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月が巨大衝突でできたことを
世界で初めて理論的に証明
井田先生は、月にも着目し、月がどのようにして形成されたのかをシミュレーションで明らかにしている。
月はもっとも身近な天体だが、その起源がわかってきたのは最近のことだそうだ。月の起源については、古典的な説が3つあった。それは、(1)原始地球が形成されるときに高速回転して、遠心力で外層部がはがれて月ができたとする「分裂説(親子説)」、(2)地球の連星として微惑星から集積したという「共成長説(姉妹説)」、(3)近くで微惑星から集積した月が地球のそばを通過するとき捕まったとする「捕獲説(他人説)」、の3つだ。
しかし、いずれの説も1970年代後半までに否定され、その後「巨大衝突説」が登場した。これは、原始地球に火星ぐらいの大きさの原始惑星が衝突し、その原始惑星が破壊されて撒き散らされた破片から月が集積された、というものだ。ただ、井田先生は、巨大衝突説には懐疑的だった。
「巨大衝突によって破片が散らばるにしても、木星や土星のように小型の衛星が複数できるのではないか、都合よく1つにまとまって月のような大型の衛星ができるのだろうか、と思いました。それで、巨大衝突説を否定的に検証するつもりでシミュレーションに取り組んだのです」
ところが、思わぬ結果が待ち受けていた。シミュレーションの結果、実に簡単に月ができてしまうことがわかったのだ。
原始地球に衝突した別の原始惑星は、破片となって地球の周囲に円盤を形成する。しかし、地球中心から地球半径の約3倍以内の「Roche(ロッシェ)限界」と呼ばれる領域では、地球の潮汐力(物体の近い側と遠い側に働く重力の差によって物体を引き伸ばす力のこと。潮の満ち引きは月の潮汐力によって起きる)が破片同士の重力より大きいため破片同士はくっつくことができず、天体は集積されない。
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井田 茂(いだ しげる)
1960年生まれ。京都大学理学部卒業。東京大学大学院地球物理学専攻修了。理学博士。1993年から東京工業大学理学部地球惑星科学科助教授。2006年から現職。この間、1995年から1997年までカリフォルニア大学サンタクルーズ校、コロラド大学ボルダー校で客員研究員。主な著書に『惑星学が解いた宇宙の謎』(洋泉社)『異形の惑星』(日本放送出版協会)『一億個の地球』(共著/岩波科学ライブラリー)『系外惑星』(東京大学出版会)などがある。
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