7-1

デジタルコミュニケーション
~ケータイ友達~


工藤 啓
更新:2006/11/20

「ケータイ友達」と聞いたことはありますか。

先日、大学生のグループと話をする機会がありました。「ニート」や「フリーター」をテーマに卒業論文を執筆するので、話を聞きたいということでした。5名の学生に囲まれながら質問に答えていると、ある男子学生の携帯電話が鳴りました。私が「気にしませんので、どうぞ」と言うと、申し訳なさそうに相談室を出て、3分くらいで戻ってきました。しばらくして、別の男子学生の携帯電話が鳴りました。同じように、「どうぞ」と言うと、彼は携帯電話のディスプレーを確認して、「ケータイ友達なので大丈夫です。すいません」と言って、電話を切り、マナーモードに変えました。

小一時間程の話を終えたとき、私は「ケータイ友達と友達は違うのですか?」と聞くと、その彼は「そうですよ」と答えました。その他の学生も「ケータイ友達」がいるそうです。私にはその「ケータイ友達」というのが思い当たらなかったので、率直に彼ら/彼女らに聞きました。

「ケータイ友達って何ですか?」

すると、話の間に携帯電話をマナーモードに切り替えた学生が説明をしてくれました。「ケータイ友達というのは、基本的には携帯メールのやりとりしかしない友達です。ネット友達と違い、顔も本名もしっています。ただ、一緒に出かけるということはなく、何となくメールで世間話をするような、他人でもないけど、友達とも言えない友達ですよ」

この「ケータイ友達」とはいつでも関係を切れる友達ではなく、悩んだときに相談をしたり、アドバイスを求めたりすると、“それなりの”対応をしてくれる“大事な”友達であり、(本当の?)友達には、自分の抱える悩みなどを話すことはなく、つまらない話を“持ち込んで”、良い関係を壊したくないそうです。「ケータイ友達」とは深い関係でないため、相談ごとも気を使う必要がないということでした。

これを聞くと違和感/不快感を持たれる方がいるかもしれません。しかし、私はいまの若者はさまざまなコミュニケーション媒体を駆使して自分を支えていて、昔よりも人間関係を維持するのに大変な労力を使っていると感じました。携帯電話がなかった時代には、それなりの維持方法があったかもしれません。

一方、新しいコミュニケーション媒体が流通するなか、いまどきの若者は、他者との関係維持のために、見た目は平然と、しかし、莫大な苦労を強いられているのかもしれません。

工藤 啓
くどう けい

特定非営利活動法人「育て上げ」ネット理事長。1977年6月2日東京生まれ。大学中退後渡米。帰国後、ひきこもり、ニート、フリーター等の就労支援団体「育て上げ」ネット設立。2004年5月NPO法人化、現在に至る。
2005年…内閣府「若者の包括的な自立支援方策に関する検討会」委員/厚生労働省「キャリア・コンサルティング導入・展開事例検討委員会」委員/文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員/埼玉県「ニート対策検討委員会」委員/福島県「若者としごと」研究会アドバイザー/立川市教育委員会立川市学校評議員
著書「大卒だって無職になる」(エンターブレイン)、「ニート支援マニュアル」(PHP研究所)ほか

NPO法人「育て上げ」ネット
Lineup

【2015年 掲載】
84 親とのコミュニケーション~76

【2014年 掲載】
75 もし自分だったらどうする?~67

【2013年 掲載】
66 一声かける勇気~60

【2012年 掲載】
59 進学と奨学金~53

【2011年 掲載】
52 非日常下の成長~46

【2010年 掲載】
45 卒後生活への不安~37

【2009年 掲載】
36 仕事につながるナナメの関係~28

【2008年 掲載】
27 学校を辞めるということ~19

【2007年 掲載】
18 仕事を変えるとき~9

【2006年 掲載】
8 感情と積極性~1