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未来を志す
~行動してから考える~


工藤 啓
更新:2010/09/27

毎年、都内の私立大学でゲスト講義をしています。授業のテーマは“キャリア”を考えるものですが、履修される大学生に変化が起こっています。初年度は20名ほどのクラスが、翌年には40名を超え、今年は80名近くの学生が履修されていました。年を追うごとに学生は積極的になり、講義の枠を超えて行動を起こす学生も増えています。

ある男子学生が講義の翌日にメールをくれました。「一度お会いして話がしたい」というので、日程を調整し数日後にお会いしました。大学入学後、文武両道を志すも体調の関係で入部することができず、アルバイトをしながら悶々とした学生生活を送っていたそうです。

勉強とアルバイトの両立はできる。しかし、新聞やテレビを見ていると日本社会はどうも問題をたくさん抱えているらしい。彼はそのような疑問を抱えつつ、時折、自分たち学生だからできることがあるのではないか。何か行動を起こさなければならないのではないかと友人に話してみるも、「普通はそんなこと気にしない」「俺たちの問題ではなく、政治家や官僚が何とかすべき」といった感じで、議論にもなりません。

「自分の周囲には社会を何とかしようとするような友人がいないのだが、そのような大学生は少ないんですか?」と聞かれました。すべての大学、短大、専門学生のうち何%かはわかりませんが、“志”と“行動力”を兼ね備えた学生は確実にいます。私の学生時代と比べれば飛躍的に増えている気がします。

しかし、同じ志を持つ仲間に出会うためには行動しなければなりません。社会的領域に関心を持ち、よくわからないけれど“とにかく行動”した先によき出会いや経験がある。そのようなことを彼には伝えました。

認識や志が「行動」に至るにはさまざまなハードルがあります。金銭的なハードル、時間的なハードル、心理的なハードル。それらのハードルをひとつひとつ越えている間に、「認識」したときのモチベーションは下がり続けます。これは学生のみならず、社会人でも同じです。気がつくとやっていないこと、結局やらなかったことたくさんありませんか?

しかしながら、彼が素晴らしかったのは、ほとんど考えることなく行動をしたことです。行動しながらそれらのハードルを丁寧にクリアし、数週間で行動のための環境を整えてしまいました。最近の若者には“行動力が足りない”といった話は本当でしょうか。むしろ、行動に移すことを躊躇させない社会の在り方が、若者の変化についていけてないように思えます。

工藤 啓
くどう けい

特定非営利活動法人「育て上げ」ネット理事長。1977年6月2日東京生まれ。大学中退後渡米。帰国後、ひきこもり、ニート、フリーター等の就労支援団体「育て上げ」ネット設立。2004年5月NPO法人化、現在に至る。
2005年…内閣府「若者の包括的な自立支援方策に関する検討会」委員/厚生労働省「キャリア・コンサルティング導入・展開事例検討委員会」委員/文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員/埼玉県「ニート対策検討委員会」委員/福島県「若者としごと」研究会アドバイザー/立川市教育委員会立川市学校評議員
著書「大卒だって無職になる」(エンターブレイン)、「ニート支援マニュアル」(PHP研究所)ほか

NPO法人「育て上げ」ネット
Lineup

【2015年 掲載】
84 親とのコミュニケーション~76

【2014年 掲載】
75 もし自分だったらどうする?~67

【2013年 掲載】
66 一声かける勇気~60

【2012年 掲載】
59 進学と奨学金~53

【2011年 掲載】
52 非日常下の成長~46

【2010年 掲載】
45 卒後生活への不安~37

【2009年 掲載】
36 仕事につながるナナメの関係~28

【2008年 掲載】
27 学校を辞めるということ~19

【2007年 掲載】
18 仕事を変えるとき~9

【2006年 掲載】
8 感情と積極性~1