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大切なのはポジショニング
(後編)


工藤 啓
更新:2008/04/07

いまの若者は、とても人間関係を気にしています。出る杭は打たれるから個を埋没させる、というのとは若干違う印象を受けます。前日本代表監督にイビチャ・オシム氏が就任したときは“ポリバレント”という言葉が流行りました。複数の役割(ポジション)をこなせる能力、という意味ですが、何かひとつに突出しているだけではなく、状況に応じた役割もこなせる能力が求められたのです。

まさに、若者が意識する“ポジショニング”をうまく取れる人とは、ポリバレントな人を指しているのかもしれません。高校生の生活に詳しい方から聞いたのは、「いまの高校生はクラスをいくつかのグループに切り分けて考え、どのグループに入ることで自分がラクな位置にいられるかを考えている」ということでした。

誰もがポリバレントなわけではありません。場をリードするのが得意な性格の若者が、必ずしもコーディネート役をこなせるとは限りません。無理にコーディネート役を担おうとするとストレスになってしまいます。そういうときには、絶対的なリーダーがいるグループから、リーダー不在と思われるグループに移り、自分がストレスを感じない位置につくわけです。

ポジショニングへの意識は、自分という存在を際立たせるためではなく、自分を守るための行動ではないでしょうか。

学校裏サイトなどが社会問題として取り上げられていますが、誰にどこで何を言われたり、書かれたりするかわからない世界にあって、この行動は、常にまとわりつく不安から脱出することであり、安心できる環境を作ることでもあるのです。

ポジショニングは、スポーツの世界や、業務を円滑にこなすためと割り切れる大人社会(職業社会)だけのものではなくなっています。若者(子ども)はそんなことを気にしなくてよい、という言葉は現実的に意味を持たなくなりつつあるようです。もし、若者(子ども)から人間関係の悩みや不安を打ち明けられたらどのように答えればよいのでしょうか。そのときに備えて、大人も自分なりの考えを整理しておいたほうがよいのかもしれません。

工藤 啓
くどう けい

特定非営利活動法人「育て上げ」ネット理事長。1977年6月2日東京生まれ。大学中退後渡米。帰国後、ひきこもり、ニート、フリーター等の就労支援団体「育て上げ」ネット設立。2004年5月NPO法人化、現在に至る。
2005年…内閣府「若者の包括的な自立支援方策に関する検討会」委員/厚生労働省「キャリア・コンサルティング導入・展開事例検討委員会」委員/文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員/埼玉県「ニート対策検討委員会」委員/福島県「若者としごと」研究会アドバイザー/立川市教育委員会立川市学校評議員
著書「大卒だって無職になる」(エンターブレイン)、「ニート支援マニュアル」(PHP研究所)ほか

NPO法人「育て上げ」ネット
Lineup

【2015年 掲載】
84 親とのコミュニケーション~76

【2014年 掲載】
75 もし自分だったらどうする?~67

【2013年 掲載】
66 一声かける勇気~60

【2012年 掲載】
59 進学と奨学金~53

【2011年 掲載】
52 非日常下の成長~46

【2010年 掲載】
45 卒後生活への不安~37

【2009年 掲載】
36 仕事につながるナナメの関係~28

【2008年 掲載】
27 学校を辞めるということ~19

【2007年 掲載】
18 仕事を変えるとき~9

【2006年 掲載】
8 感情と積極性~1