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自己肯定感の喪失
~社会の役に立ちたい~


工藤 啓
更新:2010/04/26

職員と話をしていたら、興味深いデータの存在を教えてもらいました。私の事務所は東京都立川市にあるのですが、市内の図書館に市内全市立中学校の各学年から1クラス合計3,713名を対象にした「立川市こどもの自己肯定感などに関する報告書(下記URL参照)」というものがあります。なかなか大規模な調査です。調査票には「自己肯定感」の用語説明があります。

【自己肯定感とは】
自分が生きていることには意味がある、自分は愛される価値がある、自分は大事な存在である、自分には何かできる、などと自分自身を肯定的に捉える感覚をいいます。これは、生きていく上で、とても大切な感覚です。

調査では、市内中学生の78%が「誰かのために何かをしたい」、73%が「社会の役に立つことをしたい」に肯定的な回答を寄せています。さらに、「目標に向かって努力している」中学生が61%もいます。彼ら/彼女らはまだ保護者などに扶養される存在であります。しかし、「個人」「他人」「社会」との関係性のなかで、未来の日本を担う「個人」が利他的であることは非常に希望ある状況です。正直、中学時代に私は目標に向かって努力をするどころか、そもそも目標を持っていたかどうかも怪しいところです。

いま、社会貢献に積極的な企業も増えています。社会貢献事業部やCSR推進室など、以前はなかった部署が設置されています。大学生が就職先を選ぶ際にも、その企業が社会に対してどのように向き合っているのかを重視する傾向もあります。インターンシップ先に、あえてNPOなどを選択する学生も増えている実感があります。

社会の役に立ちたい感情が少しずつ日本社会に芽生え、その影響が義務教育課程にある青少年にも見られるようになってきたのは素晴らしいことです。ただその一方で、“自分自身を肯定的に捉える感覚”をうまく育めない状況が調査報告書から垣間見えるのもまた事実なのです。

■立川市「子どもの自己肯定感などに関する調査」

工藤 啓
くどう けい

特定非営利活動法人「育て上げ」ネット理事長。1977年6月2日東京生まれ。大学中退後渡米。帰国後、ひきこもり、ニート、フリーター等の就労支援団体「育て上げ」ネット設立。2004年5月NPO法人化、現在に至る。
2005年…内閣府「若者の包括的な自立支援方策に関する検討会」委員/厚生労働省「キャリア・コンサルティング導入・展開事例検討委員会」委員/文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員/埼玉県「ニート対策検討委員会」委員/福島県「若者としごと」研究会アドバイザー/立川市教育委員会立川市学校評議員
著書「大卒だって無職になる」(エンターブレイン)、「ニート支援マニュアル」(PHP研究所)ほか

NPO法人「育て上げ」ネット
Lineup

【2015年 掲載】
84 親とのコミュニケーション~76

【2014年 掲載】
75 もし自分だったらどうする?~67

【2013年 掲載】
66 一声かける勇気~60

【2012年 掲載】
59 進学と奨学金~53

【2011年 掲載】
52 非日常下の成長~46

【2010年 掲載】
45 卒後生活への不安~37

【2009年 掲載】
36 仕事につながるナナメの関係~28

【2008年 掲載】
27 学校を辞めるということ~19

【2007年 掲載】
18 仕事を変えるとき~9

【2006年 掲載】
8 感情と積極性~1