ドリコムアイ.net…高校生の進路と教育を考えるWebマガジン

キャリア教育実践レポート

2006-12-25UP

「かながわキャリア教育実践推進プラン」
Part.1 神奈川県の取り組み紹介 vol.1

インタビュー
神奈川県教育委員会
高校教育課教育企画担当主幹 岡野 親氏

●キャリア教育実践レポート「愛知県のキャリア教育推進校」

Part.1 愛知県教育委員会と県立一色高等学校の実践レポート
vol.1 愛知県教育委員会

vol.2 愛知県立一色高等学校


●キャリア教育実践レポート「宮城県のキャリア教育推進校」

Part.1 宮城県泉館山高等学校の実践レポート
vol.1
vol.2


●キャリア教育実践レポート「東京都のキャリア教育推進校」

Part.1 東京都立本所高等学校の実践レポート
vol.1
vol.2


●キャリア教育実践レポート「専門高校の日本版デュアルシステム推進」

Part.1 茨城県立日立工業高等学校の実践レポート
vol.1

vol.2


●キャリア教育実践レポート「栃木県のキャリア教育研究開発推進」

Part.1 栃木県立栃木商業高等学校の実践レポート
vol.1
vol.2


●キャリア教育実践レポート「千葉県のキャリア教育研究開発推進」

Part.1 千葉県立浦安高等学校の実践レポート
vol.1
vol.2


●キャリア教育実践レポート「静岡県のキャリア教育研究開発推進」

Part.1 静岡県教育委員会高校教育課に聞く
vol.1
vol.2

Part.2 静岡県立静岡農業高等学校の実践レポート
vol.1
vol.2


キャリア教育実践レポート「かながわキャリア教育実践推進プラン」

Part.1 神奈川県の取り組み紹介
vol.1
vol.2

Part.2 神奈川県立横浜桜陽高等学校の実践例
vol.1

vol.2


Part.3 神奈川県立光陵高等学校の実践例
vol.1

vol.2


●キャリア教育実践レポート「産業社会と人間」

Part.1 晴海総合高校の「産業社会と人間」実践例
vol.1
vol.2
vol.3

Part.2 筑波大学附属坂戸高等学校の「産業社会と人間」実践例
vol.1
vol.2

Part.3 神奈川県立大師高等学校の「産業社会と人間」実践例
vol.1

vol.2
vol.3


●現在の高等学校におけるキャリア教育の実態

Part.1 文部科学省がキャリア教育を推進する背景


Part.2 全国高等学校進路指導協議会事務局長 千葉吉裕氏に聞く
vol.1 前編
vol.2 後編

神奈川県は一足早く
キャリア教育活動に着手

 神奈川県教育委員会では、2005年4月に「かながわキャリア教育実践推進プラン」を策定した。これは、2008年度からすべての県立高校において、学校ごとに指導計画を作成し、それに基づくキャリア教育を展開することを目標とするものだ。

 計画の実現に向けて2005年度からすべての県立高校で「キャリア教育実践推進事業」を展開している。

 全国的にみてもかなり早い時期にスタートした神奈川県教育委員会のこうした取り組みは、現在どのように行われているのだろうか。また、始まって2年近く経った今、いったいどのようなことが見えて来たのだろうか。神奈川県教育委員会高校教育課教育企画担当主幹の岡野親さんにお話を伺った。
 
キャリア教育は
教育活動すべての中に位置づけて行うべきもの

 神奈川県がこの取り組みを行うことになったのは、2004年1月に文部科学省が出した「キャリア教育の推進に関する総合的調査研究協力者会議報告書」がきっかけでした。その中で初めてキャリア教育がきちんと定義され、必要性も理論的に説かれましたが、そのことを我々も非常に重く受け止めた。それによって始めたのがこの取り組みです。

 キャリア教育は、以前は進路指導教育というような形でやっていた学校が多かったわけです。しかし、本県ではこの取り組みを始めるにあたって、キャリア教育は高校における教育活動すべての中に位置づけてやるべきだということを確認しました。そして、そのような基本的方向を盛り込んだ「かながわキャリア教育実践推進プラン」を2004年度中に作成し、2005年4月に各県立高校に配りました。

