第12回 キャリア教育実践レポート

「かながわキャリア教育実践推進プラン」Part.2

神奈川県の取り組み紹介(2)


インタビュー
神奈川県教育委員会 高校教育課教育企画担当主幹
岡野 親氏
※部署名、役職名、施策などは取材当時のものです
更新:2007/01/09

進学校でも可能な
キャリア教育とは

キャリア教育には、「これが正解」というものがあるわけではありません。代表的なキャリア教育の1つに、総合学科が行っている「産業社会と人間」という授業があります。あれはキャリア教育としては非常によくできているやり方ですし、本県でも学校によってはあの授業を取り入れるところがあってもいいと思います。ただ、それだけをイベント的にやるのでは意味がない。先ほどからお話しているように、それをメインとしていろいろな科目に波及させていくことが大切です。

他県から見学に来た方からよく受ける質問に、「進学校ではどのようにキャリア教育を行ったらいいのですか」というものがあります。同じように、本県の保護者からも「キャリア教育という余計なものをする余裕があったら、もっと受験科目をやってほしい」というような声も、数多く聞かれます。

もちろん受験科目に力を入れなければいけない進学校で、たとえば「産業社会と人間」の授業を設定しなさいというのであれば、それはあまりにも学校の実態にそぐわない。しかし、そんなことをする必要はないのです。あくまでもキャリア教育という視点で授業を見直すだけでいいのですから。

それに、もしかしたら「コミュニケーション能力」を養うような授業にちょっと変えることで、一方通行の授業より知識の定着や理解が深まるという結果になるかもしれません。学校には、保護者や生徒にももっとキャリア教育の説明をしてほしいと話しています。我々は、教える方だけではなく、お互いにキャリア教育を意識することが非常に大事だと考えています。

たとえば筋肉トレーニングを行うときには、コーチは必ず選手にその練習はどこの筋肉をつけるためにやっているのかを伝え、意識させるといいますが、それは能力の開発においても同じだと思うのです。ただ漫然とやらされているのと、意識するのとでは伸び方が違うはずだと。

また、我々が保護者や生徒に伝えたいのは、今まではどこの会社に受かったとか、どこの大学に受かったというようなことが、高校の最終目標になっていたけれど、本来はそうではないということです。もともと高校の目的は、いかに社会に出てから生きていけるかという、その能力を最終的に養うところにあったわけです。

ですから、嫌々入った大学や会社で、結局は辞めてしまうというのではなく、きちんと判断して進路を選ぶ力をつけることが大切なのです。人生では、いろいろな場面で、情報を得て、話を聞き、将来の展望を見据えて、自分の意思を決定していく能力が必要になります。

また、キャリアアップしていくためには、自分でどんどん学ぶという姿勢も持ち続けなければいけません。そういう意味では、生涯にわたって必要な能力をこのキャリア教育でたくわえることになると言えるはずです。

学校外の教育力を
活用するための取り組みも充実

教育委員会ではまた、学校外の教育資源活用のためのシステム作りも行っています。特にインターンシップについては、商工会議所などに協力をお願いしています。

また、若者就職支援センターなどとも連携していますし、神奈川県専修学校・各種学校協会にも「仕事の学び場」という高校生向けの特別講座を、毎年夏に実施してもらっています。キャリア教育で養う能力は社会に出たときに必要になるものということを考えると、社会との連携も必要ですが、教員だけでそうした環境を作るのは困難でしょう。

2006年度は、特にインターンシップを充実させようということで、各地域で地域の方をキャリアアドバイザーとして雇用し、インターン先の開拓をお願いしました(図表-(1))。

図表-(1) 神奈川県のキャリアアドバイザー
神奈川県のキャリアアドバイザー

神奈川県では2008年までに、すべての県立高校で「インターンシップを体験したい」という生徒がいたら、必ず実現できるだけの仕組みを整えるとしていますが、そうなると受け入れ先の拡大が急務になりますから。さらに、各地区に学校と企業がインターンシップの推進について協議する「連絡評議会」も作りました(図表-(2))。

図表-(2) 神奈川県の連絡評議会
神奈川県の連絡評議会

教育委員会で県内すべてをカバーすることはできないので、こういう形で、地区ごとにいろいろなところと連携してやってもらおうということです。

約1年後にはすべての県立高校でキャリア教育がスタートする予定ですが、それが成功するかしないかの鍵になるのは教員の意識の統一であると思っています。とはいえ、キャリア教育は高校だけで完結できるものでもありません。小・中・高の連携、つまり段階を追ったキャリア教育が大切ですし、また大学や社会に出てからも必要なものです。

最近は、大学の中にもキャリア教育に関連する学部を新設するところがあったり、企業でもキャリア教育について考え始めているところがあったりするようです。とてもいい流れだと思いますね。

■神奈川県教育委員会

▲岡野 親 氏

Lineup

【第21回】~【第30回】
千葉県のキャリア教育推進
~宮城県のキャリア教育推進

【第11回】~【第20回】
かながわキャリア教育実践推進プラン
~静岡県のキャリア教育研究開発推進

●静岡県のキャリア教育研究開発推進
19 静岡県立静岡農業高等学校(1) 20 静岡県立静岡農業高等学校(2)
●静岡県のキャリア教育研究開発推進
17 静岡県教育委員会(1) 18 静岡県教育委員会(2)
●かながわキャリア教育実践推進プラン
15 神奈川県立光陵高等学校(1) 16 神奈川県立光陵高等学校(2)
●かながわキャリア教育実践推進プラン
13 神奈川県立横浜桜陽高等学校(1) 14 神奈川県立横浜桜陽高等学校(2)
●かながわキャリア教育実践推進プラン
11 神奈川県教育委員会(1) 12 神奈川県教育委員会(2)

【第1回】~【第10回】
現在の高等学校におけるキャリア教育の実態
~産業社会と人間