第33回 キャリア教育実践レポート

「山梨県のキャリア教育推進校」Part.1

山梨県立白根高等学校の実践レポート(1)
「県内の普通科ではいち早くインターンシップを導入」


インタビュー
山梨県立白根高等学校
進路指導主事 田中 素子先生
研究係主任 名取 陽子先生
※部署名、役職名、施策などは取材当時のものです
更新:2009/04/20
富士山や南アルプスなど美しい自然にあふれ、観光産業や商業、果樹栽培なども活発な山梨県。県内の普通高校の中で最も早くインターンシップ制度を取り入れてきたのが、山梨県立白根高等学校である。甲府駅から車で約20分、南アルプス市に位置する普通科高校で、創立25年の歴史がある。同校では2004年度以降、高校2年次の生徒全員を対象にインターンシップを行うとともに、その事前・事後学習、小論文指導にも力を注いでいる。併せて、2004年から3か年は「知のパイオニア」(豊かな学力推進事業)の指定校としても研究を重ねてきた。
前編では、どのような意図でインターンシップを主としたキャリア教育を導入したのか、そして全体でどのような流れで行っているのか、進路指導主事の田中素子先生と研究係主任の名取陽子先生に伺った。

進路学習をメインテーマにキャリア教育を推進
職業観の育成と目的意識の涵養をめざす

本校の生徒は、卒業後の進路が大学・短大進学者65~70%、専門学校進学者25~30%、就職者5%といった割合の普通科高校です。保護者や地域の願いとしては学習と部活動の両立、将来を見据えた進路実現があると思います。2003年に「総合的な学習の時間」をどのように活用するかを検討したところ、当時の校長が先頭に立って進路学習をメインテーマと設定しました。そこでキャリア教育を推進し、職業観の育成を図り、明確な進路目標を持って学習に励む生徒を育てようと考えたのです。

2年間を通して職業感・勤労観を身につける
「Will(自分の意志)」を実施

本校における総合的な学習の時間を「Will(自分の意志)」と名付け、2学年においてインターンシップとその事前事後指導を行うことで方針が決定。望ましい職業観・勤労観の確立、進路目標を明確にして意欲的に学び、主体的な進路の選択に対する能力を身につけることを目的としました。2003年度新教育課程1年生からカリキュラムがスタートし、2004年度の2年生全員を対象に地域の企業・官公庁に協力を要請し、インターンシップを5年続けて行ってきています。

1・2年次の体験的な学習成果を
3年次の小論文・面接指導に活かす

1年次は年間35時間1単位で「世の中に目を向けることから始まる自己発見・自己認識」を目標として職業研究や学問分野研究、進路講演会、職業人講話などを行っています。職業人講話ではインターンシップでお世話になる地元企業の社長さんなどに、働くことの意義や職業人の心構えといったお話をしていただいています。

2年次は通年での70時間2単位を設定し、「地域に根差した職業観の育成と自己表現能力の育成」を目的に小論文学習、インターンシップとその事前・事後学習を併せて行っています。1年次からの職業観の育成や小論文指導をインターンシップの取り組みと並行して行い、体験的な学習を3年次以降の推薦入試対策における小論文指導や面接指導に活かせるようにしているのです。

2年生全員参加のインターンシップでは
240名の生徒を100の施設に派遣

2008年度に本校のインターンシップは5年目を迎えました。4年目までは夏休み前半8月の5日間だったのですが、2008年度からは期間を7月後半の3日間に短縮することになりました。これは夏季休業中の学校行事や部活動との兼ね合いから、2年生全員が一斉に行える期間を模索してのもの。受け入れ企業の中にも、5日間では大変という声も一部にはありました。ただ期間を短縮した分、凝縮して質の向上を図ったつもりです。

本校は1学年240名規模ですが、協力企業・施設は100を優に超えています。進路指導部や保護者のネットワーク、南アルプス市福祉協議会等、関係企業・公的施設のご理解・ご協力には本当に感謝しています。派遣先は保育園や幼稚園、病院、老人ホームや介護施設、その他情報企業や設計事務所、印刷所、スーパー・小売店、美術館、図書館、消防署、果樹園まで、実に多様です。各施設の受け入れ人数も1人から6人と少人数としています。

