ドリコムアイ.net…高校生の進路と教育を考えるWebマガジン
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第6回 Part.1

2007-06-04UP

化石を通じて未来の環境変動を予測(1)


早稲田大学 教育学部地球科学教室
平野弘道研究室

第9回 〜 第5回

第9回
「超能力」を題材に心の不思議に迫る
《明治大学 情報コミュニケーション学部 石川幹人研究室》
Part.1

Part.2
Part.3
Part.4


第8回
食品のおいしさや健康効果を探る
《実践女子大学 生活科学部 田島眞研究室》
Part.1

Part.2
Part.3
Part.4


第7回
多様な惑星系の統一的な形成理論を追究
《東京工業大学大学院 理工学研究科 井田 茂研究室》
Part.1

Part.2
Part.3
Part.4


第6回
化石を通じて未来の環境変動を予測
《早稲田大学 教育学部地球科学教室 平野弘道研究室》
Part.1
Part.2
Part.3
Part.4


第5回
対象地域に継続的にかかわりながら人を中心に据えたまちづくりを研究
《埼玉大学 教養学部 梶島邦江研究室》
Part.1
Part.2
Part.3
Part.4


『新・研究室はオモシロイ』(全16回)
雑誌「ドリコムアイ」に掲載された記事をPDFファイルでご覧いただけます。

生物の将来を左右する
地球温暖化が進行中


 地球温暖化に伴う環境変化は、人類を含む生物にとってきわめて重大な問題だ。そのため、政治や経済の立場からは、人為的な要因としての二酸化炭素排出量の削減について世界レベルで議論が重ねられている。学問の世界でも、地球科学分野を中心に温暖化を含む地球環境の研究が活発化していて、古生物学の立場から地球環境にアプローチするケースも出てきている。

 古生物学は、化石の研究というイメージがあるが、どのような視点、どのような方法で地球環境に迫ろうとしているのだろうか。今回は、早稲田大学教育学部(および大学院創造理工学研究科)の平野弘道先生の研究室を訪ね、古生物学による地球環境の研究について教えていただくことにした。


▲平野弘道 教授

古生物学は過去を探るだけでなく
未来を予測する科学


 平野先生は、なぜ古生物学の立場から地球環境を考えていこうとしているのだろうか。まず、そこから話をうかがってみた。

「現在、大気中の二酸化炭素分圧、つまり二酸化炭素の含有量は360ppmです。これが、どんどん増えていくと予測されています。見積もりは幾通りもありますが、このまま推移すれば遠からず900ppmに達し、1000ppmを超えるだろうとみられています。

 地球の歴史を遡ってみると、5500万年ほど前に二酸化炭素分圧が900ppmにまで到達し、地球全体で中規模の生物絶滅が起こっています。1億年ほど前には1000ppmを超えて、やはり中規模の絶滅が起こっています。大量絶滅ではありませんが、こうした中規模の絶滅現象は繰り返し起こっているのです。

 では、二酸化炭素分圧が増えていって、どのくらいの値に達したら、まず環境の要素のうち何がどのように変化するのか。その波及効果で次に何が起こり、さらにその次には何が起こるのか。

『風が吹けば桶屋が儲かる』という話のようですが(笑)、環境というのはおよそ関係ないと思うようなところまで影響がおよぶものです。私たちは、その過程を十分に理解しているわけではありません。そこで、実際に起こった地球環境変動と生物絶滅を調べることができる古生物学の立場から研究を進めたいと考えたのです。

 古生物学というと、化石記録を用いて、過去の生物について研究する学問というイメージがあるかもしれません。しかし、そういうことだけでなく、地球環境が変動しているときに、将来はどうなるかという予測を私たちに与えてくれる科学にしなければならないと思っています。以前、日本古生物学会の会長を務めていたのですが、その退任講演のときにも、古生物学を予測の科学にしようという趣旨の話をしました」

アンモナイトの進化の研究から
環境変動の研究にシフト


 平野先生が研究対象としている時代は、中生代(約2億5000万年前〜約6500万年前で、三畳紀、ジュラ紀、白亜紀がある)の白亜紀だ。

「5500万年前のほうがより新しいので、その時代の試料が十分にあればいいのですが、たまたま、その時代の地層が少なくて試料が乏しいのです。それに比べると、1億年前の白亜紀の地層は、日本でも世界でも非常に広範囲に分布していて試料が多い。それで、白亜紀を対象にしているのです」

 また、白亜紀は、もともと平野先生がアンモナイトの研究をしていた時代だったということもある。

「私は、白亜紀のアンモナイトについて長く研究していました。アンモナイトの多くは、殻が平面状に規則的に巻いています。発生の初期から少しずつ巻いていくので、一生涯が殻として保存されている。したがって、生まれたときから死ぬまでの変化を観察するのに好都合なのです。

 大きさは1メートルクラスのものもありますが、10数センチのものならたくさん採集できました。とくに北海道は保存状態が非常によかったので、産出頻度の高いものを定量的に研究して、集団遺伝学と矛盾のないかたちで生物進化を説明したいと考えていたのです。そして、もし集団遺伝学の研究者がご存じないような進化のパターンがあれば、こちらから提示することも考えていました」

 平野先生は、アンモナイトに関するいくつかの研究をまとめたが、アマチュアの収集家が増えたために採集が難しくなり、研究に支障をきたすようになった。また、地球環境問題がクローズアップされるようになったこともあって「環境」という観点からの研究にシフトしたのだという。ただ、研究室全体としては、所属する学部生や大学院生が希望すれば、アンモナイトの進化を研究することもできるようになっている。


■早稲田大学
http://www.waseda.jp/top/index-j.html