第21回 vol.1

醸造発酵コース〔3年制〕
(前編)


東京バイオテクノロジー専門学校
(東京都大田区)
※学科・コース名称、カリキュラム、役職名などは取材当時のものです
更新:2011/09/12
全国から入学者を集める東京の専門学校にスポットをあて、教職員インタビューを通してそのカキュラムに迫ります。

日本酒造りの職人といえば杜氏。その製造工程のすべてを管理、監督する専門技術者です。かつては蔵元から独立した存在でしたが、酒造メーカーの雇用形態の変化に合わせて、いまでは会社員として勤務する杜氏も少なくないといいます。とはいえ、高い知識と長年の経験が必要な職であることに変わりはありません。

日本酒のほか、焼酎やワイン、ウイスキーなどさまざまなお酒が流通する現代、酒造り職人を目指すには、どこで何を学べばいいのでしょうか。東京バイオテクノロジー専門学校(東京・大田区)に酒造りを体験的に学ぶコースがあると聞いて訪ねました。取材に応じてくれた増子敬公先生は、各地のワイナリーでワイン造りを指導する、いわばワインの杜氏のような先生でした。

——酒類製造免許を持つ全国でも数少ない専門学校だそうですね。

日本でお酒を製造できるのは、原則として酒税法に定める酒類免許の取得者に限られます。免許の認可を受けるには、設備や技術者などを規定した技術的要件のほか、日本酒やビールなら60キロリットル以上、ワインやウイスキーの場合は6キロリットル以上などと、1年間の最低限の製造量が定められています。

年60キロリットル……営利目的の事業所でもない限り無理ですよね。その例外規定として設けられているのが、営利を目的とせず、飲料としないことなどを条件に「教育のために試験製造を行う」学校などに付与される「試験製造免許」です。農業系の高校や大学には取得している例も見られますが、専門学校では、東京バイオテクノロジー専門学校と姉妹校の北海道バイオテクノロジー専門学校のほか、数校に限られるのはないでしょうか。

また、試験製造といえども免許は酒類の品目ごとに分かれていて、東京バイオテクノロジー専門学校ではワイン、ビール、日本酒、焼酎、リキュールの5つの酒類を有しています。

——学生は在学中に5種類のお酒を造るのですか。

実習は2年に進級と同時にスタートし、1年間をかけて5品目を製造します。お酒は品目ごとに原料が違うばかりでなく、製造に適した時期も工程も異なりますからね。

その過程では、温度の変化や発酵の過程をつぶさに観察、分析するなど、手をかけ続けなければなりません。酒の発酵を促す酵母菌は生き物ですから、放っておくと目的の酒質にならない、品質などに影響します。

実習期間中は休日返上で登校してくる学生も少なくありません。

——出来上がったお酒はどうするのですか。

廃棄します。もったいないけれど、教育を目的に、飲用にしないことを条件にした製造許可ですから仕方ありません。

とはいっても、お酒の品質は味で決まるわけですから、造ったお酒の出来がどうだったか、テイスティングはしますよ。ただし、傍らにははき出す器を用意しておいて、口に含んで味や香りを確認するだけ。飲み込むことはありません。

——お酒づくりに携わる人に必要な資格はあるのでしょうか。

個人に必要な資格はありません。ただ、特にワインについてはその醸造管理の技術を資格認定しようという動きもあって、葡萄酒技術研究会が国際基準に則ったエノログ認定制度の運用をはじめました。

エノログとは、ワイン醸造技術管理士と訳される資格で、ヨーロッパをはじめ、世界中でとても権威のある資格です。

ワインについて学ぶことができる東京バイオテクノロジー専門学校・醸造発酵コースなどで学び、ワイナリーの技術者がめざす資格として、いずれ広く認知されるようになるではないでしょうか。

——実習のほかにどのような授業を受講することになるのですか。

私が担当するのは「ワイン学」や「醸造学」といった授業です。ワイン学は主に歴史、葡萄栽培、醸造、マーケティングにまつわる内容。醸造学は原材料がお酒になる過程を科学的に理解する授業。将来、ワイン醸造の技術者となってからも役立つような、かなり専門的な知識にも踏み込んだ手作り資料を配付して進行します。

また、ボトルに貼り付けるラベルのデザインを体験する、そんな機会も与えています。

——入学者は、どうして酒類の製造に興味を抱くようになったのでしょうか。

どうしてでしょう…。入学者の半数は社会人経験者や大学・短大卒業、あるいは中退者です。ソムリエになろうとしてワインの製造方法を学ぼうと入学してきた学生もいます。

けれど、特に高校からストレートに入学してきた約5割の学生は、それまでにお酒に親しむ機会はあまりなかったでしょうからね。

年間を通して開催する体験入学に参加して、興味を抱いた学生も少なくないのではないでしょうか。コース体験授業では、ノンアルコールビールの製造や、発酵食品づくりが体験できます。

最近ではマンガの影響もあるかもしれません。『もやしもん』をご存じですか? マンガ週刊誌に連載され、後にテレビアニメ化に加えて実写版もつくられ学園ドラマです。微生物である菌が話したり騒動を引き起こしたり……酵母菌による化学変化に興味を抱くきっかけになっているのかもしれません。

また、入学後の授業を通して「醸造」や「発酵」に興味抱くようになった学生もいるでしょうね。

《つづく》

■東京バイオテクノロジー専門学校

▲増子 敬公先生

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