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就活スーツについて
(前編)


工藤 啓
更新:2009/09/07

もし、人事採用担当者が、面接に際して「スーツ」を来てこない若者と対峙したらどう考えると思いますか。おそらく、「社会性がない」「就職活動をなめている」「働く気がない」などと感じるのではないでしょうか。かつてなら、私はそう感じてしまったかもしれません。

話は変わりますが、2年前と比べて私の体重は10kg以上も軽くなっています。そう、ダイエットに成功したんです。人間ドックの結果があまりにも悪く、このままでは身体が危ないと感じました。体重は順調に落ち、今回の人間ドックは非常によい数字でした。

急激に体型が変わったため、以前から使っていたスーツが合わなくなりました。古いスーツを捨てるかどうか悩んでいたところ、職員から「就職活動をするためのスーツが買えない若者がいます。捨てるのではなく寄付してあげたらどうだろうか」と提案されました。

「スーツが買えない」

最初、その話に耳を疑いました。スーツは安いもので2万円もあれば揃えることができます。シャツ、ネクタイ、靴、鞄を揃えても4万円前後です。それが購入できないというのです。しかし、よくよく自らを振り返ってみると、成人式や働き始めたときのスーツは親に買ってもらった記憶があります。曖昧ですが、5万円くらいもらって一式買いました。

少し想像力を働かせればわかることですが、家計が苦しい家庭にとっての5万円は高額です。家族を支えるためにアルバイト代をすべて親に渡す若者もいます。そうなると、就職活動において“当たり前”とされる「スーツ」を買うのが困難な若者がいるのもうなずけます。

就職活動は、これから職場を見つけ、給料をもらって生活をするための“儀式”のようなものです。給料がもらえればスーツを買うことができますが、スーツがなければ就職活動で職場を見つけることが難しくなるわけです。スーツが準備できないから働けない。働けないから給料がもらえない。給料がもらえなければスーツは買えない。この悪循環から抜け出せず、働けない若者が現実にいることに、私は驚きを隠せませんでした。

工藤 啓
くどう けい

特定非営利活動法人「育て上げ」ネット理事長。1977年6月2日東京生まれ。大学中退後渡米。帰国後、ひきこもり、ニート、フリーター等の就労支援団体「育て上げ」ネット設立。2004年5月NPO法人化、現在に至る。
2005年…内閣府「若者の包括的な自立支援方策に関する検討会」委員/厚生労働省「キャリア・コンサルティング導入・展開事例検討委員会」委員/文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員/埼玉県「ニート対策検討委員会」委員/福島県「若者としごと」研究会アドバイザー/立川市教育委員会立川市学校評議員
著書「大卒だって無職になる」(エンターブレイン)、「ニート支援マニュアル」(PHP研究所)ほか

NPO法人「育て上げ」ネット
Lineup

【2015年 掲載】
84 親とのコミュニケーション~76

【2014年 掲載】
75 もし自分だったらどうする?~67

【2013年 掲載】
66 一声かける勇気~60

【2012年 掲載】
59 進学と奨学金~53

【2011年 掲載】
52 非日常下の成長~46

【2010年 掲載】
45 卒後生活への不安~37

【2009年 掲載】
36 仕事につながるナナメの関係~28

【2008年 掲載】
27 学校を辞めるということ~19

【2007年 掲載】
18 仕事を変えるとき~9

【2006年 掲載】
8 感情と積極性~1