 全県一斉にこうした取り組みを行うにあたっては、もちろんある程度の困難も予想されました。ただ、我々が言ってきたのは、「全く新しいことをやるのではなく、進路指導や職業教育を含めて、今まで各高校がそれぞれのやり方で行っていたことを、少し違う意識でとらえ直してみてください」ということです。あるいは、足りない事をちょっと付け加えてみればできることだと。

 ですから、2008年度までに各校の実態に合ったキャリア教育プランを作成するということにしたわけで、3年という時間をかければ必ずやれるだろうという思いがありました。

 なぜ、こうした取り組みが必要であったか、これまでの指導のどこに問題があったのかというと、今までの進路指導というのは進路指導部に所属する数人の先生を中心に、学校のごく一部で行われていたという点。そして、そこで行われていたのはマッチングに終始していたという点です。

 つまり、その指導には、子どもたちが世の中で生きる力を育てるという、大事な視点が欠けていた。そうした反省も込めて、これからはすべての教育活動をキャリア教育の視点で取り組むべきではないかとなったのです。

 今後は、一部の先生でなく、すべての教員がここでやろうとしているキャリア教育を理解し、統一した意識で臨んでいかなければいけません。我々にとっての一番大きな課題はその部分だと思っています。

 その実現に向けて、2005年から研修を何度も行ってきました。もちろん、すべての教員を一堂に会してということはできないので、まずは校長への研修から始めました。そしてその次は教頭、さらに、担当教員へと少しずつ下におろして行ってきました。また、担当以外の教員のためには、研修計画を立てて学校内で研修をしていただきたいという指導もしています。

 さらに、研修以外にも、2005年度にはすでに何らかの形でキャリア教育を推進している学校10校を「キャリア教育実践推進モデル校」に指定し、それらの学校でモデル授業を実施し、カリキュラム例を提供するというようなことも行っています。アドバンテージのある学校は、研究授業などによってそれをさらに底上げし、その他の学校はそれを参考にすることで効率よく推進できるのではないかということです。

キャリア教育とは
生きるために必要な能力の開発

 キャリア教育は、知識を教えるものではありません。生きるのに必要な能力を育てるためのものです。世の中で生き抜く力を指して、文部科学省は4領域8能力といっていますが、神奈川県ではそれをさらに分類して、5領域10能力としました。この図を見ていただければわかるように、キャリア教育は子どもたちのこうした能力を開発するためのものなのです。(図1

 先生方にこのように説明すると、ここにあるような能力の開発ができるような授業とはいったいどういうものか、授業で取り入れる場合はどういう工夫を行えばいいのかと、よく聞かれます。

 数学の授業を例にとって説明しましょう。たとえば、今までは教科書の例題を先生が解いて解説し、次はみなさんやってくださいと言ってやらせ、しばらくたったら答え合わせをしていたとしましょう。その授業を、5領域10能力のいずれかを養うようなものにできないかと考えて見直すと、どうなるか…。

先生が例題について解説したあとで、生徒に「ではAくん、問1についてやってみて、先生の代わりにみんなに説明してみてください」と投げかけただけでも、だいぶ違ってくるはずです。人に対してわかるように説明しなければいけませんし、あるいは情報を検索して発信するということでもあるから、「問題解決能力」や「コミュニケーション能力」を養うことができるかもしれない。

 修学旅行などもそういう視点で見直せば、単に観光地に行って良かったね、ではなくて、もっと生徒が主体的に行動する方がいいのではないか、地元の人にインタビューをして帰ってきてからそれを発表したらどうかなど、いろいろ考えられるかもしれない。それによって、「選択・決定の能力」や「計画実行の能力」を養うことができるでしょう。

 こうして例をあげてみればわかるように、キャリア教育が今までのやり方を少し見直すだけでできるものだということが、よくわかるでしょう。5領域10能力の開発という視点で教育活動を見直していった結果、もしかしたら今までと何も変えなくてよかったという学校もあるかもしれないわけです。



図1 神奈川県の能力分類