高温域が海に浮かぶ島のように現れる
『ヒートアイランド現象』
都市気候のなかでも注目を集めているものの1つが『ヒートアイランド現象』だ。ただ、一般にヒートアイランド現象は、夏の暑さとの関連で取り上げられることが多いが、高橋先生によると、夏の暑さだけを示すものではないという。
「『ヒートアイランド現象』という言葉は、都市で夏の気温が高くなることに対して使われるケースが多くなっています。しかし、本来は単に夏の気温の高さだけを表す言葉ではありません。
都市および都市周辺について気温の分布を描いてみると、都市を中心として気温の等温線が同心円状になり、高温域が海の上に浮いている島のように見えることから『ヒートアイランド』という言葉が生まれたのです。つまり、ヒートアイランド現象というのは郊外に比べて都市の気温が高くなっている状態のことなのです」
また、高橋先生によると、ヒートアイランド現象は夏よりも冬に現れやすいのだという。
「ヒートアイランド現象が、いちばん顕著に現れるのは冬の早朝です。東京都心が最も気温が高く、郊外にいくほど気温が低くなり、典型的なヒートアイランドの気温分布になります。夏の場合、日中は東京都心よりもむしろ埼玉県中北部など内陸のほうが気温が高くなり、その辺りに高温の中心が現れます。そして、夜になると東京都心が高温の中心になり、冬の早朝のようなヒートアイランドの気温分布になります」
ヒートアイランド現象の原因は
人間の活動から出る熱や建築物
では、こうした都市のヒートアイランド現象はなぜ起こるのだろうか。
「ヒートアイランド現象の原因は、大きく分けると3つあります。
1つめは、人間がいろいろな活動をして出す熱です。夏の冷房や冬の暖房にともなう熱、車が出す熱などさまざまなものがあります。
2つめの原因として、都市部では地表面がコンクリートやアスファルトなどに覆われていることがあります。そのため、地表面からの水分の蒸発が非常に少ない。畑や水田などがあるところでは、水分の蒸発によって地表面から熱が奪われる。いわゆる気化熱ですね。これによって温度の上昇が抑えられるのですが、都市ではそれがないので、温度が上昇しやすくなります。
3つめは、建築物の影響です。高い建物が密集して建っていると、それらの建物が太陽の日射を吸収して、湯たんぽみたいな状態になります。とくにコンクリートは日射を吸収すると非常に温度が高くなるので、日中はその熱を空気に伝える。建物の温度が高い状態は夜になっても続き、ずっと空気を暖めるのです。
また、建物がないところでは、夜になると地面の熱はどんどん逃げていきます。放射冷却ですね。しかし、建物があると熱が壁面などに吸収されて、そこを暖め、その熱が再び地面に戻ってくる。その結果、空に逃げていく熱が少なくなって保温状態になります。その保温状態が、冬の早朝や夏の夜間に顕著になるので、そういうときに典型的なヒートアイランドの気温分布になりやすいのです」
《つづく》
(次回は都市気候を観測する具体的な調査についてです)