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働き方を模索する
(前編)


工藤 啓
更新:2009/03/23

大学生の就職活動が活発化してきました。中途採用の枠が広がったとか、労働市場が流動化しているとか、いろいろと言われますが、やはり、“新卒”というのは、自らが望む企業の一員になれる大きな機会のひとつだと思います。公務員を志望する若者にとっても同様です。

だからこそ、学生は悩みます。自己分析は「自分とはどのような人間であるのか」を、真正面から向き合って考えなければなりません。これは本気でやればやるほど苦しい作業です。唯一の“正解”もなければ、ここまでやれば終わりといった区切りもありません。

自分にはどのような仕事が向いているのか。何ができるのか。やりたいことは何か。考えれば考えるほど、わからなくなってシンドクなります。さらにそこから業界研究や各企業の分析をする。OB/OG訪問、企業説明会へ参加する。苦行と呼んでもいいくらいです。

そんな中、学生から受ける進路相談の内容に若干の変化が出てきたと感じています。定番だった「自分の行きたい企業がわからない」「どこに就職をしたらよいのか決められない」といった“どこかの会社の一員になる”ための相談はいままで通りなのですが、どのような“働き方”をしていくのか。そういう相談が少しずつ増えています。

働き方といっても、正社員か派遣社員か。契約社員かフリーターか。そういう話ではありません。これまでの「大学を卒業したら、どこかの会社で正社員として働く」という軸があって、かつ、卒後モデルで迷うのではなく、NPOで働くとか、自ら起業するとか、そこで悩んでいます。これまでの学生が悩む軸とはまったく異なる軸で迷っているのです。

なぜ、そのように“働き方を模索”するのか。大きな要因のひとつとして、多様な価値観を持つ大人に触れるチャンネルが増えていることが挙げられるのではないでしょうか。NPO活動に従事している大人。自ら起業した大人。企業人として利益を追求しながらも、その一方で、培った能力を社会還元している大人。そういう大人との出会いが学生を刺激し、就職をする以外の選択肢もアリかも、企業人でありながらも社会活動ができる環境を持つこともイイかも、と思わせているように感じます。

私が、彼ら/彼女らを「すごいな」と思うのは、そういう大人をただ憧れの眼差しで追いかけるのではなく、自分の生き方、考え方とリアルに照らし合わせた上で悩んでいることなのです。

工藤 啓
くどう けい

特定非営利活動法人「育て上げ」ネット理事長。1977年6月2日東京生まれ。大学中退後渡米。帰国後、ひきこもり、ニート、フリーター等の就労支援団体「育て上げ」ネット設立。2004年5月NPO法人化、現在に至る。
2005年…内閣府「若者の包括的な自立支援方策に関する検討会」委員/厚生労働省「キャリア・コンサルティング導入・展開事例検討委員会」委員/文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員/埼玉県「ニート対策検討委員会」委員/福島県「若者としごと」研究会アドバイザー/立川市教育委員会立川市学校評議員
著書「大卒だって無職になる」(エンターブレイン)、「ニート支援マニュアル」(PHP研究所)ほか

NPO法人「育て上げ」ネット
Lineup

【2015年 掲載】
84 親とのコミュニケーション~76

【2014年 掲載】
75 もし自分だったらどうする?~67

【2013年 掲載】
66 一声かける勇気~60

【2012年 掲載】
59 進学と奨学金~53

【2011年 掲載】
52 非日常下の成長~46

【2010年 掲載】
45 卒後生活への不安~37

【2009年 掲載】
36 仕事につながるナナメの関係~28

【2008年 掲載】
27 学校を辞めるということ~19

【2007年 掲載】
18 仕事を変えるとき~9

【2006年 掲載】
8 感情と積極性~1