全教員がインターンシップにかかわることで
教員も幅広く見聞を広める

本校の特徴は、インターンシップを依頼する各企業との交渉窓口に全教員を配置して担当してもらっている点です。進路指導部や学年の先生に任せる高校が多いようですが、本校ではすべての教員がインターンシップにかかわっているといえるでしょう。教員によっては同じ企業や施設を毎年担当する例もありますが、できるだけ新しい企業・施設を受け持つなど、幅広く見聞を広めながら生徒の体験を支援しています。

地元の企業だけでなく、県全域の企業に
インターンシップ受け入れを申し込む

現在の生徒は全県一学区制の導入により、遠方の地域から通学している生徒が増加している関係もあり、保護者と生徒の協力を得て中央市・甲斐市で新規の協力企業を確保しました。中には自ら企業開拓をして、インターンシップの申し込みを行った積極的な生徒もいました。またインターンシップ期間中のバイクの使用は禁止し、遠方への通勤は公共の交通機関を利用するか、保護者の協力をいただき送迎という形を取りました。当日は教員が巡回指導するだけでなく、多くの保護者の方に企業を巡回していただいているのも本校の特徴です。アンケートで多くの意見を寄せていただくなど、地域の企業と保護者との連携も一段と進んでいると感じています。

教育委員会レポート「山梨県」

5年計画の「やまなしの教育振興プラン」により
体系的なキャリア教育の推進を目標に掲げる

山梨県教育委員会では、時代の要請に的確に応えながら、教育の一層の振興を図るため、2009年から2013年までの5年間を計画期間とする基本計画「やまなしの教育振興プラン」を策定。

この計画では「ふるさとを愛し、世界に通じる人づくり」の基本理念の下、「個性を生かし、生きる力をはぐくむ『やまなし』の人づくり」と「豊で潤いがあり、明るく活力に満ちた『やまなし』社会づくり」の2つを基本目標とし、これを実現するために6つの重点施策、施策の概要、目標となる指標などを設定している。6つの重点施策の第一に、「体系的なキャリア教育の推進」が掲げられており、企業や家庭、地域との連携によりそれに取り組むことが「生きる力」をはぐくむとしている。

また山梨県では、地域社会の再生は新産業の創出などによる新たな雇用の場の確保と、これを担う若年者雇用の安定にあると考え、地域再生計画として「やまなし若者しごとプラン」を策定。2005年より「ジョブカフェやまなし」を設置し、15歳から34歳までの若者の能力向上と就職促進を図るため、個別カウンセリングや就職ノウハウの伝授、就職情報の提供、職業紹介等の雇用関連サービスをワンストップで提供している。

《つづく》

■山梨県立白根高等学校

▲田中 素子 先生(左)、名取 陽子 先生

 
 
Lineup

【第21回】~【第30回】
千葉県のキャリア教育推進
~宮城県のキャリア教育推進

【第11回】~【第20回】
かながわキャリア教育実践推進プラン
~静岡県のキャリア教育研究開発推進

●静岡県のキャリア教育研究開発推進
19 静岡県立静岡農業高等学校(1) 20 静岡県立静岡農業高等学校(2)
●静岡県のキャリア教育研究開発推進
17 静岡県教育委員会(1) 18 静岡県教育委員会(2)
●かながわキャリア教育実践推進プラン
15 神奈川県立光陵高等学校(1) 16 神奈川県立光陵高等学校(2)
●かながわキャリア教育実践推進プラン
13 神奈川県立横浜桜陽高等学校(1) 14 神奈川県立横浜桜陽高等学校(2)
●かながわキャリア教育実践推進プラン
11 神奈川県教育委員会(1) 12 神奈川県教育委員会(2)

【第1回】~【第10回】
現在の高等学校におけるキャリア教育の実態
~産業社会と人間