|
農業の明日を実感できる
「農業高校生 夢・未来塾」
また、昨年度から新しい取り組みとして「農業高校生 夢・未来塾」を開講しました。これは先進的な農業者とその関係者を講師に迎えてお話を聞くという取り組みを中心にしたもので、その道の「プロ」たちの話を直に聞くことで農業に夢や希望を持ってもらうことや、起業家精神に富む新たな農業ビジネス創出者を輩出することを目的にしています。生徒は何年生でも自由に参加可能とし、土曜日に実施しました。
昨年度はアメーラトマトという高糖度トマトを栽培し、農林水産省経営局長も受賞されている高橋章夫さんをメインパーソナリティーにお招きして、6回にわたってトマト栽培のお話を伺いました。1回目は高橋さんの水耕農場を見学させていただき、全国各地のトマト20数種類の糖度検査を行い、全国の個性的なトマトを食べ比べたりしました。また高橋さんへの質疑応答もお願いいました。
アメーラトマトは普通のトマトを水やりを制限して育て、中の養分を凝縮して糖度を出しています。そういう無理をかけると植物体は傷むので、普通のトマトに比べ極端に収穫量は少なくなります。栽培技術的にもとても高度で、栽培方法や品種の開発にはかなりのご苦労があったと伺いました。実は高橋さんは本校の卒業生で、開発までのいろいろな試行錯誤の話を生徒たちに非常に熱心に語ってくださいました。
2回目以降は、高橋さんと共にプラントの開発を行った稲吉さんや、高橋さんが作ったトマトをご自分のレストランで出しているシェフなどにも参加していただきました。みなさんその道では一流の方たちですから、お話はとても新鮮で刺激になりました。シェフは生徒と一緒にトマト料理を作っていただき、ご自分の人生や、生き方なども話してくださいました。
そうしたプロのお話を4回にわたって伺ったあと、5回目は生徒のなかから3人を選び、彼らが起業すると仮定して具体的なプランを作成する活動「プランコンテスト」を行いました。プラン作りは静岡県産業部農業振興室のスタッフのみなさんにもサポートしていただき、生徒3人には出来上がったプランを全員の前でプレゼンしました。
起業プラン作りは非農家の家の生徒にもやってもらいました。そういう生徒には、それなりの起業プランが描けると思ったからです。
卒業後の活躍のフィールドは
農業という枠に留まらない
本校は農業高校ですが、みんなが農業を行うという進路を選ばなくても、農業と福祉、農業と看護、農業と保育というように、「農業」と何かを結びつけることにより様々な分野で農業の良さを引き出せる可能性があると、私は思っています。
生徒たちには、「土地がないから農業ができないとか、こういう条件でないと農業はできないとかいうのではなく、ここで学んだ農業の知識や知恵を活用して、どういう社会貢献ができるのかを考えて欲しい。そこにはきっと君たちが自分らしく生きる道があるはずだ」と言っていますが、実際、多くの生徒が卒業するときに農業にかかわる進路を選択していきます。
また、農業高校で学ぶうちに、人生に対する意識が変わる生徒も多いようです。高橋さんの話を聞いた後、自分は高橋さんを追い抜くような大きなことをやりたいという生徒もいました。そういうふうにここで学んだこと、出会ったことでモチベーションを高めていく生徒も増えてきています。
私はこの学校で教鞭を執って10数年になりますが、ここの生徒たちを見ていて思うのは、「農業にはじっと我慢する心や思いやりの心を育てる力がある」ということです。
農業は「待つ」ことが仕事なんですね。畑に種をまいたら芽が出てくるのを待つ。芽が出てくると育つのを待ち、そして花が咲き、実がなるのをじっと待つ。また、作物を育てることで、いろいろなものを慈しむ優しさも培われていきます。作物を育てることと人を育てることには、相通じるものが脈々と流れていると思います。そういう学びができること、それが農業高校の真骨頂だと思っています。
これからの目標は「農業高校生 夢・未来塾」をより充実させていきたいということです。今年も夏から数回にわたって実施する予定です。県内に11校ある農業関係の学校すべてに呼びかけて参加者を募り、大勢の方に参加していただけるように工夫していきたいと思っています。
■静岡県立静岡農業高等学校
http://www.shizuoka-c.ed.jp/shizuoka-ah/index.htm
|