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中学4年生
(前編)


工藤 啓
更新:2009/06/22

高校1年生を対象に授業を行うとき、目の前の学生が“高校1年生”なのか、“中学4年生”なのか分からなくなるときがあります。もちろん、特別な事情を除けば中学校を4年間かけて卒業することはありませんので、中学4年生というのは、高校の1年生課程でありながら、意識は中学3年生のまま、別の校舎で、異なるクラスメートと学校生活を送っている学生という意味です。

私が“中学4年生”を感じるときは、何も授業開始時に静かにできないとか、ワークシートやアンケートに記述ができないとか、そのような場面ではありません。そういう目に見えることではなく、むしろ義務教育を終え、自らの意思で進学を決定したとは思いづらい、個々人の意識や、教室の空気/雰囲気に触れたときに感じるのです。

授業を始める少し前に教室に入るとき、私はそこらへんにいた生徒に話しかけたりします。「あなた誰?」的な目線を向けられることもありますが、大半は快く出迎えてくれます。自己紹介をして、若者の自立支援をするNPOの代表であることを伝えると、「何でそんなことをしているんですか?」と聞かれることがあります。

逆に、私のほうからも質問します。「なぜ、高校に進学したんですか?」「何でこの高校でないといけないんですか?」と。すると、そんなことを聞かれたことがないのか、驚いたような顔をされます。「みんな高校行っているから」「そういうもんだから」「親がうるさいから」といった答えや、「この学校しか行けなかった」「どこでもよかった」「中学の先生に言われた」といった答えもよくもらいます。

矢継ぎ早に、「別に義務教育終わっているんだし、高校に行かないといけない理由はないのでは?」などと質問をしていくと、“面倒臭い人間”という感じで逃げられてしまいます。この手の質問は、大学生であっても“面倒臭い質問”と受け取られてしまうこともあるのですが、自分が選択した「場」に対しての説明に応えられない若者が少なくない気がします。

そして、私が“中学4年生”を感じるときに思うのは、彼ら/彼女らを“中学4年生”にしているのは、やはり、大人の側の責任なのではないか、ということなんです。

工藤 啓
くどう けい

特定非営利活動法人「育て上げ」ネット理事長。1977年6月2日東京生まれ。大学中退後渡米。帰国後、ひきこもり、ニート、フリーター等の就労支援団体「育て上げ」ネット設立。2004年5月NPO法人化、現在に至る。
2005年…内閣府「若者の包括的な自立支援方策に関する検討会」委員/厚生労働省「キャリア・コンサルティング導入・展開事例検討委員会」委員/文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員/埼玉県「ニート対策検討委員会」委員/福島県「若者としごと」研究会アドバイザー/立川市教育委員会立川市学校評議員
著書「大卒だって無職になる」(エンターブレイン)、「ニート支援マニュアル」(PHP研究所)ほか

NPO法人「育て上げ」ネット
Lineup

【2015年 掲載】
84 親とのコミュニケーション~76

【2014年 掲載】
75 もし自分だったらどうする?~67

【2013年 掲載】
66 一声かける勇気~60

【2012年 掲載】
59 進学と奨学金~53

【2011年 掲載】
52 非日常下の成長~46

【2010年 掲載】
45 卒後生活への不安~37

【2009年 掲載】
36 仕事につながるナナメの関係~28

【2008年 掲載】
27 学校を辞めるということ~19

【2007年 掲載】
18 仕事を変えるとき~9

【2006年 掲載】
8 感情と積極性~1