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講座からわかる高校生とフリーター
~フリーターのメリットは本当か?~


工藤 啓
更新:2007/06/25

フリーターにはメリットがたくさんある、というイメージを持った高校生に対して、リスクの観点を持っていただくには、一方的に誇張したデメリットを伝えるだけでは困難です。だからこそ、講座運営は参加型にこだわります。彼ら/彼女らが信じるフリーターのメリットに対して、彼ら/彼女ら自身が「本当にメリットなのか?」と疑問を持つ状況を作らなければなりません。

例えば、「自由に時間を使える」と言うのはどうでしょうか。確かに、自分の働きたい時間だけをシフト希望表に書いて提出すれば、希望に応じた形になるでしょう。そこで、講師は、その他の自由な時間を何に使いたいのか、と質問をします。すると、ほとんどの答えは、「友人と遊ぶ」でした。答えの前提には、自分が休みであれば、みんなも休みというのがあります。

そこで、数名に何曜日に休みたいかを聞けば、その答えはバラバラです。周囲が休みである週末と答えることもあれば、お店やアミューズメントパークが空いている平日と答えることもあります。友達と遊ぶための自由な時間に、遊ぶべき相手がいないことに気付くわけです。

また、「働いた分だけ給料をもらえる」と言うのは、サービス残業への拒否から来ています。サービス残業そのものはとんでもない話ですが、パートやアルバイトで言えば、働いた分しか給料をもらえないわけです。そこで会場に質問をします。

「現場作業で、雨が続いたら?」
「体調を崩したり、病気になってしまったら?」
「友人の結婚式が重なったら?」

確かに、働いた分だけ給料をもらえるのは事実ですが、一時的に働けない状況になることもあるわけです。すると、「自分は風邪を引きやすいので困る」とか、「学校の忌引きとは違う」という意見が出てきます。そこで、初めて気付き、考えるようになるわけです。フリーターもいいけど、そうでないのもいいのかも、と。

多数、講座を展開していて思うのは、大人が既に知っていることを壇上から切々と語っても、10代の学生に“自分のこととして”考えてもらうことは正直難しいということです。一方、彼ら/彼女らの意見や考えを出していただき、そこに対する異なる視点もまた、彼ら/彼女らから出してもらう。これだけでも効果はかなりあります。こちら側がすることはほとんどありません。

講座を通じてわかったこと、それは高校生の考えるフリーターは、比較的都合のよい情報だけで作られたイメージによるものであり、そのイメージに刺激を与えるためには、彼ら/彼女ら自身の意見を集約して、問題意識を持ってもらうのが効果的だということです。

工藤 啓
くどう けい

特定非営利活動法人「育て上げ」ネット理事長。1977年6月2日東京生まれ。大学中退後渡米。帰国後、ひきこもり、ニート、フリーター等の就労支援団体「育て上げ」ネット設立。2004年5月NPO法人化、現在に至る。
2005年…内閣府「若者の包括的な自立支援方策に関する検討会」委員/厚生労働省「キャリア・コンサルティング導入・展開事例検討委員会」委員/文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員/埼玉県「ニート対策検討委員会」委員/福島県「若者としごと」研究会アドバイザー/立川市教育委員会立川市学校評議員
著書「大卒だって無職になる」(エンターブレイン)、「ニート支援マニュアル」(PHP研究所)ほか

NPO法人「育て上げ」ネット
Lineup

【2015年 掲載】
84 親とのコミュニケーション~76

【2014年 掲載】
75 もし自分だったらどうする?~67

【2013年 掲載】
66 一声かける勇気~60

【2012年 掲載】
59 進学と奨学金~53

【2011年 掲載】
52 非日常下の成長~46

【2010年 掲載】
45 卒後生活への不安~37

【2009年 掲載】
36 仕事につながるナナメの関係~28

【2008年 掲載】
27 学校を辞めるということ~19

【2007年 掲載】
18 仕事を変えるとき~9

【2006年 掲載】
8 感情と積極性~1