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インターンシップへの期待
(前編)


工藤 啓
更新:2008/10/14

私の事務所には毎年、数多くの学生がインターンシップの機会を求めて来ます。私が日本で大学に通っていたころは、給料が発生しないのに「働く」などは“ありえない”と考えていたのですが、アメリカの大学に行けば誰もがインターンシップに取り組んでいました。何のために貴重な時間をインターンシップに使うのかと尋ねると、それは「経験」であったり、「学び」であったりと、給料でない貴重な「何か」を得るための主体的な行動であったわけです。

この「何か」に対する「主体性」はとても大切です。なぜなら、受け入れ側としても、目の前の学生が何をインターンシップに求めているのかが明確になるからです。新聞記者をめざしていたH君は、メディアを通じた情報発信が社会に大きな影響を与えると考えていました。そして、「工藤さんのところは情報発信力が強くないので、そこを強化しましょう」と提案してきたのです。

私が「確かにそうですね。では、お願いします」と伝えた後の、彼の行動はとても速いものでした。学校で学んだ知識を体現すべく、新聞社や記者クラブを回り、インターネットを駆使しながら、次々と「情報発信」機能を作り上げていくわけです。既に実行すべき計画を温めていたようです。

夜遅くまで活動するH君に、「何でそんなにがんばるの?」と尋ねると、「自分のやってみたかったことに“権限"と“責任"を持って取り組むことができ、成功体験と失敗体験ができる。こんなに面白いことはない。お金で買えない経験です」とパソコンに向かいながら話します。アルバイトの時間を減らしているためか、カップラーメンをすすりながら。

そんな彼も某大手新聞社に内定をもらい、いまは記者の卵としてそこでインターンシップをしています。新聞社に対する情報発信機能を作り上げ、いまでは発信された情報を受け取る立場となっています。新たな“権限”と“責任”のもと、主体的に行動をしていることと思います。相変わらず、カップラーメンをすすりながら。

工藤 啓
くどう けい

特定非営利活動法人「育て上げ」ネット理事長。1977年6月2日東京生まれ。大学中退後渡米。帰国後、ひきこもり、ニート、フリーター等の就労支援団体「育て上げ」ネット設立。2004年5月NPO法人化、現在に至る。
2005年…内閣府「若者の包括的な自立支援方策に関する検討会」委員/厚生労働省「キャリア・コンサルティング導入・展開事例検討委員会」委員/文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員/埼玉県「ニート対策検討委員会」委員/福島県「若者としごと」研究会アドバイザー/立川市教育委員会立川市学校評議員
著書「大卒だって無職になる」(エンターブレイン)、「ニート支援マニュアル」(PHP研究所)ほか

NPO法人「育て上げ」ネット
Lineup

【2015年 掲載】
84 親とのコミュニケーション~76

【2014年 掲載】
75 もし自分だったらどうする?~67

【2013年 掲載】
66 一声かける勇気~60

【2012年 掲載】
59 進学と奨学金~53

【2011年 掲載】
52 非日常下の成長~46

【2010年 掲載】
45 卒後生活への不安~37

【2009年 掲載】
36 仕事につながるナナメの関係~28

【2008年 掲載】
27 学校を辞めるということ~19

【2007年 掲載】
18 仕事を変えるとき~9

【2006年 掲載】
8 感情と積極性~1