第76回
高校教育最前線ルポ(東京都文京区)

村田女子高等学校
「2科5コースで生徒の個性と可能性を伸ばす
〈資格に強い〉女子高
高大連携でキャリア適性ワークショップも実施」


インタビュー
学校法人 村田学園 村田女子高等学校 進路指導主任 
浜中 清美 先生
※部署名、役職名、施策などは取材当時のものです
更新:2017/05/15
村田女子高等学校は、都営三田線千石駅から徒歩2分、JR山手線巣鴨駅・駒込駅から徒歩10分程の都心の閑静な文教・住宅地域にある。徒歩数分の近隣には、柳沢吉保の大名庭園で名園として名高い「六義園」も。本校の歴史は古く、日本商業実務教育の草分けである村田簿記学校内に設置された村田女子計理学校から数えて86年を刻む。比較的小規模な高校ながらクラブ活動が盛んで、サッカー部、野球部、珠算・電卓部、演劇部など全国大会出場クラブも多い。サッカー部はインターハイ優勝経験もあり、日本女子代表の山下杏也加さんを始め日本のトッププレーヤーを多数輩出している。また英語や簿記などの資格取得が盛んで、同校の特色の一つとなっている。進路指導主任であり、英語科教諭でもある浜中清美先生に、普通科と商業科が併設された女子高での、難関大学進学から就職までをカバーするキャリアデザイン、英語教育などについて伺った。

村田簿記学校をルーツに商業系女子高として発展
普通科・商業科の全5コースでさまざまな進路に対応

本校の歴史は、村田簿記学校内に1931年(昭和6年)設置された村田女子計理学校に始まります。その後1943年(昭和18年)村田女子商業学校、1951年(昭和26年)村田女子商業高等学校を経て、1996年(平成6年)に現校名となり、2001年(平成13年)に普通科が設置されました。

本校のクラス編成は普通科アドバンスト(特進)1、普通科スタンダード2、商業科アドバンスト1、商業科スタンダード1の5クラスで、1学年が約120名。2年への進級時に再びクラス編成が行われます。

普通科アドバンストコースは『特進』という位置づけで、一般入試での大学進学を目指します。普通科スタンダードコースは推薦・AO入試などでの大学進学を目指し、2年次から文系・理系のほか経済系に分かれます。1年次からでも選択で簿記が学べるのが特徴です。

商業科にもアドバンストとスタンダードの2コースがあります。商業科アドバンストコースは、大学でも上位校への進学を目指す生徒が大多数ですが、企業に就職する生徒もいます。商業科スタンダードコースは資格・特技を生かして進学・就職を目指します。

特進α・βコースでは、1・2年生の夏と冬に「勉強合宿」を行います。ただ課題をこなすのではなく、自ら学ぶ力をつける場という意識を持って取り組ませています。この合宿では英語、国語、数学で出された課題に対して満点を取るまで寝られない『夜のトライアル』を実施しています。生徒によっては夜半まで及ぶこともあります。しかし合宿を終えた生徒達は皆、その達成感から楽しかったと言います。

また、週2回、授業前に洋書を読む「英文多読」を1・2年生で実施しています。「目指せ! 2年間で20万語」という目標を持って取り組んでおり、実際にその目標を達成する生徒は何人もいます。これは入試に出るような英文をたくさん読むというより、まずは楽しんで英文に慣れることに主眼を置いています。それから週2回の放課後講習(特別入試ゼミ)には、予備校の先生も参加し、通常の授業と連携を取って進めています。

英語の話が出ましたので少し触れておきますが、本校でもセンター試験に代わる新試験に向けて授業研究をしています。以前よりも音読、ペアワーク、グループワーク、クラスルームイングリッシュを意識させ、教員が話すよりも生徒が話す量を増やすといった工夫をしています。口で話して、耳で聞いて、手で書いて、目で見て覚えていくという4つの機能を使うことは英語の基本で、それは今も昔も変わりませんが、新しい視野に立って、より明確に意識して授業を展開しています。進路指導部としては、思考力の育成がこれからは大切なので、英語だけでなく日本語の表現力もつけさせたいと考えています。

資格取得を講習や授業でサポート
AO・推薦や就職の強力な武器に

本校では普通科・商業科問わず、資格取得にも力を入れています。英語では、年に1回は英検全員受験、生徒によっては毎回チャレンジする者もいます。検定を受験する生徒は必ず直前講習を受けます。これによって、受けるからには合格を目指すという意識と意欲が高まります。

こうした取り組みは普段の授業とは別に行うのですが、授業でも検定に向け自分で継続して学習できるきっかけを用意しています。直前講習は英検以外の検定でも同様です。特進は英検、漢検が中心ですが、他のコースではそれ以外の検定でも講習を行います。商業科はもちろん、普通科でもワープロ、プレゼンテーション、秘書、簿記といった資格を学内で多数取ることができます。

近年は大学の求めるものが明確になってきたので、生徒の目的意識も変わってきたように思います。これらの資格を活用して推薦やAO入試で商学系学部に進学する生徒が多いのも本校の特徴でしょう。四年制大学に進学した商業科のある生徒は、全商1級6つを含め19も資格を取得して卒業式で表彰されました。

本校のモットーは『Yes, I Can.』です。検定試験の合格を通して達成感と自信が得られます。資格は一生の宝といいますが、将来さまざまな経験を経る中で資格を持っていることが大きな支えにもなります。

