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仕事選び
~働く前に考え過ぎない~


工藤 啓
更新:2006/05/15

いま、若者は働くことの意味を一生懸命に探しています。生活費を稼ぐこともありますが、それ以上に、自分の仕事が自分にとって、お客様にとって、社会にとって意味あるものでなければ、大切な人生の一部を仕事に切り売りする価値はないと考えています。生活するための費用くらいであれば、“就職”という労働形態にこだわらなくても稼ぐことは可能だからです。

テレビなどを見ていると、インタビュアーの質問に対して若者が「ラクして稼ぎたい」と話しています。特に努力をすることもなく、自分の欲しいものが買えたり、行きたいところに行けたりするだけの財政的余裕がほしいのは誰も同じでしょう。この“ラクして”というのは、何もしないとは少し異なり、“それなりに”働いていることが前提である意識が見え隠れします。つまり、働くことを放棄しているわけではないのです。

一方、ある雑誌のなかで、株式投資を通じて何十億円も稼いだ若いデイトレーダーは、「人生に虚しさを感じている」と話していました。また、「自分は働いているのではなく、部屋でインターネットをしているだけ」というような内容を話していました。私たちが驚くような金額を稼いでいても、横顔はどこか寂しげで。その声のトーンからは生気のない様子がうかがえました。何でも購入できるけれども、何かが足りていない状況にいるのかもしれません。

いま、働くことに意味を求める若者がいて、社会の側もそれを応援しようとしています。ただ、働く前からいろいろと思考をめぐらせてしまうことで、立ち止まってしまう若者が社会に多く存在します。その大半はとても真面目に働く意味を考えています。しかし、この立ち止まりの期間が長期化すると、若者は実践経験を獲得する機会を持つことができず、それが自信の喪失につながることもあります。

働いた経験のない若者は、「働いていないことのほうが、働いているよりもつらい」ことを知りません。だからこそ、仕事選びで悩んでいる若者がいるのなら、働いてみることから始めてみるよう声をかけることが大事なのです。

工藤 啓
くどう けい

特定非営利活動法人「育て上げ」ネット理事長。1977年6月2日東京生まれ。大学中退後渡米。帰国後、ひきこもり、ニート、フリーター等の就労支援団体「育て上げ」ネット設立。2004年5月NPO法人化、現在に至る。
2005年…内閣府「若者の包括的な自立支援方策に関する検討会」委員/厚生労働省「キャリア・コンサルティング導入・展開事例検討委員会」委員/文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員/埼玉県「ニート対策検討委員会」委員/福島県「若者としごと」研究会アドバイザー/立川市教育委員会立川市学校評議員
著書「大卒だって無職になる」(エンターブレイン)、「ニート支援マニュアル」(PHP研究所)ほか

NPO法人「育て上げ」ネット
Lineup

【2015年 掲載】
84 親とのコミュニケーション~76

【2014年 掲載】
75 もし自分だったらどうする?~67

【2013年 掲載】
66 一声かける勇気~60

【2012年 掲載】
59 進学と奨学金~53

【2011年 掲載】
52 非日常下の成長~46

【2010年 掲載】
45 卒後生活への不安~37

【2009年 掲載】
36 仕事につながるナナメの関係~28

【2008年 掲載】
27 学校を辞めるということ~19

【2007年 掲載】
18 仕事を変えるとき~9

【2006年 掲載】
8 感情と積極性~1