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自分と仕事の関係性
~3つの「ワーク」~


工藤 啓
更新:2010/07/12

フリーターやニートの話になると、相変わらず、年配の方々から「働かざるもの食うべからず」という格言をいただきます。労働対価として賃金を得て、貨幣経済のなかで生きていくのだから、という意図はわかりますが、「働く」はそれだけではないのではないかと常に考えています。

食うべからず論を基準にした「働く」は、言ってみればライスワーク(Rice Work)です。生きるエネルギーのため、衣食住確保のために働くのは重要ですが、それが目的になってしまうと行きつくところ“仕事を選ぶな”になるわけです。特にいまのように働く場が非常に乏しい時期によく出てくる考え方です。

一方、教育段階では「やりたい仕事」を中心に将来の「働く」を考える機会を提供することが多いようです。小さい頃に自分が憧れた職業や、日常生活のなかでちょっと気になる仕事。足が速いとか、手先が器用とか、自分が得意としている物事から仕事を発見するようなワークショップもたくさんあります。自分の「好き」を仕事にするのはライクワーク(Like Work)です。好きだからこそ一生懸命になれるし、もっとうまくなろうと努力もできます。個人と仕事の素敵な関係性だと思います。

ライスワークやライクワークに加え、最近では自分の人生を懸けて成し遂げたいことを「仕事」にしていくひとたちが増えています。特に若い世代の想いに、理解と能力のある人生の先輩が手を貸して、社会をよくための仕事を創造しています。社会的企業という言葉もだいぶ市民権を得てきました。まさに、ライフワーク(Life Work)です。

それぞれの「ワーク」の有り方は、個人と仕事の関係性において優劣ありません。あくまでも、自分が人生の多くの時間を使うであろう仕事というものに、どのような価値観を見出すかの違いなのです。趣味や興味を追及するため、仕事はその時間を担保する手段であればライスワークも立派な個人と仕事の関係性です。人生を懸けてでも成し遂げたいことを仕事にする。そしてその仕事が心から好きであれば、ライフワークとライクワークは一体となります。それぞれの「ワーク」は独立しているわけではありません。

幸いにも、私は3つの「ワーク」がすべて現在の仕事に集約されています。最近、学生から受ける相談内容も変化してきています。この3つの「ワーク」をいかに融合できるか、を真剣に考える若者が増えています。もし、自分と仕事の関係性に迷いがあれば、周囲にいるひとびとに「あなたにとっての仕事って何ですか」と聞いてみましょう。さまざまな答えのなかで、自分が惹かれるものがあれば、まずはそこから仕事への手掛かりをみつけていくことができるのではないかと思います。

工藤 啓
くどう けい

特定非営利活動法人「育て上げ」ネット理事長。1977年6月2日東京生まれ。大学中退後渡米。帰国後、ひきこもり、ニート、フリーター等の就労支援団体「育て上げ」ネット設立。2004年5月NPO法人化、現在に至る。
2005年…内閣府「若者の包括的な自立支援方策に関する検討会」委員/厚生労働省「キャリア・コンサルティング導入・展開事例検討委員会」委員/文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員/埼玉県「ニート対策検討委員会」委員/福島県「若者としごと」研究会アドバイザー/立川市教育委員会立川市学校評議員
著書「大卒だって無職になる」(エンターブレイン)、「ニート支援マニュアル」(PHP研究所)ほか

NPO法人「育て上げ」ネット
Lineup

【2015年 掲載】
84 親とのコミュニケーション~76

【2014年 掲載】
75 もし自分だったらどうする?~67

【2013年 掲載】
66 一声かける勇気~60

【2012年 掲載】
59 進学と奨学金~53

【2011年 掲載】
52 非日常下の成長~46

【2010年 掲載】
45 卒後生活への不安~37

【2009年 掲載】
36 仕事につながるナナメの関係~28

【2008年 掲載】
27 学校を辞めるということ~19

【2007年 掲載】
18 仕事を変えるとき~9

【2006年 掲載】
8 感情と積極性~1