「過去30年ぐらいを振り返ってみると、輸出産業は多少の変動はあっても、基本的に規模が拡大してきています。一方で、国内産業の規模はこの20年間、ほとんど横バイで停滞した状態が続いています。(図1参照)
日本経済全体として見ると、輸出産業の拡大が国内産業の停滞を覆い隠すようなかたちになっていて、本当の実力が見えにくくなっているのです。
日本経済を人間にたとえると、高度成長期が20代から30代だったとすると、現在は50代から60代ぐらいになりつつある。そういう経済ですから若い頃と同じように成長できるわけではない。それなのに若い頃の夢をそのまま追いかけているようなところがある。
だから、今回のような経済危機が起きると、国がお金を注ぎ込んで需要を刺激しようとします。それは、疲れた人間をカンフル注射やドリンク剤で元気にしようとするのに似ています。もちろん、倒れてしまったら大変なので、そうした対策が必要な場合もあります。しかし、日本経済の体質そのものを改善して実力を向上させるような努力をしたほうがいいのではないかと私は考えています」
では、日本経済の体質を改善するには、どのような方法があるのだろうか?
「1つには、サービス産業をもっと効率化していくことが考えられます。サービス産業にはいろいろなものがあります。医療や介護もサービス産業だし、金融もそうです。
中でも医療や介護は、高齢化が進んでいることもあって需要が増えています。ところが、医療や介護の現場は人手不足で充分なサービスの提供ができない。一方で失業者が増えているのに、なぜ人手不足なのか。それは、仕事はきついのに待遇が悪いからです。では、なぜ待遇が悪いのかというと、医療や介護の制度そのものに問題があるからです。
ですから、国の政策レベルの課題として、医療や介護の分野に人材が集まり、国民の誰もが充分な医療や介護のサービスを受けられるようなしくみづくりをしていくことが必要だと思います」
《つづく》
(次回は「日本の金融システムのタイプと課題」です。)