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「働く」が難しい
(前編)


工藤 啓
更新:2009/11/02

最近、立て続けに地方の高校で講演する機会がありました。毎回、校長先生や進路指導担当の先生のお話を伺うと、これほどまで「働く」が難しい状況なのか、と思わざるを得ません。卒業後、就職を希望する高校生に対して有効求人倍率が1.0倍を下回り、とある県では0.2倍という状況でした。倍率の低さもさることながら、雇用条件も大変厳しいのです。実家があって初めて生活設計が可能な金額が記載されている求人票もたくさんあります。

先日ある県の校長先生とお話させていただきました。昨年度、県内で就職を希望しながらも仕事に就くことができなかった高校生が100名だったのが、このままでは今年度は間違いなく1,500名の高校生が就職できない。校長先生自らが何度もハローワークに足を運び、生徒の就職先を見つけようと努力をしていました。もちろん、ハローワークの担当者も頑張っているのですが、「もうこれ以上は何も出ない」と言われてしまい、生徒の将来を案じておられました。

このような状況を察してか、高校生自身の「働く」に対する意識に変化が見られます。少し前の好景気のときは、「安い給料で働くくらいなら、フリーターのほうが稼げるし、自由である」という声をけっこう聞きました。しかし、いまでは「ちゃんと就職できるように出席と成績を常に意識しています」とか、「景気の問題とかはわからないけど、(就職できる)チャンスが少しでもあるならベストを尽くしたい」などと言うのです。

意識が変わったのは、就職希望者だけではありません。専門学校や大学に進学希望の高校生もまた、「入れればどこでもよい」といった声は非常に少なく、「卒業後に就職できる学校、学部を見つけたい」と言います。

現在、社会全体で「働く」が難しいような状況ですが、大人が雇用対策や産業創出に知恵を絞り、議論しています。高い効果が出るアイディアが生まれ、実行されることを切に願いますが、高校生目線に立って見ると、自分の将来への不安は大きく、「誰か何とかしてよ」よりも、「自分で何とかしなければならない」という危機意識を強く感じます。

工藤 啓
くどう けい

特定非営利活動法人「育て上げ」ネット理事長。1977年6月2日東京生まれ。大学中退後渡米。帰国後、ひきこもり、ニート、フリーター等の就労支援団体「育て上げ」ネット設立。2004年5月NPO法人化、現在に至る。
2005年…内閣府「若者の包括的な自立支援方策に関する検討会」委員/厚生労働省「キャリア・コンサルティング導入・展開事例検討委員会」委員/文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員/埼玉県「ニート対策検討委員会」委員/福島県「若者としごと」研究会アドバイザー/立川市教育委員会立川市学校評議員
著書「大卒だって無職になる」(エンターブレイン)、「ニート支援マニュアル」(PHP研究所)ほか

NPO法人「育て上げ」ネット
Lineup

【2015年 掲載】
84 親とのコミュニケーション~76

【2014年 掲載】
75 もし自分だったらどうする?~67

【2013年 掲載】
66 一声かける勇気~60

【2012年 掲載】
59 進学と奨学金~53

【2011年 掲載】
52 非日常下の成長~46

【2010年 掲載】
45 卒後生活への不安~37

【2009年 掲載】
36 仕事につながるナナメの関係~28

【2008年 掲載】
27 学校を辞めるということ~19

【2007年 掲載】
18 仕事を変えるとき~9

【2006年 掲載】
8 感情と積極性~1