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若者の不安とひとのつながり
(後編)


工藤 啓
更新:2009/05/18

将来に対する不安がまったくないひとは少ないと思います。誰でも多少は決断を迷ったり、選んだ道が本当に正しかったのかを考えてしまったりすることがあります。それにしても、若者の多くが将来に対して不安を抱えると同時に、あまり希望を持っていない、持たないようにしているのは大変な事態だと思います。

もちろん、希望を持っていなければいいとか、持っていることがいいというつもりはありません。むしろ、過大な希望、過度な期待を持つことで、現実の社会で愕然としてしまう可能性もあるからです。

私が若者と話をする中で感じているのは、将来の希望も不安も、希望を叶えたり、不安を解消したりするため道筋も、どれもあまりに曖昧で漠然としていることです。そして、その曖昧さ、漠然さを少しでも明確にしてくれる“ひとのつながり”がないことです。

進学や就職に際して抱える不安の相談を受けるとき、私はかなりぶっきらぼうに質問をしていくような気がします。

「そこに進学した先に何を考えているの?」
「内定先に一生勤めるの? 途中で転職したり、起業したりするの?」
「一社で埋もれたくないのはいいけど、じゃあ、その会社の次はどうするの? どうしたいの?」

こんな感じです。ひどいときには、「どうしても決められないなら、私があなたに代わって決断するので必ずそれに従ってください」とすら言います。もちろん、即答で断られます。相談者からすれば嫌な人間でしょう。それがわかっていれば相談しませんので。

悩んでいる友人を傷つけたくない、我が子に嫌われたくない。だから、相談は聞くけれども、悩みを突き詰めていくことはしない。いつまでたっても不安や悩みは解消されないまま、同じことをズルズルと考えるのです。時には嫌われ役を買ってでもするひとも必要なわけです。

ただ、自分自身が納得して決断をした若者からは感謝されます。突き詰められて腹が立ち、悔しいから何とか答えていく。その答えに対してまた問い詰められる。その過程を繰り返していくうちに決断できるのではないかと思うのです。そんな腹立たしいけど、嫌われ役として相談に乗ってくれるひととのつながりがあれば、不安を克服し、希望を持つことができる可能性は高まると思います。

工藤 啓
くどう けい

特定非営利活動法人「育て上げ」ネット理事長。1977年6月2日東京生まれ。大学中退後渡米。帰国後、ひきこもり、ニート、フリーター等の就労支援団体「育て上げ」ネット設立。2004年5月NPO法人化、現在に至る。
2005年…内閣府「若者の包括的な自立支援方策に関する検討会」委員/厚生労働省「キャリア・コンサルティング導入・展開事例検討委員会」委員/文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員/埼玉県「ニート対策検討委員会」委員/福島県「若者としごと」研究会アドバイザー/立川市教育委員会立川市学校評議員
著書「大卒だって無職になる」(エンターブレイン)、「ニート支援マニュアル」(PHP研究所)ほか

NPO法人「育て上げ」ネット
Lineup

【2015年 掲載】
84 親とのコミュニケーション~76

【2014年 掲載】
75 もし自分だったらどうする?~67

【2013年 掲載】
66 一声かける勇気~60

【2012年 掲載】
59 進学と奨学金~53

【2011年 掲載】
52 非日常下の成長~46

【2010年 掲載】
45 卒後生活への不安~37

【2009年 掲載】
36 仕事につながるナナメの関係~28

【2008年 掲載】
27 学校を辞めるということ~19

【2007年 掲載】
18 仕事を変えるとき~9

【2006年 掲載】
8 感情と積極性~1