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もう1つの「働く」価値観
(前編)


工藤 啓
更新:2007/11/19

キャリア教育の一環として、中学校や高校で講演させていただくことがあります。

最近では、「働き方」をテーマにすることが多いのですが、「働き方」というと「正社員が安定している」とか「フリーターは不安定。いまは派遣社員、契約社員、個人事業主など、労働形態が多様化している」との話になりがちです。もちろん、さまざまに存在する労働形態をしっかり理解しておくことは、自分を守るためにも大切なことですが、私はもう1つの「働き方」も大切にしたほうがよいとお話させていただいています。

これまでの日本企業は定期安定昇給でした。会社で地道に働いていれば、ライフステージがあがるにつれて給料も上がりました。

若いうちは給料が安くとも、最後には高いお給料をいただけるようになることが、半ば約束されていました。さらに、定年になるまで1つの会社が面倒を見てくれる終身雇用制度もありました。誰もが安心して「社」に「就く」ことができる「就社」が「働き方」の主流だったのです。

しかし、バブルの崩壊などを経て、この「社」の安全性に誰もが疑問を持つようになってきます。雇用された企業が永続的に安定することを信じる人はいないでしょう。若者も当然のようにそう認識しています。大企業でも倒産する可能性はあります。企業合併で放り出された例は巷に溢れています。そこで、資格取得や専門性の獲得に価値観が傾きました。高い専門性があれば、会社がなくなっても別の会社で活躍できると考えたからです。

つまり、職人として会社と雇用契約を結ぶことが重要だということです。

「社」に頼らず、「職」に「就く」、いわゆる、本来の意味での「就職」という考え方が広がってきました。このあたりの時期から注目されてきたのが「キャリア教育」ではないでしょうか。

学齢期から、自分を知り、社会を知り、仕事を知り、これから先の人生を自立的に過ごすチカラの育成に焦点をあてていく。しかしながら、就職氷河期とともに、そもそもの問題として「働く」ことを希望しながら、働けない若者が増加してしまったためか、キャリア教育の内容も比較的「職業」に関係するテーマが多くなった印象があります。ここまでは、従来の「就社」として「就職」への価値観は強かったのですが、最近では別の「働き方」に価値を見出す若者が出てきています。

工藤 啓
くどう けい

特定非営利活動法人「育て上げ」ネット理事長。1977年6月2日東京生まれ。大学中退後渡米。帰国後、ひきこもり、ニート、フリーター等の就労支援団体「育て上げ」ネット設立。2004年5月NPO法人化、現在に至る。
2005年…内閣府「若者の包括的な自立支援方策に関する検討会」委員/厚生労働省「キャリア・コンサルティング導入・展開事例検討委員会」委員/文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員/埼玉県「ニート対策検討委員会」委員/福島県「若者としごと」研究会アドバイザー/立川市教育委員会立川市学校評議員
著書「大卒だって無職になる」(エンターブレイン)、「ニート支援マニュアル」(PHP研究所)ほか

NPO法人「育て上げ」ネット
Lineup

【2015年 掲載】
84 親とのコミュニケーション~76

【2014年 掲載】
75 もし自分だったらどうする?~67

【2013年 掲載】
66 一声かける勇気~60

【2012年 掲載】
59 進学と奨学金~53

【2011年 掲載】
52 非日常下の成長~46

【2010年 掲載】
45 卒後生活への不安~37

【2009年 掲載】
36 仕事につながるナナメの関係~28

【2008年 掲載】
27 学校を辞めるということ~19

【2007年 掲載】
18 仕事を変えるとき~9

【2006年 掲載】
8 感情と積極性~1