって、2台の太陽光発電装置を継続的に運転することが可能になるのです。3台でシミュレーションしても同様の結果を得ることができました」
この研究成果は昨年8月、アメリカの電気学会で発表している。荒井先生は今後、もっとたくさんの太陽光発電装置がつながった場合に、どのような制御が可能か探っていく考えだ。
インバータに機能を追加して
地域の電圧上昇を防ぐ
太陽光発電装置が増加した場合の電圧上昇の研究はテーマ設定をした段階で、これからシミュレーションに着手するところだという。そこで、この研究の考え方を教えていただくことにした。
「太陽光発電装置が各家庭などに普及した場合、ある地域全体で見ると相当の発電量になります。そうすると、その地域全体の電圧が上昇する可能性があるのです。
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 荒井 純一(あらい じゅんいち)
1948年、東京都生まれ。1972年、早稲田大学理工学研究科電気工学専攻修士課程修了。同年、東芝重電技術研究所入社。1991年、同システム技術主幹。1996年、同システム技術部長。1998年、東芝電力・産業システム技術開発センター技監。2006年から現職。博士(工学)。
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