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もう1つの「働く」価値観
(後編)


工藤 啓
更新:2007/11/26

「7・5・3現象」という言葉が社会に定着したように思います。

卒後3年以内に勤めた会社を離職する率を表した言葉で、大卒者の3割、高卒者の5割、中卒者の7割が3年以内に離職しています。その割合は年々高まっているようです。その中でも、「社」や「職」に就くことなく、自らの意志とチカラで未来を切り開こうとする若者が台頭してきました。

「自分」に「就く」若者を、私は「就自」と表しますが、ベンチャー起業家やソーシャルアントレプレナーと呼ばれることも多く、メディアでも頻繁に取り上げられています。一時、若手IT起業家が非常に注目されましたが、彼ら/彼女らに触発され、「自分もやってやる!」または、「自分にも社会のためにできることがあるのではないか」と、既存の会社に就くのではなく、自ら会社なり、NPO法人なりを設立し始めました。

ただし、会社を離れた若者全員が全員起業するわけではありません。起業そのものへのハードルの高さもあります。経験も実績もない人間や会社はそう簡単には信用されないことは若者も知っています。そうなると、新しい技術、優れたアイディアで勝負したり、地域密着型で市民の一員として活躍する分野に多く起業家が進出したりするのも理解できます。

若者の早期離職が取り沙汰される一方、「就社」「就職」でもなく、「就自」でもない価値観を重要視する若者が非常に増えている印象があります。それが「就人」です。

どの会社がよいのかわからない。自分が一生をささげられる職業・職種も見えない。それならば、自分自身が尊敬できる、「就」いていきたいと思う「人」を頼りに、自らのキャリアを積み上げていくものです。これは、特定の「人」に依存するのとは違います。自らのインスピレーションを信じ、職場で悩みや苦しみがあっても、最後の最後で離職せずに踏ん張れる理由が、「この人と一緒にやっていきたい」という強い想いがベースにあるのではないしょうか。

現在は少子高齢化と高い離職率を背景に、“採用氷河期”に入っています。よく会社の資源は「人」「物」「金」「情報」などと言われますが、その中でも強く「人」に惹かれ、「人」に「就く」、そこに価値観を置く世代が台頭しています。

若者を掴むには、企業規模や将来性、ビジョンよりも、「人」を前面に押し出したPRが必要になってきているのかもしれません。

工藤 啓
くどう けい

特定非営利活動法人「育て上げ」ネット理事長。1977年6月2日東京生まれ。大学中退後渡米。帰国後、ひきこもり、ニート、フリーター等の就労支援団体「育て上げ」ネット設立。2004年5月NPO法人化、現在に至る。
2005年…内閣府「若者の包括的な自立支援方策に関する検討会」委員/厚生労働省「キャリア・コンサルティング導入・展開事例検討委員会」委員/文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員/埼玉県「ニート対策検討委員会」委員/福島県「若者としごと」研究会アドバイザー/立川市教育委員会立川市学校評議員
著書「大卒だって無職になる」(エンターブレイン)、「ニート支援マニュアル」(PHP研究所)ほか

NPO法人「育て上げ」ネット
Lineup

【2015年 掲載】
84 親とのコミュニケーション~76

【2014年 掲載】
75 もし自分だったらどうする?~67

【2013年 掲載】
66 一声かける勇気~60

【2012年 掲載】
59 進学と奨学金~53

【2011年 掲載】
52 非日常下の成長~46

【2010年 掲載】
45 卒後生活への不安~37

【2009年 掲載】
36 仕事につながるナナメの関係~28

【2008年 掲載】
27 学校を辞めるということ~19

【2007年 掲載】
18 仕事を変えるとき~9

【2006年 掲載】
8 感情と積極性~1