研究室はオモシロイ

大学、専門学校や企業などの研究室を訪問し、研究テーマや実験の様子をレポート

第19回 Part.1

第19回 
ICTを教育や国際交流に活用する ~修学旅行をより楽しく~(1)

Part.1
情報を軸に
海外との交流を推進

中央大学
経済学部 佐藤 文博教授
※組織名称、施策、役職名などは原稿作成時のものです
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ICT(情報通信技術)は、私たちの生活や社会に不可欠なものとなり、その進化のスピードも驚くほど速い。次々と新しいハードやシステムが登場し、わずか2~3年前のものが「ひと昔前」のものに感じられることも珍しくない。それと同時に、ICTをどう使いこなすのか、さまざまなジャンルにどのように応用していくのかも問われている。学問の世界でも、ICTそのものの研究だけでなく、ICTを教育や国際交流をはじめさまざまなジャンルに活用する研究が進められ、注目を集めている。そこで今回は、中央大学経済学部・佐藤文博先生の研究室を訪ね、海外との遠隔授業や、修学旅行のために開発したスマートフォン用アプリケーションなど、ICTを活用する研究について話を伺ってみた。(Part.1/全4回)

学科の特色も反映した
国際交流のあり方を検討

▲佐藤 文博教授

佐藤先生は、ICTを教育に活用していく方法を研究しているが、その内容は経済学部公共経済学科が1993年に発足した当時の特色と重なる部分があるということなので、まず公共経済学科(現在は、公共・環境経済学科に改組)の特色と研究との関係から教えていただくことにしよう。

「公共経済学科の特色として、英語教育、コンピュータ教育、インターンシップの導入がありました。このうち、インターンシップについては、地方自治体や情報関連の企業などが主な対象になっているのですが、私は情報関連の企業、たとえばソフトウエアハウスなどに知り合いが多いので、そういう企業で学生にインターシップを経験させるようにしています。

教育は社会とのつながりが大切です。学校のなかだけでなく、社会とつながり、連携を図ることでよりよい教育ができるのではないでしょうか」

英語教育とコンピュータ教育については、佐藤先生自身も以前からその重要性を感じていて、情報を軸に海外との交流を推進することを考えていた。

「社会とのつながりの延長上には国際交流もあります。国際交流の方法はいろいろあると思いますが、私は中央大学の多摩キャンパスにいながら海外の大学の授業を受けるようなかたちの交流ができないだろうかと思い、その内容やしくみを検討していたのです。

本学では1997年から、シンガポール、フィリピン、ベトナムの大学との遠隔授業や会議などを試行していました。その実績を踏まえて、2006年度から本格的な遠隔授業の実施に向けた準備を重ね、2010年度からシンガポールの国立シンガポールポリテクニック校のIT&E commerceコースを受講できるようにしました」

シンガポールの学校と連携し
ICTを活用した遠隔授業を実現

▲IT & E-Commerceの授業風景(シンガポールポリテクニックのJustin先生)

シンガポールポリテクニックは、シンガポールでは伝統ある教育機関で、先進的なICTを教育に活用している。中央大学経済学部とは交流協定があり、経済学部および同学ITセンターと1997年以来、ビデオ会議を実施してきていた。そのシンガポールポリテクニックの「IT&E-Commerceコース」を、経済学部の学生のうち希望者が受講できるようにした。

「このコースの授業は半期、15週間にわたって実施しています。学ぶ内容は、電子商取引の発展の経緯、最新動向、技術的なしくみ、今後の課題などです。受講はWBT(ウエブ・ベースド・トレーニング)が基本で、学生は先方のサーバーから学習コンテンツをダウンロードして、テキストや動画などを見ながら学び、随時、小テストに解答したり課題を作成して提出したりします。そして、半期のうち3~4回、リアルタイムで先方の講師の講義を受けるようになっています」

▲IT & E-Commerceの授業風景(中央大学経済学部教室)

リアルタイムの講義は、1年目と2年目はテレビ会議システムを利用して実施。2012年はインターネット電話サービスのスカイプを利用して実施した。受講する学生たちは、あたかもシンガポールの学校にいるような感じで講義を受けることができ、質問をすることもできる。

「シンガポールは国を挙げてICTの活用を進めていて、新しいことをどんどん取り入れています。英語を基本言語として使っていることもあって、最新技術の吸収も早い。ですから、eコマースの先進事例を学ぶのに適しているのです」

学生たちは、英語で、ICTを活用しながらeコマースを学ぶわけで、これは英語教育とコンピュータ教育という経済学部の特色を反映したものでもある。

また、経済学部としても佐藤先生自身も、より直接的な国際交流も重視している。

「経済学部は、国際的な環境のなかで学ぶ機会を増やすことに力を入れていて、留学、ゼミの海外実態調査、海外インターンシップなどを推進しています。私のゼミでも毎年、ゼミ生が海外にいく機会を設けていて、2011年はベトナム、フィリピン、シンガポール、2012年は韓国、シンガポールにいきました」

《つづく》

●次回は、『ICTで社会とつながる修学旅行』です

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