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学び直しの取り組み
~学び直せる環境作り~


工藤 啓
更新:2010/10/18

不登校や中退経験のある若者が、学びに対する苦手意識を克服し、自分に自信が持てる機会提供として「再学(さいがく)プロジェクト」を始めました。前回のコラムに書いた彼ら/彼女らの“学び直したい声”を意識して構成しています。

毎週、火曜日と木曜日の17:00から19:00までの二時間を使い、全10回で「国語」「英語」「数学」を再び学びます。受講費用はかかりますが、現在のところ、社会の皆様から頂戴した寄付により奨学金付与の制度を持って無償提供しています。
(キフボン・プロジェクト: http://www.kifubon.jp/

私たちNPO法人「育て上げ」ネットには、学習支援のノウハウがありませんので、NPOキズキ共育塾(http://kizuki-juku.com/)とパートナーシップを結び、プロジェクトを実践しています。当初は5名ほど受講生が集まればよいとしていましたが、実際には定員を超える12名の若者が受講しています。男性も女性も、20代前半から30代後半まで、それぞれが再び学ぶことに対して不安を抱えながらも、自分と自分の未来に期待を抱き、学習に取り組んでいます。

ここまでひとりの“中退”もなく、みな前向きに受講しています。それを支えているのが、学び直せる環境作りにあると考えます。教室には、“教えるプロ”の他に、“支援のプロ”がおり、受講生の学習レベル、習得状況に応じて教え方を柔軟に変える教えるスタッフと、内容がわからず落ち込んでいたり、「やっぱり自分はついていけないのでは」と不安に駆られた受講生を支援するスタッフがサポートしています。つまずきを経験した若者が再び学び、成功体験を積み上げるためには両側面のサポートが重要です。

受講前のオリエンテーションや、毎回の講座には、参加者同士が志を共有できるようワークショップなどを取り入れています。また、自分ひとりでなく、みなで支え合いながらそれぞれの目標に向かっていく雰囲気を意識的に作るようにしています。

学び直せる機会提供は、これからの社会ニーズとして大きくなっていくように思います。しかし、単純に機会だけを提供するだけでは、つまずきを経験した若者の継続性を支えることはできません。機会の提供に加え、学び直せる環境作りも併せて取り組むことで、学び直しの効果を最大化し、受講生が最後まで参加し続けられるサポートが可能になります。もう一度、学びに取り組もうとする若者の声を真摯に聞き、機会として提供することが最も大切であることは言うまでもありません。

工藤 啓
くどう けい

特定非営利活動法人「育て上げ」ネット理事長。1977年6月2日東京生まれ。大学中退後渡米。帰国後、ひきこもり、ニート、フリーター等の就労支援団体「育て上げ」ネット設立。2004年5月NPO法人化、現在に至る。
2005年…内閣府「若者の包括的な自立支援方策に関する検討会」委員/厚生労働省「キャリア・コンサルティング導入・展開事例検討委員会」委員/文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員/埼玉県「ニート対策検討委員会」委員/福島県「若者としごと」研究会アドバイザー/立川市教育委員会立川市学校評議員
著書「大卒だって無職になる」(エンターブレイン)、「ニート支援マニュアル」(PHP研究所)ほか

NPO法人「育て上げ」ネット
Lineup

【2015年 掲載】
84 親とのコミュニケーション~76

【2014年 掲載】
75 もし自分だったらどうする?~67

【2013年 掲載】
66 一声かける勇気~60

【2012年 掲載】
59 進学と奨学金~53

【2011年 掲載】
52 非日常下の成長~46

【2010年 掲載】
45 卒後生活への不安~37

【2009年 掲載】
36 仕事につながるナナメの関係~28

【2008年 掲載】
27 学校を辞めるということ~19

【2007年 掲載】
18 仕事を変えるとき~9

【2006年 掲載】
8 感情と積極性~1