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感情と積極性
~vs他グループ~


工藤 啓
更新:2007/01/22

さまざまな若者とのかかわりを通じて感じることは、「敵がいなければ、味方になれない」ということです。敵というと言いすぎですが、協調性や団結力はその理由があって初めて育まれるものだと痛感しています。

高等学校での出張ワークショップで作るグループもしかり、「育て上げ」ネットで支援する若者で作るフットサル(サッカー)チームもしかりなのですが、自分たちだけで活動をしていても、どこか熱狂、熱中できない部分があります。ゲームの相手は普段から生活や行動を共にするような友人や仲間であり、各個人の性格や特徴、できることやできないことなどが見えているために、気を使い過ぎたり、役割を限定したりしてしまうからです。

しかし、そこに見知らぬ他グループが参加をしてくると雰囲気は一転します。グループが本当のグループに、チームが本当のチームになります。勝ったときには勝利のハイタッチ、負けたときには非常に悔しそうな顔をします。現有戦力を活用して、最大限の力を引き出すために皆が一生懸命役割や作戦を考え始めます。協調性なくバラバラではうまくいきませんし、勝利という明確な目標があるため団結力も高まりやすくなります。

以前、若者の支援活動をしている5団体を集めてフットサル大会を開催しました。見知らぬ他団体が整列し、異なる色のユニフォームで対峙しています。

仲間内で別れて試合をするのではなく、「普段の仲間=チーム」であり、「知らないひと=相手チーム」がいるわけです。ゴールを奪えば抱き合い、ハイタッチ。試合に負けたときには悔し涙が止まらなかった若者もいました。

試合前のミーティングでは、「相手は●●●」「向こうチームは×××」「俺たちは●●●」「こっちは×××」と、自分ではなく、自分たちをひとつのまとまりとして主体化する言葉がたくさん出てきました。あまり意見を言わない若者も、「自分はうまくないから、こうしてくれれば…」と、チームのために、勝利のために何ができて、何ができないかを考え、提案することもありました。

学校であれ、企業であれ、普段の「場」には上下関係や、力関係が現存し、発言者とそれに従う者は、ある程度決まっています。しかし、自分たちが知らない他グループが現れることで、その構造に変化をつけることができます。もちろん、劇的に変化することは稀かもしれませんが、普段出さない(出せない)感情や積極性を異なる環境が引き出してくれる。そのような力が他グループ(敵)とのかかわりが育んでくれます。この環境提供もまた、社会の側の役割なのではないでしょうか。

工藤 啓
くどう けい

特定非営利活動法人「育て上げ」ネット理事長。1977年6月2日東京生まれ。大学中退後渡米。帰国後、ひきこもり、ニート、フリーター等の就労支援団体「育て上げ」ネット設立。2004年5月NPO法人化、現在に至る。
2005年…内閣府「若者の包括的な自立支援方策に関する検討会」委員/厚生労働省「キャリア・コンサルティング導入・展開事例検討委員会」委員/文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員/埼玉県「ニート対策検討委員会」委員/福島県「若者としごと」研究会アドバイザー/立川市教育委員会立川市学校評議員
著書「大卒だって無職になる」(エンターブレイン)、「ニート支援マニュアル」(PHP研究所)ほか

NPO法人「育て上げ」ネット
Lineup

【2015年 掲載】
84 親とのコミュニケーション~76

【2014年 掲載】
75 もし自分だったらどうする?~67

【2013年 掲載】
66 一声かける勇気~60

【2012年 掲載】
59 進学と奨学金~53

【2011年 掲載】
52 非日常下の成長~46

【2010年 掲載】
45 卒後生活への不安~37

【2009年 掲載】
36 仕事につながるナナメの関係~28

【2008年 掲載】
27 学校を辞めるということ~19

【2007年 掲載】
18 仕事を変えるとき~9

【2006年 掲載】
8 感情と積極性~1