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地域の力で自己成長
(後編)


工藤 啓
更新:2009/07/27

プログラムを実施して、地域に関心を持つ若者がたくさんいることがわかりました。ただ、彼ら/彼女らが望むのは地域への貢献だけではなく、活動を通じて「自己成長」が実感できることです。ここを見誤り、こちらの指示を押しつけるようになると若者は離れていきます。とてもデリケートな部分です。

あるチームは、「地域文化」に関心を持ちました。例えば、毎年開催される「寄席」には年配者しか参加していない。若者が寄席に関心がないのではなく、広報(プロモーション)の在り方が課題なのではないかという問題意識です。地域文化の情報配信方法に知恵を絞りました。

しかし、ここで壁にあたります。課題設定と解決策はよかったが、地域の実情把握が弱かったのです。企業的にいうとマーケティングの部分かもしれません。毎年、このイベントを楽しみにしている高齢者が、会場定員の都合で参加できなくなるリスクがあることがわかりました。

イベント担当者と若者が議論を重ね、折り合うポイントを模索していきます。結果、イベントは成功しました。寄席は満員御礼。世代的なバランスもよかった。何より、若者自身が「自己成長」を強く実感できました。課題解決には広い視野を持たなければならないことを、行動を通じて理解できたというのがポイントです。

別のチームは、駅周辺の大規模開発によって苦境に立たされている地域の個店をプロデュースすることにしました。若者の視点で1,000の個店を精査し、40店まで絞り込みます。外観や商品だけではなく、店主へのインタビューも積極的に行いました。意外にも選ばれた40店には、老舗の和菓子屋であったり、鰹節屋であったりと、あまり若者が足を運ばないような個店も多数ありました。理由を聞いてみると、「店主の生き方に惚れた」「歴史の重みを感じた」など、商品ではなく“ひと”で惹きつけられたようです。

40店まで絞り込んだところで、審査委員会にバトンを渡しました。審査委員会は若者が選んだすべての個店に足を運び、優秀個店を選出しました。最後は、市長が選出個店の表彰を行うなど、チームのメンバーは自分たちの行動が地域を動かす原動力になったことを実感したはずです。地域を知り、ひとを知り、自分たちの力を知る。地域の力になりたいと懸命に取り組んだ事業でしたが、彼ら/彼女らからのフィードバックは、「地域の力で自己成長させてもらった」というものでした。

私は、「地域づくり」と「若者の成長」は非常に親和性の高いテーマであると考えます。若者なくして地域の活性化はなく、また、地域というフィールドがなければ若者の成長は促進されません。地域の崩壊、若者の自立が社会課題とされたりもしますが、この2つを掛け合わせるささやかな仕掛けさえあれば、案外、どちらも解決されてしまうかもしれません。

工藤 啓
くどう けい

特定非営利活動法人「育て上げ」ネット理事長。1977年6月2日東京生まれ。大学中退後渡米。帰国後、ひきこもり、ニート、フリーター等の就労支援団体「育て上げ」ネット設立。2004年5月NPO法人化、現在に至る。
2005年…内閣府「若者の包括的な自立支援方策に関する検討会」委員/厚生労働省「キャリア・コンサルティング導入・展開事例検討委員会」委員/文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員/埼玉県「ニート対策検討委員会」委員/福島県「若者としごと」研究会アドバイザー/立川市教育委員会立川市学校評議員
著書「大卒だって無職になる」(エンターブレイン)、「ニート支援マニュアル」(PHP研究所)ほか

NPO法人「育て上げ」ネット
Lineup

【2015年 掲載】
84 親とのコミュニケーション~76

【2014年 掲載】
75 もし自分だったらどうする?~67

【2013年 掲載】
66 一声かける勇気~60

【2012年 掲載】
59 進学と奨学金~53

【2011年 掲載】
52 非日常下の成長~46

【2010年 掲載】
45 卒後生活への不安~37

【2009年 掲載】
36 仕事につながるナナメの関係~28

【2008年 掲載】
27 学校を辞めるということ~19

【2007年 掲載】
18 仕事を変えるとき~9

【2006年 掲載】
8 感情と積極性~1