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働き方を模索する
(後編)


工藤 啓
更新:2009/03/30

環境活動に取り組む友人がいます。インターンシップとして活動に参加している女子学生から「株主のためとか、会社のために働くことが馬鹿らしくなりました。もっと自分が生きている間にやるべきことがあるんじゃないかと思うんです」という相談を受けて、非常に困ったといいます。

友人は環境活動も企業活動も、どちらも大きな社会性を帯びていると考えています。会社は、“雇用する”という社会貢献を果たしているからです。そこで、「それならやりたいことをしてみたら?」と質問してみたところ、女子学生は「自分の生活も大事にしたいので、ある程度の給料は必要だ」と言います。やるべきことはある。しかし、安定した生活も無視できない。いまも彼女は将来を模索しています。

原体験が進路決定に大きな影響を及ぼしている学生もいます。昔の素晴らしい記憶を残した地元の街が荒廃していく。実家に帰省すれば、誰もが地元の状況にため息をついている。だからこそ、自分を育ててくれた街を盛り上げたい。もう一度、皆の笑顔を取り戻したい。しかし、街の再興を仕事にすることはできるのか、就職経験もなくやれるのか。自分で起業することは簡単ですが、仕事を創り続けることができるかはわかりません。彼は、毎日悩んでいます。

まずは企業に行くことが近道である、と確信した学生もいます。複数のNPO団体に関わり、その活動の素晴らしさと、団体の財政基盤の脆弱さを目の当たりにし、「こういうような活動が継続できる“仕組み”が社会には必要だ」と強く感じています。そして、そのためにはNPOのよさを活かしつつ、企業活動のよさも取り入れていかなければならない。彼はそう考えました。現在は、コンサルティング会社、金融系企業を中心に就職活動をしています。その彼は言います。「まずは5年くらいでノウハウを蓄積したいんです。そして、NPOを支援する会社を創ります。ひとつだけわからないのは、いまの自分の想いが5年後も継続しているのかどうかなんです」。

どうでしょうか。多くの若者が“働き方”の模索を続けています。過去のそれとは内容が変化してきています。大学から会社への移行を遂げるのが大多数ですが、それを受け入れつつ、他の道もアリではないかと考え、悩む。たくさんの大人との出会いが、悩むための材料として活かされています。

工藤 啓
くどう けい

特定非営利活動法人「育て上げ」ネット理事長。1977年6月2日東京生まれ。大学中退後渡米。帰国後、ひきこもり、ニート、フリーター等の就労支援団体「育て上げ」ネット設立。2004年5月NPO法人化、現在に至る。
2005年…内閣府「若者の包括的な自立支援方策に関する検討会」委員/厚生労働省「キャリア・コンサルティング導入・展開事例検討委員会」委員/文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員/埼玉県「ニート対策検討委員会」委員/福島県「若者としごと」研究会アドバイザー/立川市教育委員会立川市学校評議員
著書「大卒だって無職になる」(エンターブレイン)、「ニート支援マニュアル」(PHP研究所)ほか

NPO法人「育て上げ」ネット
Lineup

【2015年 掲載】
84 親とのコミュニケーション~76

【2014年 掲載】
75 もし自分だったらどうする?~67

【2013年 掲載】
66 一声かける勇気~60

【2012年 掲載】
59 進学と奨学金~53

【2011年 掲載】
52 非日常下の成長~46

【2010年 掲載】
45 卒後生活への不安~37

【2009年 掲載】
36 仕事につながるナナメの関係~28

【2008年 掲載】
27 学校を辞めるということ~19

【2007年 掲載】
18 仕事を変えるとき~9

【2006年 掲載】
8 感情と積極性~1