第21回 Part.3

より美しく動きやすい衣服を開発(3)


文化服装学院 文化・服装形態機能研究所 所長
伊藤 由美子 教授
※部署名、役職名、研究内容などは取材当時のものです
更新::2014/02/03
第3回
子ども服からゴルフウエアまで
ジャストフィットする衣服づくりの研究

美しく着心地のいい衣服づくりを科学的な根拠に基づいて追求している文化服装学院、文化・服装形態機能研究所の伊藤由美子教授を訪ねた。引き続き伊藤先生に話を聞いてみよう。

ゴルフウエアの開発など
企業との共同研究にも活用

この測定方法・測定システムは、特許を取得しただけでなく、すでに授業にも活用し、さらに企業との共同研究も何件か進めている。共同研究の1つはスポーツウエアメーカーの依頼によって、より動きやすいゴルフウエアを開発する試みだった。

「ゴルフのスイングの、アドレス、スイングトップ、フィニッシュそれぞれについて、上半身全体の動きを計測することにしたのですが、これは3次元形状計測機では計測できないので、石膏による計測方法を採用しました。

石膏では半身ずつ型をとるので、1つの動きで左右2体ずつ、3つの動きで合計6体の型をとりました。その立体を平面の紙に展開して、パターンに必要な運動量をすべて計算したのです」

そのデータを基に、メーカーのデザイナーやパタンナーがゴルフウエアの試作品を製作。そして、試着実験をして部分的に修正したり、いちばん動きの大きいところに伸縮性の強い素材を使うなど何回か改良を重ねて新しいゴルフウエアが完成した。その展示会では、ゴルフウエアそのものだけでなく、研究室による計測データも公開した。

「いまは、たんに新しい製品ができましたというだけでは売れない時代なのです。その製品がどのような科学的な根拠に基づいて開発されたものか示すことで、いい製品であるという説得力が生まれるのです」

さらに、上半身だけでなく下肢の動きを計測して、動きやすいユニフォームやスポーツウエアを開発する共同研究も行うなど、この計測方法・計測システムは活用の幅が広がっている。

「着用するもの、着用目的によっていろいろな動きが必要になります。私たちは企業の方から依頼があれば、どのような動きをとらえたらいいか検討したうえで実際にモデルさんを計測し、そのデータを基に企業の方がパターンをつくるというかたちで、どんどん応用の幅を広げ、発展させているところです。

研究は、こういう結果が出ましたが何かに使えませんか、といったかたちのものも多いと思いますが、私たちの場合は服づくりのためにこういうデータが必要になるという目的が最初にあって、そのデータをとる方法を研究しています。ですから、研究の結果は必ず実用に結びつくのです」

赤ちゃんから20歳になるまで
連続した身体計測に取り組む

伊藤先生は、特許を取得した研究以外にも、あらゆる年代を対象に衣服に関する研究を行っている。その1つに子どもの体型の研究がある。

「昔は、子どもは年々成長するので、少し大きめの服を買っておくということも多かったと思います。でも、いまは買うときにジャストフィットするかわいい服を着せたいと考える親御さんが多いのです。

そういう服をつくるには、やはり身体の計測データが欠かせません。子どもは小さければ小さいほど大人とは身体の形が違うので、なおさら計測データに基づく服づくりが大切になります。ところが、小さい子を静止させて計測するのは難しいこともあって、あまりデータがなかったのです。

そこで、子供服メーカーと共同で5年かけて子どもの身体を計測し、そのデータに基づいてダミー(全身のプラスチック型)とボディ(針を刺せるように表面が布でできた型)を開発しました。

その後、研究所独自で10人の子どもを生まれたときから20歳まで計測し続ける研究を10年前に開始し、現在も継続して取り組んでいます」

《つづく》

●第4回は最終回『より高度なユニバーサルファッションの研究』についてです。

■文化服装学院

■学校法人 文化学園

▲伊藤 由美子教授

Lineup

第15回
工学院大学
工学部電気システム工学科

第14回
日本女子大学
家政学部被服学科

第13回
慶應義塾大学 経済学部

第12回
成蹊大学
理工学部情報科学科

第11回
早稲田大学
スポーツ科学学術院

第10回
首都大学東京大学院
都市環境科学研究科

第9回
明治大学
情報コミュニケーション学部

第8回
実践女子大学 生活科学部

第7回
東京工業大学大学院
理工学研究科

第6回
早稲田大学
教育学部地球科学教室

第5回
埼玉大学 教養学部

第4回
東京農工大学大学院
工学教育府応用化学専攻

第3回
青山学院大学
文学部日本文学科

第2回
東京理科大学
薬学部生命創薬科学科

第1回
東京大学大学院
情報理工学系研究科