8-1

感情と積極性
~vs他国~


工藤 啓
更新:2006/12/18

「あまり感情を表に出さないから、イマイチ何を考えているのかわからない」というのが、大人から見た若者像のようです。確かに、本当に仲の良い友人といるとき以外は、あまり「自分」を出さないよう、“それなりに”人間関係をやり過ごすような場面を良く見ます。普段から心を開いて自分自身を表現してほしいという願いは、学校の先生や保護者に共通することかもしれません。

ただ、本当に感情の表現力が弱くなっていたり、感情が高まらなくなっているかといえば、私はそうは思っていません。自分を表現し過ぎることはリスクであると考えている部分はありますが、場面場面ではその内包する感情を見ることができるからです。

「おっ、普段よりも積極的にコミュニケーションしているな」と思う場面として、日本ではない「他国」との接点があったときがあげられます。例えば、今年日本が優勝をしたワールドベースボールクラシックや、ワールドカップなどを一緒に観戦しているときには、日本のピンチや日本のチャンスに、普段あまり感情を出さない若者も声援を飛ばしたり、ガッツポーズをしたりしています。

また、日本語をうまく話すことができない他国の方々とかかわるときにも、相手を助けてあげたい、日本人の考え方を伝えたいという想いから、日本人相手には使わないようなジェスチャーも交えてコミュニケーションを取っています。

先日、たちかわ若者サポートステーション(厚生労働省事業)事業の一環で、利用者を連れて在日米軍基地(横田基地)に行きました。私の友人であるアンソニー君にアテンドをお願いし、日本にいながら異国の空気を体感していただいたのですが、あまり言葉を出さない、感情を表出することが少ない若者が、店員さんと片言の英語とジェスチャーで楽しそうにコミュニケーションを取っていました。帰りの車のなかでも終始笑顔で感想を述べ合う姿がありました。

現在の環境下では変わらなくとも、ある環境を社会の側が準備することで、これほどまでに若者の感情が表れてくる。私は、若者自身が時代と共に変化したというよりは、普段とは異なる環境を与える力の弱体化が、社会の側にあるのではないかと思います。

工藤 啓
くどう けい

特定非営利活動法人「育て上げ」ネット理事長。1977年6月2日東京生まれ。大学中退後渡米。帰国後、ひきこもり、ニート、フリーター等の就労支援団体「育て上げ」ネット設立。2004年5月NPO法人化、現在に至る。
2005年…内閣府「若者の包括的な自立支援方策に関する検討会」委員/厚生労働省「キャリア・コンサルティング導入・展開事例検討委員会」委員/文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員/埼玉県「ニート対策検討委員会」委員/福島県「若者としごと」研究会アドバイザー/立川市教育委員会立川市学校評議員
著書「大卒だって無職になる」(エンターブレイン)、「ニート支援マニュアル」(PHP研究所)ほか

NPO法人「育て上げ」ネット
Lineup

【2015年 掲載】
84 親とのコミュニケーション~76

【2014年 掲載】
75 もし自分だったらどうする?~67

【2013年 掲載】
66 一声かける勇気~60

【2012年 掲載】
59 進学と奨学金~53

【2011年 掲載】
52 非日常下の成長~46

【2010年 掲載】
45 卒後生活への不安~37

【2009年 掲載】
36 仕事につながるナナメの関係~28

【2008年 掲載】
27 学校を辞めるということ~19

【2007年 掲載】
18 仕事を変えるとき~9

【2006年 掲載】
8 感情と積極性~1