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大人への通過儀礼を考える
(後編)


工藤 啓
更新:2008/02/12

目の前に若者がいたとき、社会の側が、彼/彼女をひとりの大人として認め、対等の関係性を持とうとする価値観は非常に大切であり、それが若者を大人へと成長させるのではないでしょうか。ただ、成人式という現代の“大人への通過儀礼”を考えると、20歳になったすべての若者が大人になる精神的成熟度を持っているかと言えば、それは難しいでしょう。

遥か昔、大人への通過儀礼が「元服」と呼ばれていたころは、すべての人間が豊かな暮らしをしていたということもなく、平均寿命も30歳から40歳でした。15歳前後となれば、人生半ばであり、大人であることを求められました。成人式が生まれた60年前は、いまと比べるとまだまだ貧しくはあったでしょうが、人々の暮らしは少しずつ豊かになっていったのではないでしょうか。当時の平均寿命は60歳くらいであり、大人への通過儀礼は20歳と定められました。

「成人式」ができてから60年経ったいま、科学技術や医療の発達により社会は豊かになりました。乳幼児死亡率が下がったこともありますが、平均寿命は70歳から80歳前後と、人生はかなり長期化してきました。この流れを考えると、社会が豊かになり、人生が長期化するにつれ、ゆるやかに“大人と見なされる”年齢も上昇していくように思います。しかし、いまもまだ「成人式=20歳」であり続けています。

私は、成人式が不必要であるとは思っていません。やはり、何らかの通過儀礼を持って成長を自覚する仕組みは必要だからです。私のアイディアとして、ひとつは20歳でなく、30歳くらいを節目として通過儀礼を行うというのがあります。30歳となれば、多くの若者は社会の一員として自己の成長を実感できている時期ではないかと思うからです。もうひとつは、10歳、20歳、30歳の10年ごとに何らかの通過儀礼を段階的に行うものです。日々の成長は認知しにくいかもしれませんが、10年の歳月を振り返るときにはさまざまな知識や経験の蓄積を思い描くことができるでしょう。

時が経てば、いろいろなものが変化していきます。大人への通過儀礼である「成人式」が意味あるものとして存在していくためには、それもまた変化が必要とされるのかもしれません。もう一度、社会全体で大人への通過儀礼とはどうあるべきかを考えてみるのもよい時期に来ているのではないでしょうか。

工藤 啓
くどう けい

特定非営利活動法人「育て上げ」ネット理事長。1977年6月2日東京生まれ。大学中退後渡米。帰国後、ひきこもり、ニート、フリーター等の就労支援団体「育て上げ」ネット設立。2004年5月NPO法人化、現在に至る。
2005年…内閣府「若者の包括的な自立支援方策に関する検討会」委員/厚生労働省「キャリア・コンサルティング導入・展開事例検討委員会」委員/文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員/埼玉県「ニート対策検討委員会」委員/福島県「若者としごと」研究会アドバイザー/立川市教育委員会立川市学校評議員
著書「大卒だって無職になる」(エンターブレイン)、「ニート支援マニュアル」(PHP研究所)ほか

NPO法人「育て上げ」ネット
Lineup

【2015年 掲載】
84 親とのコミュニケーション~76

【2014年 掲載】
75 もし自分だったらどうする?~67

【2013年 掲載】
66 一声かける勇気~60

【2012年 掲載】
59 進学と奨学金~53

【2011年 掲載】
52 非日常下の成長~46

【2010年 掲載】
45 卒後生活への不安~37

【2009年 掲載】
36 仕事につながるナナメの関係~28

【2008年 掲載】
27 学校を辞めるということ~19

【2007年 掲載】
18 仕事を変えるとき~9

【2006年 掲載】
8 感情と積極性~1