社会貢献できる女性のキャリアデザインを目指す

卒業時に進路が決まればそれで終わり、ではありません。本校では、社会に貢献できる女性の育成を掲げています。社会に貢献できる女性とは、職場においても家庭においても必要とされる人のことをいうのだと思います。個々の特性を生かし、しっかりと輝ける未来を持てるよう、高校三年間の中で指導しています。

本校ではキャリアデザインとして3Cを意識させています。まず1年生はChange。入学時には高校生活や高校の学習について、新たな環境に慣れた頃に職業理解についてのガイダンスを行います。また、学部・学科ガイダンスでは大学の教授に模擬講義もしていただきますが、さらに女性の社会貢献という観点から、先生ご自身の歩み、進路の選択、女性の生き方をもうかがいます。また全校生徒を対象に、2学期のキャリア講演会では、女性のキャリアについてお話をうかがいます。過去には戸板女子短期大学客員教授でタレントの菊池桃子さん、野球の宇津木妙子監督、レスリングの小原日登美さんにもおいでいただいております。

このほか普通科スタンダードと商業科では1年生の3月には高大連携で、法政大学キャリアデザイン学部学生の方によるキャリア適性を考えるワークショップを実施しています。特進は2学期に直接法政大学にお邪魔します。これには大学生とのキャンパス見学なども含まれ、大学の学部学科研究の一つとしています。

また特進では提携校である女子栄養大学での調理実習も実施しています。大根の千切り、オムレツなどの調理検定の課題をテーマにしており、これをきっかけに調理検定を受けたり、栄養の方面を志す生徒もでてきます。

2年生はChoice。オープンキャンパスへの参加が中心です。大学に足を運び自分の目で見るための事前ガイダンスを行います。人数的には少ないですが専門学校希望者もいます。専門学校は職業と直結しており大学進学とは異なる明確な職業意識が必要なので、職業研究レポートを提出させています。また就職希望者は企業訪問をして、企業の人事担当者から企業が求める人材などについて直接お話を伺う機会を持ちます。

3年生はChallenge。夏には、本校卒業の現役大学生が後輩達に体験談を話しにきます。受験直前なので、よい形で刺激をもらえると在校生たちからは好評です。

時期は異なりますが就職して経験を積んだ卒業生にも話をしてもらいます。「学校の成績は百点でなくても『よい成績』だけれど、仕事では百点を取らなければ人に迷惑をかける。責任ある仕事をするには常に百点を目指す必要がある」といった話は先輩の実体験なので、教員が言うよりも印象深く、共感しているようです。

具体的な進学などに関する指導は担任の先生が第一線で指導しますが、進路指導部をはじめ、多数の教員が面談を繰り返し、生徒をしっかりと思いやった指導を心がけています。また学校と保護者の連携を密にし、両者で生徒を強力サポートするよう心がけています。

部活や学校行事に取り組むことで
「見えない学力」を育てる

本校では、必ずクラブ活動に参加することになっています。それは特進コースも同様で、特進でも全国大会で活躍する野球部やサッカー部で、部活にも勉強にも取り組む生徒がいます。

クラブで目的を持って活動し、高い目標に向かって勉強とクラブの両立に励むクラスメートがいることは学校生活の充実につながります。部活動では上級生との接し方、下級生をまとめることを学ぶほか、科やコースの垣根を越えた交流もできます。また全国レベルで活躍するクラブが学校にあると他の生徒も刺激されます。

このほか本校では5月の体育祭、7月の合唱コンクール、10月のむらた祭が3大学校行事です。特に体育祭ではクラス対抗リレー、学年対抗の全級リレー、応援合戦もあり、熱い一日になります。

高校生活は勉強だけでありません。部活、学校での取り組み、委員会活動があります。学校生活のすべてにおいて人との関わりを大切にすることを教えています。途中で困難があっても、そうした行事や活動を通じてお互いに尊敬しあい、共に目標を達成することで、絆が生まれます。集団での高まりは個人の成長を生みだします。

校長は「見える学力、見えない学力を育てる」と言います。「見える学力とは勉強の力ですが、それだけではいけない。見えない学力すなわち人に感謝する心、自分を律する心を持つことが大切」と。私たちも折に触れ、この話をしています。そして今の自分との比較で、一歩でも前に進むこと。その努力の先にあるものは、資格の取得や、入試での合格など、それぞれ違うかもしれません。

二代目校長村田照子の言葉に「あせらずに、あきらめないで、一歩ずつ」とあります。本校では、そのサポートができればと願っています。

■村田女子高等学校

▲浜中 清美 先生

 
 
 
 
 
Lineup

【第21回】~【第30回】
千葉県のキャリア教育推進
~宮城県のキャリア教育推進

【第11回】~【第20回】
かながわキャリア教育実践推進プラン
~静岡県のキャリア教育研究開発推進

●静岡県のキャリア教育研究開発推進
19 静岡県立静岡農業高等学校(1) 20 静岡県立静岡農業高等学校(2)
●静岡県のキャリア教育研究開発推進
17 静岡県教育委員会(1) 18 静岡県教育委員会(2)
●かながわキャリア教育実践推進プラン
15 神奈川県立光陵高等学校(1) 16 神奈川県立光陵高等学校(2)
●かながわキャリア教育実践推進プラン
13 神奈川県立横浜桜陽高等学校(1) 14 神奈川県立横浜桜陽高等学校(2)
●かながわキャリア教育実践推進プラン
11 神奈川県教育委員会(1) 12 神奈川県教育委員会(2)

【第1回】~【第10回】
現在の高等学校におけるキャリア教育の実態
~産業社会と人間