第8回 Part.4

食品のおいしさや健康効果を探る(4)


実践女子大学 生活科学部
田島 眞 研究室
※部署名、役職名、研究内容などは取材当時のものです
更新::2008/01/21

人々の食への関心は高まる一方だが、最近は、よりおいしく食べることや、食を通じての健康づくりなどが注目を浴びている。今回は食品学の立場からこれらのテーマにアプローチしている、実践女子大学生活科学部の田島眞教授(学部長)の研究を紹介している。

肉に含まれるカルニチンで体脂肪は減るか?

もう1つの柱である肉の健康効果について、どのような研究を進めているのかうかがってみたが、この研究では「カルニチン」という成分を調べているという。

「肉に含まれているカルニチンには、脂肪燃焼効果があるといわれています。そこで、実際に肉を食べることによって脂肪燃焼効果が出て体脂肪が減るのか明らかにしたいと考えているのです。

最初は、カルニチンがどんな肉に多く含まれているか調べました。結果として、いちばん多いのは馬肉だということがわかりました。簡単にいうと、色の赤い肉ほどカルニチンが多いのです。

今年は、対象を牛肉に絞り、種類ごとにカルニチンの量を比較する研究を進めています。いまは、BSE(牛海綿状脳症)問題があるため、市販されている牛肉の産地、品種、飼育年数などがわかるようになっています。それを利用して14種類の肉を選び、含まれているカルニチンの量の違いを調べているのです」

来年は、牛肉を食べることによって体脂肪が減るかどうかの実験を予定している。いま調査している14種類の肉のうち最もカルニチンが多いものを選び、ゼミの学生が食べて、体脂肪の変化を測定する。果たしてどんな結果が出るのか、この研究の行方も注目される。

日本独自の宇宙食開発では
プロジェクトリーダーに

学内の研究とは別に、田島先生は日本の宇宙食開発で指導的な役割を担ってきた。5年前、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が宇宙食を開発するプロジェクトを立ち上げたとき、田島先生はプロジェクトのリーダーとして指揮を執ることを依頼されたのだ。

NASA(アメリカ航空宇宙局)を視察し、日本人宇宙飛行士とも懇談するなど情報収集したのち、宇宙食をつくる食品メーカーに開発コンセプトを提示した。そのコンセプトは明快で、健康機能を生かした宇宙食をつくる、というものだった。

「アメリカやロシアの後追いをするのではなく、日本の宇宙食は健康機能を強化したものにしたいと考えたのです。宇宙では、人間はさまざまな生理的障害を受けます。たとえば、無重力なので骨や筋肉が衰える。それなら、骨にカルシウムが沈着するのを促進する成分や筋肉を増強する成分を含んだ食品を食べればいい。そういう考えを食品メーカーさんに伝えて、宇宙食の開発を進めていただいたのです」

そして今年6月、JAXAで定めた基準をクリアした29品目の宇宙食が正式に日本の宇宙食として採用された。内容も多彩で、白飯、赤飯、お吸い物、たまごスープ、ラーメン、カレー、サバの味噌煮、粉末緑茶、アミノ酸ゼリー、野菜飲料ゼリー、羊羹などがそろっている。なお、JAXAは最終的には100品目をめざしているそうだ。

食品成分を簡単に測定できる
センサーの開発をめざす

冒頭から触れてきたように、田島先生の研究室では、米、野菜、肉に関する研究を継続的に進めているが、さらに新たな研究の構想もあるという。

「最近の消費者は、食品の健康機能に注目して、食品を非常に厳しく選択するようになっています。そういうニーズに応える意味で、見た目で食品の成分を簡単に調べることができるセンサーのような装置をつくれないだろうか、と考えているのです。

たとえば、ミカンの場合、近赤外線(赤外線のなかでも波長が短いもの)をあてて、なかの糖度を測る装置があり、このミカンは糖度10%を保証します、という表示を行ったりしています。それと似たようなかたちで、このホウレンソウはポリフェノール100ミリグラム以上を保証します、と表示できるようになれば、消費者も食品を選びやすくなるでしょう。

そのためには、まず見た目と中身の成分の相関関係から調べていく必要があるので、来年から研究を始めたいと思っています」

意欲的に食品のおいしさや健康効果の研究を進める田島先生の研究室。その研究成果は、私たちの食生活をより健康的で、より豊かなものにすることにつながっていく。

■実践女子大学

田島 眞
(たじま まこと)
1944年生まれ。東京大学大学院修了。農学博士。農林水産省食品総合研究所、中国農業試験場の研究職を歴任。1991年から実践女子大学。著書多数。新聞、雑誌、テレビなどに登場する機会も多い。

 

Lineup

第15回
工学院大学
工学部電気システム工学科

第14回
日本女子大学
家政学部被服学科

第13回
慶應義塾大学 経済学部

第12回
成蹊大学
理工学部情報科学科

第11回
早稲田大学
スポーツ科学学術院

第10回
首都大学東京大学院
都市環境科学研究科

第9回
明治大学
情報コミュニケーション学部

第8回
実践女子大学 生活科学部

第7回
東京工業大学大学院
理工学研究科

第6回
早稲田大学
教育学部地球科学教室

第5回
埼玉大学 教養学部

第4回
東京農工大学大学院
工学教育府応用化学専攻

第3回
青山学院大学
文学部日本文学科

第2回
東京理科大学
薬学部生命創薬科学科

第1回
東京大学大学院
情報理工学系研究科