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学校を辞めるということ
(前編)


工藤 啓
更新:2008/11/25

高校を途中で辞めてしまうひとが毎年数万人います。政府の統計でも、一時は10万人を越えていたこともありましたが、いまはその数も徐々に減ってきています。中退者数が8万人を切った年もありましたが、これは高校を辞めたひとが少なくなったと考えていいのでしょうか? 数字の上では確かに人数は減っていますが、少子化により子どもの数も減っているのですから、実は高校を中退したひとの割合は変わっていないのかもしれません。

先日、NPOを運営する友人から、高校の中退だけではなく、専門学校や短大、大学を途中で辞めてしまうひともかなり多くいると聞きました。その数を全国で合計すると毎年12万人くらいに上るというのです。

私もいまから10年ほど前に都内の大学を中途退学しました。大学は2年生までしか行っていません。もっと言えば、その2年間でも大学の授業にあまり出てもいませんでした。これだけだと、私は何のために大学に入学したのか? と疑問に思われるかもしれませんが、これでも高校卒業時にはしっかりと大学を卒業して就職しようと考えていたのです。しかし、学生時代に出会った多くのひとびとから影響を受け、やがて「普通に大学を出て社会人になるのだ」という考えは変化していきました。

日本で大学を卒業する以上に大切なものを見つけたのが、大学2年生の夏でした。アメリカに旅行中に出会った台湾人の友人と一緒に過ごすことのほうが、自分の人生にとって重要であると感じたのです。大学を辞めるための手続きをしようと担当教授に話をしにいくと、「辞める必要はないのではないか。休学ということにしてみてはどうだろうか」と言われました。しかし、自分が世界で感じたことや、いますぐにでも渡米したい思いを先生に説明すると、最後は「がんばれよ」と応援してくださったのはいまでも覚えています。

私は頭から学校を辞めることが悪いとは思っていません。それが次の目標に向けての前向きなものであるならば、あとは自分の決意次第でしょう。しかし、いまの日本において学校を“なんとなく”辞めるということは、どのような機会の損失を被ることがあるのかはしっかりと認識しなければなりません。

工藤 啓
くどう けい

特定非営利活動法人「育て上げ」ネット理事長。1977年6月2日東京生まれ。大学中退後渡米。帰国後、ひきこもり、ニート、フリーター等の就労支援団体「育て上げ」ネット設立。2004年5月NPO法人化、現在に至る。
2005年…内閣府「若者の包括的な自立支援方策に関する検討会」委員/厚生労働省「キャリア・コンサルティング導入・展開事例検討委員会」委員/文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員/埼玉県「ニート対策検討委員会」委員/福島県「若者としごと」研究会アドバイザー/立川市教育委員会立川市学校評議員
著書「大卒だって無職になる」(エンターブレイン)、「ニート支援マニュアル」(PHP研究所)ほか

NPO法人「育て上げ」ネット
Lineup

【2015年 掲載】
84 親とのコミュニケーション~76

【2014年 掲載】
75 もし自分だったらどうする?~67

【2013年 掲載】
66 一声かける勇気~60

【2012年 掲載】
59 進学と奨学金~53

【2011年 掲載】
52 非日常下の成長~46

【2010年 掲載】
45 卒後生活への不安~37

【2009年 掲載】
36 仕事につながるナナメの関係~28

【2008年 掲載】
27 学校を辞めるということ~19

【2007年 掲載】
18 仕事を変えるとき~9

【2006年 掲載】
8 感情と積極性~1